20×2年5月 定期テスト
あの日から私の人生は騒がしくなった。登校時間、休み時間、下校時間、休日や夜遅くにまで奈那は話しかけてきた。早々に私は連絡先を交換したことを後悔していたが、もう気にしないことにしていた。
「ようこちゃん!そろそろテストだけどちゃんと勉強してる?」
「いや、あんましてないかな。どうせ大学に行く前に死ぬし。」
「またそんなこと言って!私が死なせないって言ってるでしょ!」
「いや無理だから。医者でもないんだし。」
「むぅ」
奈那は少し不貞腐れた。仕方の無いことだ、奈那に私の病気を治すことはできない。
「じゃあわかった!ようこちゃん点数勝負しよ!負けた方がパフェ奢りね!」
「えぇ。めんどくさい。それに私、頭良くないよ。」
「へぇー、ようこちゃん逃げるんだー。」
少し頭にきた。
「分かった。絶対に勝つ。」
「私に勝てるかなー、ようこちゃん。」
乗せられた気もしたが怒りの感情を抑えることが出来なかった。
その日から私はテストの日まで毎日6時間勉強した。その様子を見て両親も喜んでくれていた。それもそうだろう、私はどうせ死ぬからと理由を付けて4月から一度も勉強をしてなかった。そんな私がこんなに勉強しているから両親も嬉しいことだろう。
定期テスト当日。私は今までの人生で1番勉強を頑張ったのでかなり自信があった。解けない問題も多少はあったがどの教科もかなりの手応えだった。
そしてテスト返却日。
「ようこさーん。」
先生に呼ばれ答案用紙を貰いに行く。そして答案用紙の右上を見る。90点。過去最高点だった。その後のテストも86点、96点、89点、92点と高得点ばかりだった。
全てのテストが返却されたあと奈那がこちらに寄ってきた。
「さあようこちゃん!テストの点数勝負をしようか!」
「いいけど、私そこそこ自信あるよ。」
「ほほう。いいねぇ!私もだよ!」
「じゃあいざ尋常に、勝負!」
陽子:90点、86点、96点、89点、92点
奈那:35点、43点、31点、41点、30点
「え?」
私の圧勝だった。いや、それよりも奈那が思ったよりもバカだった。
「いやー、ようこちゃん頭いいね!負けちゃった。」
「なな、頭いいって言ってなかったっけ?」
「あー、あれは嘘だよ!だってそうでも言わないとようこちゃん勝負してくれなかったでしょ?」
胸に少し違和感を覚えた。嬉しいような、そんな感じの感情が私の胸に刺さった気がした。いや、気のせいだろう。
「ななってバカだったんだな。これからはバカって呼ばせてもらうよ。」
「ええー!ようこちゃん酷い!」
「今日の放課後さっそくパフェ食べいくか!もちろんいちばん高い1500円のパフェをね。」
「ようこちゃん容赦ないなー。私のお金のことも考えてよ!」
こんなに楽しく話したのなんて何年ぶりだろう。そんなことを思いながら私とバカの初めての定期テストが終わった。