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第四回

それでもこの年になって考えてみると、まんざら無駄でもなかったように思えている。というのも、その当時では結構、青春を楽しめたし、自分の知らない世界にも少なからず足を踏み入れ、それなりに充実していたな…と直助は思うのだ。ただひとつ誤算があったといえば、それは早智子のことである。順風満帆に人生が展開していたなら、本屋の経営はどうであれ、まあ世間相場の家庭を築き、子供の幾人かにも恵まれていたであろう。やはり自分は馬鹿で阿呆なデクノボウだったのだろうか…と考えながら、白子干しを冷や飯にパラパラと振りかけ、もう味も残っていない出枯らしの茶を淹れて茶漬けにし、また思う。塩っ気の利いた漬物が唯一の惣菜となれば、これはもう身体によくないのは目に見えている。直助にもそのことは充分過ぎるほど分かっていた。中華料理屋の焼肉を肴に生ビールで…とは、ここ数年、全く音沙汰がない。寂寞の静寂の中を、直助はただひたすら、箸を動かした。しかしそれほど自分が惨めだと思わないのは、根っからの神経のズ太さゆえだ。そんな直助なのだが、なんとかなるだろう…と粗末な食を終えた。

 庭の紫陽花がすでに色褪せ始めている。梅雨も近々、上がると昨日、天気予報が言っていたことを直助は思い出した。

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