第三話 陸上界の星
母は世界的に有名なマラソン選手。
父は母を世に送り出したインストラクター。
兄は走り幅跳びの名手。
姉は走り高跳びの名手。
そんなエリート陸上一家の末っ子の私も嘗ては【短距離界の新星】とまで言われたことがあった。今はもう、ただの何もできない一人の人間にしか過ぎない。それでも陸上を諦められなかった私は陸上の盛んなこの学校を選んでしまった。そんな私、福原理恵に彼ができたのは、私が二年で彼がまだ一年生だった一年も前の事。
「おはよう。秀二君。」
獅子澤秀二君は私の彼氏です。一年前、私は学校帰りに秀二君に告白され、密かに想い寄せていた私は告白を受け付き合う事になったのだけれど、未だに私なんかのどこを好きになってくれたのかも謎である。スタイルがいいわけでも無ければ、美人でも無い。私は自分に自身が無いのだ。
「理恵…。サンキュな毎朝。」
「いいよ。好きでやってるんだから。」
私の毎日の日課は朝七時に部活をやっている秀二君に手作りお弁当を届けること。秀二君は陸上部の期待の新人で一年生なのにいろんな試合で優勝してるすごい人。
実を言うと私も三年前までは陸上の選手だったんだけど交通事故で足を怪我して辞めてしまった。いまは、秀二君の走りを見てるだけで幸せだった。
秀二は理恵の頭をクシャッと撫でてから微笑むとまた練習に戻っていった。
私たちの学校はあまり部活動の盛んな学校ではないが、陸上部だけは全国大会の常連だった。その為、グラウンドと雨でも陸上部が活動できる陸上館という施設が設けられている。今日の活動場所はグラウンドだ。