第七話 風を斬って走る
私もお父さんも耳を澄ました。きっと玄関にはお姉ちゃんが向かったのだろう。お姉ちゃんと誰かの話し声か聴こえる。
「父さん!ちょっと・・・。」
私もお父さんと一緒に玄関にいった。そこにいたのは、なんと秀二君だった。
「君は・・あの時の・・・。」
「え・・・お父さん彼を知ってるの?」
「お前が付き合っているというのは彼か?」
「・・うん。」
「そうか・・。」
お父さんもお姉ちゃんもなにも言わなくなった。私は二ヶ月ぶりに見た秀二君がとても嬉しくて涙を堪られなかった。
沈黙のなか、秀二は口を開いた。
「お久しぶりです。・・・僕は、理恵が好きなんです。だから、理恵を僕に下さい。今まで黙っていてすみません。俺はあの時の事、理恵に近づく為に助けたのかっていわれるのが怖くて・・・なにも言えなかった。でも、俺には理恵しかいないんです。だから・・・。」
頭を下げ続ける秀二君の肩をお父さんは優しく叩いた。
「もう、いいんだよ。君がとても優しい子だってコトは知っている。・・・理恵をたんだよ。」
なんでお父さんが秀二君を知っていたのかは解からないけど、許してくれた事が嬉しかった。
「秀二君。また来なさい。君には二度も助けられた。あの時といい、理恵がまた陸上界に戻ってくれた事と言い、本当に感謝している。」
「ありがとうございます。」
私は久しぶりに秀二君が心から笑っているように見えた。そう思うと
また涙が出て来た。
「理恵・・・やっと会えた。」
秀二君は泣き止まない私をぎゅっと抱きしめてそう言ってくれた。
「うん。逢いたかった。来てくれて、ありがとう。また一緒に走ろう?」
僕らは互いに風を斬って走る君に心を奪われていた。