20×2年6月 奈那の大会
最初の頃と比べて、バカと喋るのに抵抗を感じなくなってきた。なんでかは分からない。でも、今までの人生よりも遥かに楽しいと感じていることは間違いない。
そして今日は、バカの部活の大会だ。バカは頭が悪い代わりに運動神経がいいらしく、1年でバスケ部の選抜に選ばれたそうだ。見に行くつもりはなかった。でも、前日にメッセージで…
『ようこちゃん!』
「またメッセージ?なんか用?」
『実はさ!私さ、明日部活の大会なんだよね!』
「そういえば部活入ってたっけ?何部なの?」
『バスケ部だよ!ようこちゃんのハートにーシュート!なんちゃって(,,> <,,)』
「なんだそれw」
『ようこちゃんが笑った!』
「私だって笑うから、」
『ってなわけで、うちの学校の体育館で大会があるから来てね!おやすみ!』
「ちょっと待ってよ」
既読がつかなくなった。おそらくもう寝たのだろう。
「自分勝手なやつだな。まあ、行ってあげるか。」
時間は流れ、次の日。朝起きるとバカからメッセージが来ていた。
『来なかったらデザート奢りだからね!』
「言われなくても行くっての」
私は顔を洗い、朝ごはんを食べ、歯を磨く。
「体育館か、なら虫除けとか日焼け止めはいらないか。」
そんなことを思いながら支度を進め、家を出る。
「いってきまーす。」
「気をつけてね!」
お母さんが元気よく見送ってくれる。ありがとう。そう心でお礼する。
体育館に着くと、もう試合は始まっていた。
「がんばれー!」
「まけるなー!」
応援の声が飛び交う中、試合が行われている。今のところバカのチームが勝っているらしい。
「友達の試合なんて初めて見たな。」
試合は前半戦を終え、若干負けている状況だ。私が応援席に座っていると前から
「ようこちゃーん!!きてくれたんだねー!」
周りの全員がこちらを見る。
「恥ずかしいからやめろ!」
「えへへ。ごめんね!嬉しくてつい」
「まったく…」
バカの元気さと天然さはたまに良くない方向に行く。このように私に被害が来ることもあれば、自分に被害が行くこともある。
後半戦開始の笛がなる。
「がんばれー!」
「いけいけー!」
応援の声がまた飛び交っている。私も声を出した方がいいのかとも思ったが、恥ずかしくてできなかった。すると…
「ようこちゃーん!応援してよ!」
「ばか!試合中だろ!」
「あっ!」
ほんとになんなんだこのバカは…。呆れているはずなのに、何故か笑顔になっている。やっぱりバカとすごしてると変な感じになってしまう。
「ななー!がんばれー!」
気づくと自然と声を出していた。すると次の瞬間…
ピー
バカがスリーポイントシュートを決めた。そしてななはこっちを見て、
「ようこちゃんのハートにスリーポイントシュート、決まったね!なんてね」
そんなことを言いながら笑顔でこっちを見る。心臓の鼓動が早い。なんでだろう。顔が熱い。なんでだろう。こんな感情、今まで感じたことがない。
試合終了の笛が鳴る。
バカと帰りながら話をする。
「あんなノリノリで私に話しかけるから負けるんだぞ!」
「だってー、ようこちゃんにかっこいいとこ見せたかったんだもん!」
「まったく…。」
「えへへ!」
さっきのよく分からない気持ちは気にしないことにした。多分、私には不要な感情だから。
「まあ、バカも頑張ってたし、なんか食べに行くか?奢るぞ。」
「わーい!じゃあクレープ食べたい!」
「じゃあ行くか。」
「うん!」
夕日が沈む方向にあるクレープ屋に向かって歩く。今日は頑張ってるバカ見れてよかったな。そんなことを思いながらバカと一緒に歩いて行った。