表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/125

第九十八回

 直助は、黙って手に握りしめた便箋を勢一つぁんに差し出した。

「なんやいな…」

 首筋をボリボリと掻きながら便箋を受け取り読み始めた勢一つぁんの顔色が、みるみる間に蒼ざめていく。

「ええっ!! …」

 そんな馬鹿なことがあろう筈はないのだ。勢一つぁんにも直助自身にも、そのことは分かっていた。現に二人以外はこの部屋に存在しなかったのだし、もし訪れた者があったとしても、表玄関や裏口は施錠されているから、誰もはいれる訳がなかった。それが…。走り書かれた紙片は今、現にここに存在する。眠っている気づかない間に何かがあった…そうとしか考えられない。二人はそのまましばらく氷柱のように凍結した。

 初冬の少し冷えた風が流れていた。この冷気は直助にとって気分がよかろう筈がない。むろん、勢一つぁんとて同じであるに違いない。寝起きから不気味な一枚の紙に二人は心を奪われている。もう八時は過ぎているというのに、二人は朝飯のことすら忘れていた。どちらからともなく動いて、直助は湯を沸かすために台所へ、勢一つぁんは律儀にも寝布団をきちっと畳む。二人とも終始、無言である。

「朝からインスタントラーメンゆうのも、なんやけど…、まあ、食べてってえな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ