第一話∶動き出した彫像と転校生の囁き
舞台: 県立白波高校 2年B組
登場人物:
* 天久 楓: クールで頭脳明晰なクラスの学級委員長。科学至上主義者で、幽霊の存在は断固として認めない。
* 佐伯 陽太: 明るくお調子者だが、オカルト大好きで、学校の七不思議に詳しい。楓に密かに好意を抱いている。
* 木村 紗英: ファッションに敏感で、情報通の陽太の幼馴染。怖い話は苦手だが、SNS映えする怪奇現象には興味津々。恋愛ゴシップには人一倍敏感。
* 田中 先生: 2年B組の担任。生徒思いだが、極度の怖がり。学校の怪談を聞くと、すぐに体調を崩す。
* 新キャラクター: 黒川 霧子: ミステリアスな雰囲気を持つ転校生。常に黒いフードを被り、口数が少ない。時折、意味深な言葉を呟く。
「全く、非科学的だわ」
朝のホームルーム前、楓はクラスに伝わる「動く二宮金次郎像」の噂を鼻で笑っていた。科学的根拠のない怪談など、一笑に付すのみ。
「でもさ、天久さん、目撃情報結構あるんだぜ? 夜中に学校を歩いてるとか…」陽太は目をキラキラさせながら語る。彼は学校の七不思議マニアだ。
「ただの目の錯覚よ、佐伯くん。疲れているんじゃないの?」楓は冷たく言い放つ。
「きゃー! また始まった!」紗英がスマホを構えながら叫んだ。「ほら、見て! 学校の掲示板に謎の落書きが!」
掲示板には赤いスプレーで歪んだ文字が書かれていた。『足元にご注意を…見上げれば…』
「また新たな七不思議の始まりか?」陽太はワクワクしているが、楓は眉をひそめる。「悪質なイタズラね」
その時、教室の扉が開き、黒いフードを深く被った少女が入ってきた。「今日からお世話になります…黒川霧子です」
静かな自己紹介の後、霧子は空いている席に座った。その瞬間、教室の温度がほんの少し下がったような気がした。
ホームルームが始まり、田中先生が咳払いをした。「えー、皆さん、今日から新しい仲間が加わりました。黒川さんです。仲良くしてあげてくださいね…(怖い話はしないでね…)」
その日の放課後、陽太は霧子に話しかけた。「黒川さんって、なんかミステリアスだね! 学校の七不思議とか興味ある?」
霧子はフードの下から、静かに陽太を見つめ、低い声で呟いた。「…学校には、まだ知られていない秘密がある…足元にも、頭上にも…」
その言葉に陽太はゾクッとした。その夜、楓が一人で図書室で勉強していると、突然、背後の窓ガラスを何かが叩いた。「気のせい…気のせい…」と念じる楓だったが、外には誰もいない。そして、廊下から微かに、子供の歌声のようなものが聞こえてきたような気がした。
(第一話完)