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第三十四回

「あっ、そこのお座布つこうて…」

「おおきに。もう、構わんといてや」

 笑顔で敏江さんの淹れてくれた茶を啜りながら、うちのと偉い違いや、こりゃ美味いわ…などと下衆げすな想いを巡らす直助だった。

 二十分ほど経つと、勢一つぁんがモゾッと起きて現れた。寝惚けまなこを擦りながら、ふと直助を見入る。

「直さんやないか。朝っぱらから、どないぞしたんかいな?」

 敏江さんと同じこと、言うなあ。似たもん夫婦や…と、直助は刹那、思った。

「ははは…別に大した話やないんや。待ってるよって、食べてえな」

 直助としては、別に朝でも日中でもよかった訳で、早朝から大仰に切り出せる話ではないのだ。直助は遠慮をひとつ呟いて、勢一つぁんを促した。

「そうか? ほな、そうさせて貰うわ…」

 二人が話している間に、敏江さんはもう食べ終えていた。


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