エルの秘密。カイルの思い。2
女だとばれて、冷たい目で見られた時はもうだめだと絶望を感じた。そばにいたくてつき続けた嘘。もう二度と「エル」と呼ばれる事はないのだと。
あの日、女性として初めてデビューした舞踏会では怖くてカイル様の方を向けなかった。そもそもドレスを着た自分は貧相で、それなのに女性だと主張する部分だけは大きく盛り上がっている。カイル様が嫌いな女だと否が応でも知らされてしまう。
物珍しいのだろう、沢山の男性に囲まれてしまい戸惑ってしまった。そのなかでも特にしつこく、濁った目でみてくる男がいた。
いよいよ耐えられなくなりその場から逃げるように離れた。まさか、その濁った目の男が後をつけてるなど思いもよらず。人目のないところへうかうかと足を踏み入れたことに後悔したが、後の祭りだ。押し倒され、激しく抵抗したも虚しく、むしろ抵抗したがために頭に血がのぼった男がドレスを引き裂いた。
もう無理だ。カイル様に振り向いてもらう望みの欠片もなくなってしまう。そう絶望を感じているとき、奇跡が起きた。
カイル様が怪しい動きをしている男を見かけ追いかけてくれたのだ。
カイル様の腕に抱かれ、このまま死んでもいい。そう思えた。怯えて震えているのか、歓喜で震えているのかわからなくなった。お優しいカイル様は私の嘘を許してくださった。
また、カイル様の隣に並べる。欲は決してださない。この先もずっと友達として側にいれるように。
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いつからこんなに臆病になってしまったんだろう。
あれから再びエルと会うようになった。エルが謝り、それを許した。俺が女嫌いだと思っているから、会うときはだいたい男の姿をしている。
「カイル様?いかがなさいましたか?」
「おまえ、別に男の格好などしなくてもよいぞ」
「いいえ、私もこちらの方が楽ですから」
「そうか・・・」
他の人と会うときは女の格好をしているのに・・・女の姿のおまえが見たい。そんなこと言えるはずもなく、黙ってしまう。いや、男の格好をしていても華奢で柔らかい雰囲気の彼女はもう女性にしか見えない。ドレスの時しっかり主張していた山は潰されているのか今はそうとわからないが、腰はなだらかな曲線を描いている。むしろドレスよりもいっそ色気がでてるように感じる。
「カイル様?」
あの時複雑に結われていた髪の毛はサラサラと風になびいている。風に乗って香ってくるのはエルの臭い。
前は気安く肩を組んだり、腕をひっぱったりできていたが今は触れることに躊躇してしまう。変わらないようで変わってしまった二人の関係がもどかしい。
「カイル様??」
「なんだ?」
「いえ、さきほどからぼぉっとされていたのでお加減でもわるいのかと思いまして。」
「いや、考え事をしていただけだ。」
「そうですか。」
そう言ってふわりと笑うエルの笑顔に胸の奥がつかまれる。その体を引き寄せ抱き締めたい衝動をぐっと掌を握りしめることで我慢する。いつかその笑顔を独り占めできる日がくるのだろうか・・・
まだまだ二人は時間がかかるようですね。




