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第百二十回

 ビクついても仕方がない…と直助は初冬の冷えた隙間風を肌に感じながら早智子へのメモ書きをしたためた。この白紙に書いた文を、以前と同様に果して早智子が読んでくれるだろうか…と巡りながら、直助は白紙のメモ書きを枕元へ置くと、とこについた。どういう訳か今夜は怖い感覚がない。勢一つぁんにも今夜の添い寝はいい、と言っておいたのは、そうしたメンタル面の兆しによるものだった。夜は次第に更けて、いつしか直助は深い眠りにいざなわれていった。

 次の朝が事もなげにやってきた。冷気は、いよいよ本格的な冬の到来を告げている。起きるという行為が、日増しに億劫になる季節が巡っていた。もう怪談噺ばなしが巷に流れる頃合いではないが、直助にとっては、ずっと怪談が心の奥底で続いていた。目覚めたのは、いつもと同じで七時少し前である。やはり神経は研ぎ澄まされているから、瞼が開くとすぐ、直助は枕元を見た。昨夜、寝る前に十字四方に折って置いたメモ書き見当たらなかった。だが、早智子の返しのメモ書きも見当たらなかった。やはり無いと分かれば、フゥ~っと溜息のひとつも出る。そして、幾らかテンションを下げて上布団を跳ね上げた。その時である。上布団の上に置かれた紙らしきものが、ポトリ! と畳上へ落ちた。直助の右手は無意識にその紙へ伸びていた。手に取って凝視する直助の表情が瞬間、明るくなった。そこには、早智子の文字がしたためられていたからである。

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