ユルシのロウゴク
目が覚めたら上質な椅子に座っていた。いつの間に眠っていたんだ?椅子が中央の丸机を囲むように置かれており、椅子には亜希と同じくらいの少年や少女、もう少し大人びた雰囲気の人たちが座っていた。
_なんだ、ここは。「あっ、起きました?」となりから明るく高い声がした。声のほうをみると、栗毛の映える大きな目と、音符の髪留めをつけた女子が座っていた。「はじめまして♪ウチの名前は三好美乃!中学二年でさわやかさんくみ!好きな人はアイリマの千堂優史くん!座右の銘は天真爛漫!よろしくピース!」片目をバチーンとばかりにとじ、ピースを向けてきた。シーン。場に気まずい空気がながれた。…なんなんだ、この女子は。やけにテンションが高く、口が追い付かないほど早くしゃべろうとしているのか、かみかみである。「あっ、あれ?ピィィィース!!」ピースの主張がはげしいな「はぁ、ダメダメですね。社交辞令ってしってます?」なんだこいつ、失礼な奴だ。「そして人に名乗らせて、自分は名乗らないんですか?名前知らないから呼びにくいんですけど。」…自分から勝手に名乗ったことも忘れるなんて。相当なバカであることも判明した。まぁ、俺は大人な対応で「俺は窪内亜希だ。」と名乗ってやった。すると、眉間にしわを寄せ上目遣いをしながら…「田中たかしって顔してますけどね。平凡的かつ田舎臭い顔立ちです。」三好はどこまでも失礼であった。最初のフレンドリーはどこにいった。全世界の田中とたかしと俺にあやまれ。
_っていけねぇ。三好のバカに引き込まれて状況が分からなくなるところだった。バカの引力はすごい。座っている人数は…俺含めて26人ってくらいか。けれど誰も立ち上がる様子はない。別に拘束されてるわけではないのに。「三好、なんでみんな椅子からはなれないんだ?」状況を知るためだ。仕方なく三好に話しかけた。うえぇ~っと顔をしかめた三好だったが「あれが読めないんですか?『椅子に腰を掛けて待機せよ。』ご丁寧にくるくる回して見やすくしてくれてるじゃないですか。」た、たしかに紙を張り付けた板が机のうえでゆっくり回っているが、俺はもともと字が読めないし、二年間結構頑張って刑務所で勉強したっていってもわかるのはひらがな程度だ。に、を、け、て、せよじゃなんもわかんねぇよ!ぐぬぬと苦虫を潰したような顔をした俺に、一瞬何か悟ったような顔をした三好はにっっこりと笑って「もしかして、字が読めないんですか?ぷぷぷ、笑えます。最近は幼稚園児も漢字が読めるんですよ」手のひらを口の前にもっていきくすくすと笑ってみせる。今俺は記憶がすぐになくなっちゃうようなバカにバカ認定されたのか?_…屈辱っっ!!「俺は字読めるしぃ!ちょっと遠くて見にくかっただけだしぃ!?」やけになって大きな声で叫んだ直後、となりから「うるせえよ」と大人びた低い声が響いた。ああん?とガンを飛ばしてみると、黒髪の細目、鼻筋がキレーな俺と同じくらいの男が座っていた。_これはイケメン、というやつではないだろうか。「なんですか急に黙り込んで」と三好が俺の頭の間からひょこっと顔を出した。「!?!?!?!?すぅぇ、す、す、千堂くん???!!」さっきの俺よりもバカでかい声で三好が叫んだ。ほう、こいつは千堂というのか。すると男は三好にものすごい嫌な顔をして「うるさい。俺は黒住だ。千堂じゃない」と静かに言った。なんだよ、こいつは黒住っていうんだな。「うううううそですっ!完璧に、完全に、99.7%以上一致しています!!げ、芸名!芸名をつかっていたのですね!!」びしっと指をさして目を見開いている三好に、黒住だか千堂だかはさらに嫌な顔をした。_やかましいな。
「熱中してるとこ悪いんですけれど、お耳を傾けてくれます?」マイクから通されたような声が部屋に響いた。だっ、だれだ!?みんながきょろきょろとあたりを見渡す中「ここでーす」と近くから声が聞こえた。バッと声のした方を見ると、とりのようなマスクをかぶった人間が中央に立っていた。_いつの間に人に囲まれた真ん中に入ってきたんだ!?「ペストマスク…」黒住が警戒した声色で言葉をこぼした。「あるいみ、僕たちは君らの’’治療’’をしなければなりませんからね、顔も秘匿にしたいので」隣の俺でも耳を澄まさないと聞こえないような声を距離のはなれた場所にいるアイツは聞き取って返答した。本当に何者なんだ。「君たち、26名は日本全国から選ばれたのです!」「_選ばれた?どういうことだ」丸刈りの男がマスクの男に聞いた。「そうですね。では、ここにいる26人はみんな、人の命を奪っています。」_は?余計に意味が分からない。なぜ奪った人間が選ばれることになるのか。「ふざけんな!」みるからにちゃらちゃらした男が怒鳴った。「俺が人殺しだっていいたいのか!?おれは殺してなんかいないぞ!!」よっぽどイラついたのか最後のほうはろれつが回っていなかった。「まぁまぁ、最後まで聞いてくださいよぉ、ふぅ…、安心してください。あなた方に処罰をすることはありません。だからこそ’’選ばれた’’のです。」「意味が分かんねぇ!」「だからこそってどういうことだ?!」目をかっぴらいて怒鳴りだす男たち。正直俺もわけがわかんねぇ。「ここは『許しの牢獄』といいます。そう!あなた方は許しを得たのです!」・・・?みんなの頭に?があがった。正直俺わけわかんねぇ。「これからみなさんにはこの施設での生活をしてもらいます。そしてその中から25名の方は牢獄から出て、元の生活に戻ることができるのです!そう!たとえ人の命を奪っていたとしても!」戻ることができる…その言葉に部屋にいる全員がオオーっ!という歓声を挙げた。けど、俺は…・・・「最後まで聞いてください!もう…、けれども、ですね!1人だけはこの許しの牢獄での生活をしてもらいます。30年ほど。」「さっ、30ねん!?」「50歳になっちまうじゃねぇか!!」先ほどと一転、批判の声が響く。30年は確かに長い。確実に刑務所にいた方が早く社会に出ることができるだろう。しかし…、「けど、1人だけだろ?」「26分の1なら何とかなるかも」確率の面から前向きに考える者もいるようだ。「はいはい、みなさん!…静かになりましたね?ちなみにこれは強制ではありません。早く刑務所から出れるのは誰もが望むことなので、補欠は考えているのですよ。」「こんなのやるしかねぇ!!」「もちろん参加で!!」そんな声が響く中、「あの、私辞退します。」1人だけ一番大人びた女性が静かに手を挙げた。「わたし、あと半月で釈放予定で…もしうっかり30年いることになったら大変なので、リスクは避けたいなと…」こわごわした様子で回りをちらちらみながら発言した彼女に「わかりました。清原さん!では刑務所に連絡をしておきます。」表情はわからないが明るい口調でマスクの男はあっさりとOKした。引き止めもしないんだな、選ばれたっていうのに。「さぁ、もういませんかね?_よし、ではこのメンバーと+でもう1名で許しの牢獄スタートです!」うお~~!!!響き渡る歓声のなかで「……せいぜいこの牢獄で残りの人生を楽しめるといいですね」マスクの男は静かに呟いた。
序盤めっちゃながくなりました~(-_-;)ここからは少し短めにやっていきます!




