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第百二十二回

ただ、死後の文字と思われる枕元の白紙に書き綴られた文字は、すべてが水に暈されたように滲んでいた。このことは、明確に早智子の死を意味するとともに、ここにしたためられたメモ書きが霊字であることを意味した。

 いつものように平静を装いとこを抜けた直助だったが、心中は穏やかではない。歯を磨きながら直助がまず思ったのは、このことを早速、隣の勢一つぁんに話そうか…ということである。実際のところは以前とは違い、迷いがあった。確かに人のよい商店会の連中だが、物事をより以上にディフォルメする傾向があった。あたかも、メディアが国民に向けて発する過大報道にも似ていた。だから、直助が勢一つぁんに昨夜の一件の内容を語れば、それは即座に尾鰭ひれを付けて過大に吹聴されるに違いなかった。それが直助の迷っていた理由である。勢一つぁんだけは他の商店会の連中とは違い、直助の無二の友だったが、今回の件は直助には話し辛かった。ただ、それならどうするのか…という点までは考えが及んでいないのも事実だった。早智子は今後も自分の前へ現れるのか…、いや、妙に今の直助には会いたい、いや逢いたいという気持が沸々と沸き上がっていた。生前の早智子に抱いた恋慕の情である。とはいうものの、それは直助以外の者が冷静に考えれば、あってはならなぬ、起こしてはならない生死を越えた関係なのである。片や、一方は人間として生があり、もう一方は、すでに死霊となっているのだ。両者が結ばれることは天変地異が起きぬ以外、百のうち百とも有り得ないのだ。冷静に考えれば、そうなる。

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