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第百十五回

 何か手掛かりが見つかったのだろうか…と、直助は声を頼りに進んでいった。

「これを見てみいな」

「…んっ?」

 直助は怪訝な表情で、勢一つぁんの指さす墓石の裏の刻字を注視した。そこには、━ 俗名 早智子 ━ と、確かにある。

「これやろ?」

「… …」

 直助は問われても返せなかった。信じたくないが、しかし厳然とした事実がそこにはあった。直助は、なおもその刻字を辿った。

━ 昭和四十六年三月没 享年二十四歳 ━

 疑うことの出来ない現実が、視覚を捉えて離さない。昭和四十六年といえば、確か…早智子と出会った翌年だ。それがなぜ今になって自分の前へ霊となって現れたのか? その辺りが直助には不可解だった。しかも、枕元に立った意図が読めない。彼女は自分に何をして欲しいと語りかけているんだろう? 直助は勢一つぁんの語りかけるのも忘れ、しばし茫然と物想いに耽ってしまった。

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