表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/125

第八十回

そうなのだ。コケ子は卵も生むから、ペットというより敏江さんには家畜だという意識があるようだった。犬の権太ゴンタは散歩の手間がかかるだけだったから、鶏は貧しい家に実益がある…と勢一つぁんは踏んだのだろう。それで、権太が死んでからというもの、犬を飼わなくなった…と直助には思えた。今と違い、この頃である。コケ子の卵は八百勢夫婦にとって、貴重な食材そのものだった。

「直さん、もうできるよって…」

 台所へ戻る擦れ違いざまに敏江さんは直助にボッソリ、そう言った。

「えっ? ああ…おおきに」

 霜が降るにはまだ少し早い、朝の冷気がなぜか心地よく、直助の心を潤していた。今日はよく晴れそうである。

 しばらくして勢一つぁんが起きたのか、家の中でざわつきが起こった。直助もコケ子の観察をやめ、中へ入ることにした。

 食卓には焼き魚にオロシ大根、味噌汁、味付け海苔、卵焼き、きゅうりの漬物と、なんと豪華なことか…。ここ数ヶ月、とくに丸八食堂の朝定が食べられなくなってから、直助はこんなキッチリとした豪勢な食事を食べたことがなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ