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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~決断~

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2章 17話 2節

二手に分かれたワルクワ軍ガル部隊の行動を確認したソーイは

レバーを引くと、一気に後方に下がる。

友軍であるトワとはどんどん距離が離れていった。

だが、そのソーイの行動の理由をトワは把握している。


「ソーイめ。

ナミナミさんに文句を言いつつ、

俺にも無茶振りしてくるじゃないか!

6機をさっさと片付けろと言うんだな。

ふふっ。」


トワは思わず笑う。

ルカゼを収容したガル機であるエクセルハーツは

ソーイに向かっていった。

FG同士の戦いであれば引けを取るつもりはソーイにもないだろうが、

ルカゼが一緒にいるというのが曲者である。

FG同士の戦闘ならいざ知らず、未知なる魔法を使われては、

流石の真和組の1番隊隊長も勝てる保証はない。

自信家であったソーイだが、そこら辺は弁えていた。

だから、ガル隊11機を分断させるために距離を取ったのである。

二手に分かれた二隊を連携が取れないほどに引き離す。

その目的は、ルカゼがいない方、つまりトワに向かった6機を

さっさと片付けて、自分と合流しろという意思をトワは感じたのだった。

その感覚は正しく、まさにソーイはそれを狙っていたのだが、

だがしかし、ルカゼがいない通常のFG戦闘になるとは言え、

敵の数は6機である。

対してトワは1機のみ。

真和組副総長が言うように、無茶振りなのは間違いなかった。

だがトワは、ソーイの作戦に乗る。

彼もレバーを引き、後方に下がった。

それはソーイ機とは真逆の方向である。

そして律儀に6機のキトはトワを追いかけてきた。


「ふむ。

ルカゼを収容したにも関わらず、我々を叩きに来る。か。

ルカゼの魔法をFG戦闘に組み込むつもりか?

もしくは単純に、数で勝っているからの判断か?」


トワは後者だと予想した。

何故なら、ルカゼの魔法の力を当てにしているのであれば、

部隊を二隊に分けるのは愚策であるからである。

あくまでもルカゼを中心として、

今回であれば全部隊でソーイを追えばいい。

しかし、敵には2隊に分けてきたという事は、

ルカゼの魔法を当てにしていないという事である。

少なくともトワに向かってくる6機にルカゼは搭乗していない。

という事は、彼らは2vs11という戦力差を

頼りに攻めてきているのであろうと思われた。

ならば、まだ勝機はある。

ソーイは無理難題を押し付けてきたが、

不可能をやれと言う男ではない。

トワならば出来ると判断しているのだ。


「それならば、期待に応えるというのが

副総長としての責務!」


トワはコンソールパネルを操作すると、コントレヴァの両肩の肩口に付けられた

ミサイルポッドから、24発のミサイルを発射する。

立て続けに2連射。計48発のミサイルが放物線を描きながら

宇宙空間に広がった。

ガル部隊のナンバー2であるボージュ大尉が部下に指示を出す。


「闇雲にミサイルを放ったか!?

向かってくるミサイルだけ撃ち落とせばいい。

誘導性はあるだろうが、バッカーに計算させれば

造作もない事だ。」


彼らワルクワの兵士たちにとって、トワの行動は想定外ではない。

むしろ6対1という圧倒的に不利な状況で

出来る事と言えば、ミサイルをばら撒くか、ソーイのように

後方に逃げるしか選択肢はないのである。

しかし、FGキトが6機もいれば、

向かってくるミサイルを撃ち落とす事はたやすい。

ミサイルは基本的に直線的な動きしか出来ないのだ。

誘導性能で多少の角度をずらす事はできても、

90度直角に曲がる事など出来ない。

スーパーコンピュータ「バッカー」がミサイルの軌道を計算する事で、

迎撃することなど、新兵でも出来る難易度である。

それを理解しているトワは、即座に次の行動に出る。

ミサイルを放出し終わったミサイルポッドを

コントレヴァから切り放つ。

その様子を、ワルクワ部隊も察知する。


「敵FG、ミサイルポッドをパージしました。」


「ふん!

たかだか1機で、6機を相手にしようというのが傲慢なのだ。」


クラークは吐き捨てた。

単純に6対1と言うが、その戦力差は単純に数が多いという事ではない。

そもそもFGは「撃墜する事が難しい兵器」である。

宇宙空間を自由に飛び回るFGに、攻撃を当てる事は至難の技であり、

マシンガンであれば、1機を落とすのに平均1万発以上が必要だという試算もあった。

唯一例外的なのは、ビーム兵器であったが、

ビームは強力な武器であるが、残弾数の問題があった。

FGから撃てるビームライフルは消耗品である。

ジェネレータを積んでエネルギーを補給できたとしても、

ライフル本体が、ビームの高熱に耐えられず融解してしまう。

実際、ソーイのコントラヴァが所持しているビームライフルも

8発が限界であった。

つまり、引き金を引いたのであれば、必ず敵を撃破しなければならないという

兵器である。

6対1という事は、単純に6機で立ち向かえるという事ではなく、

6機と相対する側に、6機ものFGを撃破する兵器がないという事である。

武器が足りないのだ。

マシンガンであれば6万発以上の弾丸が必要で、

ビームライフルであれば、3丁ほど所持していなければ厳しいであろう。

熟練パイロットでも。である。

例外的にほぼ百発百中で敵を撃ち抜くティープのような化け物パイロットも存在するが、

そんなものは規格外であり、巷にゴロゴロいるわけがない。

また、先ほどのソーイのビーム攻撃を見た事で、

クラーク配下の6名はビームを警戒し、1か所にとどまらないよう動き回っていた。

この状態では、流石のティープと言えども百発百中とはいかないであろう。

つまり、トワには6機を撃破するほどの攻撃手段が「ない」のだ。

だからクラークは、臨戦態勢を取ろうとするトワを傲慢だと切り捨てた。

ここはさっさと逃げるべきである。

現に、トワの僚機であるソーイは逃げているではないか。

目の前の敵も逃げるべきだとクラークは考えた。

しかし、トワはミサイルポッドをパージした。

重量の影響が少ない宇宙空間で、

ミサイルポッドをパージする理由は一つである。

立ち向かってくる気なのだ。

逃げるのであれば、ミサイルポッドをパージする必要はない。

むしろ、貴重な武装を放棄して何のメリットがあるだろうか。

向かってくる気だからこそ、FGへの当たり判定の面積を少なくするために

外部につけられたミサイルポッドを切り離したのである。


「心意気は嫌いではない。

だが、死に急ぐ奴に好感も持てんな!

クラーク、マガサ。

確実に墜とすぞ!

油断するなよ!」


6機のキトはそれぞれ距離を取った。

あわよくば、取り囲んでしまおうというような布陣だったのである。

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