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第七回
それで敢えてガラス自動扉とかの設備にせず、未だに書本の数々を埃のかかる店外へ陳列しているのだ。直吉から店を引き継いだ頃は、それでも結構、立ち読み客まがいの者もいて、直助は神経を店頭に集中させねばならなかった。だが今となっては、そんな心配をする必要もなくなっていた。
「やってられへんなあ…」
愚痴ともつかぬ小言を漏らして入ってきたのは、隣の八百勢の主人、倉田勢一である。直助が、ようやく客が来た…と喜んだのも束の間のことだった。
「なんや、勢一つぁんかいな」
「『なんや』とは、えらい挨拶やな」
「ははは…。まあ、渋茶でも淹れるわ」
「おおきに…。それにしても、あかんなあ。全然、お客、来いひんがな。直さんとこは、どないや?」
「さっぱりだすわ。ほんに本腰入れて商店街で取り組まな、あかんみたいやな。このままやと、ここら辺の者は、皆、飢え死にや…」
直助は思いの丈を吐露した。




