第三話∶七不思議の真相と転校生の正体
学校の七不思議は日に日に増え、生徒たちの間では様々な噂が飛び交っていた。動く彫刻、鳴るピアノ、歩く人体模型…そして、掲示板に現れる謎のメッセージ。
陽太は霧子に学校の七不思議について尋ねるようになった。霧子は多くを語らないが、時折、意味深なヒントを与える。「…見えないものを見ようとすれば、本当に大切なものを見失う…」「…過去の影は、未来を覆い隠す…」
楓は全ての現象を科学的に解明しようと躍起になっていたが、説明のつかない出来事に焦りを感じ始めていた。紗英は、七不思議を利用してSNSでフォロワーを増やそうと画策していたが、実際に怖い目に遭うのは避けたいと思っていた。
そんな中、楓は掲示板のメッセージに隠された法則性に気づいた。文字の配置や、使われている漢字に、ある規則性がある。それは、古い暗号のようだった。
陽太の知識と楓の推理、そして紗英の情報網を駆使し、3人はついに暗号を解読した。そこに書かれていたのは、学校の創立に関わる、ある悲しい事件の真相だった。
かつてこの学校で、不慮の事故で亡くなった生徒がいた。その生徒の無念の思いが、学校の七不思議として語り継がれてきたのだ。
そして、最後のメッセージには、こう書かれていた。『私の声に耳を傾けて…時計台の…下で…待っている…』
3人が時計台に向かうと、そこに立っていたのは…黒川霧子だった。
「あなたが…?」楓は驚愕した。
霧子はフードを取り、静かに微笑んだ。その顔は、卒業アルバムで見た、事故で亡くなった生徒の面影と重なっていた。
「私は…この学校で、皆に忘れ去られた者…私の声を聞いてほしかった…ただ、それだけ…」霧子の声はどこか寂しげだった。
陽太は霧子に優しく語りかけた。「僕たちは、あなたのこと、忘れないよ」
紗英はスマホをそっとしまった。「なんだか…悲しい物語だったんだね」
楓は科学では説明できない現実に戸惑いながらも、霧子の悲しみに心を痛めていた。
その時、時計台の鐘がゆっくりと鳴り響いた。霧子の姿は、光に包まれ、 ধীরে ধীরে と薄れていく。
「ありがとう…私の声に…耳を傾けてくれて…」
霧子の声が消えると同時に、学校の七不思議はピタリと止んだ。動いていた彫刻は元の場所に静止し、ピアノは二度と勝手に音を立てることはなく、人体模型が廊下を歩くこともなくなった。
(第三話完)