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三題噺もどき3

散歩―挑

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくよんじゅう。

 


 心地よい風が吹いていた。


 空は少し暗くなり始め、もう数時間で真っ暗になるんだろう。

 ここ最近はまだ明るいなぁなんて気を抜いていたら、一瞬で暗くなってしまう事が多い気がする。まぁ、大抵家にいるのでそんなものたいして関係なかったりするんだけど。

「……」

 それでもまぁ、家にこもりっぱなしもよくないとは、なんとなく体感でわかるので。

 たまには、散歩にでも出かけようと、家を出てきた。

 極力人が居ない時間を狙ってみたが、そうでもなさそうな気がする。

「こんばんは~」

「……こんばんは」

 だって、玄関を出てそうそうに、ご近所のおばさまに見つかってしまったもの。

 そういえば、犬を飼っていると言っていたな。ようやく涼しくなって、散歩もしやすくなったことだろう。ご婦人も、犬の方も。

 勝手な想像だが、犬の散歩というと、朝のイメージがあったものだから、こんな時間い出くわすとは思っても居なかった。

「……」

 うん。

 もう今すぐにでも引き返したいところなんだけど。

 出たからには、少しは歩いておこうと言う気持ちが多少勝ったので、このまま散歩を続行することにした。

 せっかく何かあればと思って、カメラもお供に持ってきたし。

 基本この時間に外に出ることはないから、いいものが撮れるだろう。

「……」

 なんとなく、幼い頃からというか……気づけば夜中に家を出るなんてことを全くしないようないい子に育ってしまっていたので。

 正直、何度も出たいと思っていた時期はあったんだけど、よくわからない罪悪感が心中を支配するのでしたことがなかった。それもあって、内心微妙にドキドキしている節がある。

 今日だって、両親とも帰りが遅いと言うことが分かっていたから出てきたわけであって、いつもなら絶対に出てこない時間だ。

 両親……少なくとも母が帰ってくる時間までには帰宅する予定だ。

「……」

 となれば、さっさと行くとしよう。

 我が家は近くに多少大き目の川が流れていて、その川沿いに公園があるので、とりあえずはそこを目指すことにした。

 あそこはそれなりに写真を撮りに行くことが多くて、大きな木もあるし、草花もそれなりに咲いている。ときおり鳥が飛んでいることもあるから、撮るものには困らない。

「……」

 玄関の鍵を閉めたことを確認し、携帯を持っていることも確認する。

 最悪時間を忘れてなんてことがあれば、何かしらの連絡が来るかもしれないので。まぁ、通知音を切ってしまっているので気づかないかもしれないけど。

 時間を忘れることは早々ないので、大丈夫だとは思っている。変にそわそわしているので、いつも以上に時間を気にする気しかない。

「……」

 とりあえず、今の時間を確認して。

 携帯を鞄の中にしまって、気合を入れて足を踏み出す。

 散歩するだけのことに、何をそんなにと言う感じなんだが。自分でも訳が分からないくらいに緊張しているのだ。仕方あるまい。

「……」

 そうして、気合をいれて。

 ようやく踏み出した矢先に。


 ビュウ―


 と。

 突風が吹き荒れた。

「――ゎ」

 たいしたことはないのに。

 思わずたたらを踏んでしまう。

 転げることこそないものの、足が止まったことには違いない。

 無意識に手が動いたため、かけていた眼鏡に手があたり、落としてしまう。

「……」

 一瞬の出来事ではあったが。

 やる気をなくさせるには充分の出来事だった。

 眼鏡を落とした時点で、気力はゼロだ。

「……」

 もう行かない。

 どうせ、すぐに両親が帰ってくる時間になる。

 もうこれ以上ここに居る方が疲れるに決まっている。どうせ時間はあるんだし、これから涼しくなってくる。今日行かなくたって、散歩なんていつでも行けるんだから。

 今日はもう。

「……」

 やめよう。









 お題:突風・眼鏡・犬

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