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第五回

そういえば、昼間の暑気が真夏ほどではないにしろ随分、強まってきたように思えた。店の椅子に座っているときも、午後に入ると長袖ではさすがに、きつさが増す。年代もの? のただ一台の扇風機が小忙しく動き回ってはいるが、よく考えてみれば、今どきクーラー設備のない本屋など、お粗末この上なかった。これじゃ客が来ない筈だ・・とは思える。だが、同業の山彦書店が廃業に追い込まれた経緯いきさつを探れば、設備投資したとしても本屋が儲かるという保証はないのだ。曲がりなりにも経済を学んだ直助には、そこら辺りのところは、よく分かっていた。見栄や体裁ばかり気にして、この界隈でどれだけの店が潰れていったことか…。この二十年ばかりの間の変遷を、直助は見たくもなく見てきたのである。

 文照堂の前を通る道は鰻小路と呼ばれる二メートルほどの細い通路だ。直助の子供時代には、多くの買い物客でごった返していたが、十年前に道路整備が市街化計画と並行して進み、別の幹線道路が完成してからは、俄かに人出が遠退いていった。時代の趨勢、と言ってしまえばそれまでだが、なにか無性に虚しく思えたりもした。自分が一人で文句を言ってみても、たとえ町内会長に苦情をもちかけたとしても、どうなるこうなるという話ではなかった。果して、工事は粛々と進行し、数か月を経ずして瞬く間に新道路は完成を見たのだった。その開通以降、客足は徐々に減り、今ではお粗末この上ない態である。

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