青菜と海老の塩炒め
君は幸せだよ
誰かに食べさせるものがある
不幸せな人は何も持っていないのだから
丁寧に、解凍した海老の皮を剥く。
まだ冷たい海老は黒くて
なんだか頼りない
頭を引き千切ると鮮やかな燈色の塊がずるりと出てきた
殻を指で撫でるように取り外す
殻と頭は汁が漏れると臭くなるから新聞紙に包んでトラッシュへ
背中のわたを爪楊枝で引きずりだす
背中に切れ込みをいれて
軽く塩を振って片栗粉をまぶす
買ってきた青菜に巻かれているティプを千切り、トラッシュへ
水で汚れなんか見えないのに
汚れを洗い流す
ハウス栽培の野菜は綺麗過ぎて
嘘臭い
下から4cm程切り落としてトラッシュに
3cm間隔で青菜を切ってボウルに置く
使いさしの人参を取り出し
ヘタを切って、トラッシュ
残りの人参を5cm程に縦に4分の1に切って
3mmの厚さに切る
そして使い込んだフライパンを火にかける
薄く塗った油が柔らかくなっていくのを見て
ティッシュで油を拭き取り
新しい油を注ぐ
ティッシュはトラッシュに
まず、人参を入れる
すべて
菜箸で焦げないように軽くかきまぜて
鍋に湯を張りとなりのコンロにかける
味の素をいれて ほって置く
柔らかくでもまだ瑞瑞しい焼け具合いを見計らって
海老をいれる
すべて
すぐに 薄暗い海老は赤く姿を変えていく
海老の甘い香りが漂いだした頃
鍋が泡が沸々としてくる
料理の終わりを感じる
素早く卵を取り出してボウルに割り入れ掻き混ぜて
ふつふつとした鍋に菜箸を伝わらせながら
卵を流し入れる
まぁるく 円を描きながら
流れ切らない液が残ったボウルをシンクに置く
そして青菜をフライパンにいれる
美味しそうな匂いがする
しんなりする青菜を焼きすぎないように
さっと炒めて
塩を降る
味付けはそれだけ
用意してあった皿にさっとあけて
コンロの火を消す
すべて
深皿に卵のふわふわした感じを潰さないようにスゥプを流し込み
冷凍して置いた葱を振掛けて
お茶碗に出来たてのご飯を装う
お盆に並べられた料理は完璧だ
海老と青菜の塩炒めは
青菜の青々しさと人参の色が混じりあって
海老は周りにつけた片栗がとろりとりた柔らかい膜を張っていて
海老は噛めば微かな歯応えを返してくれるだろう
卵スゥプは柔らかくふっくらとしている
ご飯は艶艶と炊き上がっている
私は満足してそれらをみつめて
おもむろにトラッシュに突っ込んだ
貴方は
私を幸せだと言ったけど
私、不幸せだわ
誰かに食べさせるものがあるのに
貴方がいない
何も持っていない方が良かった
私に出来る事は
トラッシュに捨てる事だけ