第十四回
今日に限って言えば、意識せず早智子に話せた自分を褒めてやりたい直助だった。
商売上にしろ、一目惚れの早智子にコンタクトをとれたことは、直助を知らず知らずハイテンションにしていた。
季節は、もう梅の香が匂う早春であった。すんなり話せた原因を後々、探れば、ドギマギした関西弁で語らず、上品な標準゛こに徹したのがよかったんだろう…と直助には思えた。大学時代を関東で過ごしたことが、こんな形で幸いしようとは、直助も思ってはいなかった。そういや、姓が溝上と知れた早智子のの口調は、関西訛りがなかったことに直助は、ふと気づいた。その女性が溝上早智子という名だということも、今の今まで知らなかった訳だし、話し合って初めてその声にも触れたのだから、直助にとっては大きな成果には違いないのだが、そうなれば、口調から出身地のこととか些細なことまで気になってくる。”惚”の字なんだから仕方ないとは思える。和田倉商事か…、あそこは中堅の一流企業だ…と、また思う直助である。確かに、和田倉商事といえば、全国に展開する中堅の一流企業である。主に生活関連機器の中継ぎを中心として業績を伸ばしていた。そこの社員となれば、当然のことで異動もある訳だから、女性といえど、キャリアなら都会からの出向も有り得た。




