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第六回

ただそのぶん、幹線より外れて奥まっているため、かつてなかった気味悪いほどの静けさが、この辺り一帯にもたらされた。喧噪に悩まされるよりはいいのだが、ゴースト的なその静寂を喜んでいいのか悲しんでいいのか、正直なところ直助には分からなかった。

 今日も店先に吊るした風鈴が僅かな風に流れて、長閑な音を醸し出している。

━ チリリーン・・リリーン ━ 

 住居を構えるには好都合な静けさなのだが、商売ともなると、いかがなものか…と思えてくる。土埃つちぼこりで薄黒く汚れた年代もの? の扇風機が、今日も忙しなく回っている。風情は確かに損なわれることなく残っていた。それが直助の慰めなのだが、客が来ないのでは商売を生業なりわいとする者には話にならない。直助が、じっと客が入るのを待っていると、なんだか自分が食虫植物にでもなったように思えてならない。そう…靫蔓が蜜壺に入る虫を待ち続ける心境なのである。これが、ここ十年ばかり続いていた。だがその虫も、最近は余り寄りつかなくなった。この日も店頭に並べた本を時折りパタパタ叩くが、今どきこんなレトロな本屋はもうないだろう…と直助には分かっていた。しかし彼は、こうする所作が好きだった。

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