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第六話 舞うために

「織原くん…………君の能力は……………

【神速】だ……………!!」


──────


「………えぇっ!?!?」


氷織と織原が同時に叫ぶ。


「僕に能力があったんですか………!?」

「そ、その【神速】というのが、前例が無いってことなんですか??」

「あ゛あ〜〜……ごめん、質問は一人ずつで、ね……」


(戻った……)

(戻りましたね………)


冷静さを取り戻したドクターJは、まず織原の方を向いて淡々と話し始めた。


「……ええっと、能力は確かにあった、そして今の君は、休眠状態、ね。ここまでは分かった、ね?」

「ま、まぁ……驚きはしてますが、理解は出来てるつもりです……!」

「じゃあ、君の能力、【神速】の説明をするね……

これは、自分自身を強化する系統の能力なんだ。でも、そもそも身体強化は能力としては成立しにくいんだよねぇ……何でだと思う??」

「あっ……え、ええっと………」


(身体強化が能力として成り立ちにくい……?どういうことだ?)


「……じゃあ、織原くんへの説明も兼ねて、私が回答します。能力者の法力(ほうりょく)、すなわちエネルギーで具現化、イメージをしにくいからです」

「氷織くん、正解。まあ、氷織くんほど戦い慣れてるとね、即答出来るよ、ねぇ」


両者の会話を聞いていた織原は、頭の中に?マークが飛び交っていた。どういうことだ、イメージって何なのだ、とばかり考えていた。


「………うーん、まだ分かってなさそうだね」

「あっ、いや……はい………すみません」

「それじゃあ、エネルギーを粘土だと思って考えてみよう。粘土で色々な器を作ったりすることは出来るけど、粘土そのもので自分を強くすることってあまりイメージ出来ないよね?」

「まあ………はい…………」

「能力者にとってのエネルギーは「法力」だってさっき言ったよね。この法力っていうのが、すごーくザックリ言うと、神様の力……みたいなものなの。私たち能力者の能力っていうのは、この神様の力を粘土だと思って、色々な形に出来る人って感じ。言ってしまえば、生まれつきの職人です!みたいな」


氷織の説明を聞いて、まだ若干戸惑っていた織原。そんな理解しきれない様子を見逃さなかったドクターJがさらに補足する。


「あ゛あ〜〜………んまあ、合ってるよ、ねぇ〜…

でも、その神様パワーの、法力、ってのがさ、人間の肉体に、溶けない……いや、溶けにくいってイメージ、かなぁ…………」

「そう、まさにそんな感じ。油に塩が溶けないみたいに、法力は本来、殆ど全ての能力者にとって「道具」なの。でも、織原くんの能力は身体強化……

これって、結構珍しいことなんだよ!」


(な、なんか話が読めてくるような、こないような………)


「………あ゛あ〜〜、君の【神速】はね、超超超超、超〜〜〜〜〜速い動きが、可能になる感じ、だと思う……

でもねぇ、こればかりは、本人である織原くんが、使ってみないことには、僕らにもハッキリとは、分からないんだよ、ねぇ〜〜…………」

「つ、つまり、僕はいわゆる漫画でよくあるような、ファイアーとかビームとかを出す感じじゃなくて、忍者やソニックみたいに速くなる……っていうのが能力なんですか??」

「そう、そう、そう………そんな感じだと、推測、するけど、ねぇ……

あ、ちなみに、【神速】は僕がさっき勝手に考えた奴だから、気に入らなかったら、変えていいよ〜」


織原はようやく話の全てを理解した。自分に能力があること、自分の能力は他者とは根本的に違うこと、法力のこと……

なにはともあれ、幼少期から夢見た能力者であったということが、織原にとってはこれ以上なく嬉しいことだった。


「あ゛あ〜〜〜、喜んでるところ、悪いけど、織原くんね、また明後日、ここ来てくれる??」

「………えっ?」

「ど、ドクター!?何を言って………」

「………能力休眠状態の君を、覚醒させなきゃ、でしょ………??」


そうだった。氷織も織原も、最初に引っかかっていた部分だ。


「断言するとね、休眠状態は、絶対、自然には、覚醒しない……

過去の2つの前例、それと同じ手法で、君の能力を、覚醒させる、ねぇ〜〜〜………………」

「………ドクター、彼に何をさせようと言うのですか……?」

「あ゛あ……痛いことは、しない………でも、そうだね、端的に、言うなら…………」

「い、言うなら………???」

「すっっっっごい寝る………!!」

「……………」

「……………」

「……………」


「「ええええええええええ!?!?」」


予想だにしなかったその手段に、織原も、そして普段冷静な氷織も、声を大にして驚きを見せた。どういうことだ、そんなことで良いのか、と。まさに寝耳に水を差されたように、2人は最大限の驚きを見せざるを得なかった。


「あ゛あ〜〜〜………寝るって言ってもね、薬品を、脊椎から注射して、脳に届ける……ただ、その脳に薬品が届くまで、絶対に意識があったらダメだから、もう物凄く長い間、寝てもらう、って感じ、ね………」

「な、な、なるほど………」

「……能力の休眠状態を覚醒させる薬品、ですか……ドクター、それがこの研究所にあるのですか?」

「いや、無いよ〜……ある訳、無いよ、ねぇ〜……」

「えっ?」

「無いから、届けて貰うんだよ………」


ドクターJはそういうと、クルリと背を向け、一度手術室から出ていった。待っていろ、ということなのだろうか。いずれにせよ、氷織も織原も、お互いに何か確認する訳でもなく、ただ待機することを決めた。


──────


五分ほど経っただろうか。ドクターJがスマホを片手に戻ってきた。


「……アメリカにね、瞬間転移の能力を使った、配送サービスがあるんだ。送料は空輸と比べても、馬鹿にならないけど、ブツと金が揃えば、瞬き1つの間に届けてくれる、って算段、ねぇ〜〜………!」


ニヤリとしながら説明するドクターJ。なるほど、その薬はアメリカにあって、すぐに買い揃えて届けてもらえば、明後日に間に合うのか。織原はすぐに理解した。


「……ところでドクター、その薬代と輸送代、どこから出るんです………?」

「………氷織くん、後で申請書類を準備してくれるかな?」

「もう!!そんなことだと思いましたよ!!ドクターのお財布はスカスカですもんね!!

全く……研究所の援助、これで何回目なんですか!」

「酷いなあ、氷織くん。今年は、これでもまだ、3回目だよ〜……」

「はぁ……普通は年に1度あるかないかの援助の申請なんですよ??」

「あ、あはは………」


2人のやり取りに、織原は乾いた笑いをするしか無かった。


「あ゛あ〜〜……ま、そういうことで、織原くん、明後日とその翌日、空けといてね」

「あっ、はい!……えっ?明後日と、その翌日……?」

「………ど、ドクター、まさか………」

「………僕も、織原くんも、土日の休日出勤だよぉぉ〜〜〜……………!!!」

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