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第九回

眉目秀麗とはよく言うが、正に彼女はそれだった。小さく均整のとれた体躯に直助好みの顔がやや控えめについている。化粧も、べったり塗りたくるそれではなく、頬に薄紅を軽くあしらった程度だが、それがまた直助を麗しく感じさせた。

 冬場の五時半は、もうとっぷりと日は暮れている。最初に早智子が店に現れたのは、そんな師走の賑わいが始まる頃だった。なにげなくスゥーっと店に入ってきて、文庫本の陳列棚の前でじっと佇んでいる。直助が座る椅子から少し離れた蛍光灯の遠い姿では、今ひとつ全体像を知れないが、それでも美人であることに違いはないように思えた。これが直助と早智子の最初の出会いである。それからしばらくして、出食わす日に一定の法則めいたものがあることに直助は気づかされた。ひと月ほどが経った頃である。その日も早智子は直助が予想した範囲の時間に店へ忽然と現れた。早智子が店に出現して以来、気もそぞろとなる直助だったが、妙なことに早智子は一冊の本も買うことなく消え去った。いつも二十分ばかり、じっと書棚の前に佇み、それでいつまにかスゥーっと消えている。よく考えれば、怪談まがいの不気味な話だが、冬場のことでもあり、最初のうちは直助もそれほど気に留めなかった。今日もスゥーっと消えてしまうのか…。直助は今日こそは! と、注視した。

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