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第五十三回

 誰に言うともなしに、直助は話題を変えた。

「ほやなあ。この前の寄り合いのときは、なんとか考えるわってうたはったけど、あれからもう、ひと月は経つでなあ」

 鍵熊が枝豆の繊維が挟まった歯茎を、楊枝でシーハーさせながら、ぼんやり言った。

「この界隈の町並みを飾り立てて…とか考えたはるみたいやで」

 肉屋の河北が脂肪太りした腹をボリボリと掻く。勢一つぁんは、一度消して半分残した煙草に、また火をつけてくゆらせている。

「まあどっちにしても、結論を早う出してもらわんとな。わしらは小山はんが考えはった案なら、それで協力させてもらうにゃさかい」

「ほやな。いつまでもこのままでは、ジリ貧になるしなあ…」

 勢一つぁんの言葉に直助は賛同した。上手い具合に幽霊の一件は、もう忘れられているようだ。内心、直助はやれやれ、と思った。この話は自分で調べてから話題にすべきだった…と、直助は今になって後悔していた。

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