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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~決断~

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2章 17話 1節 ぶつかり合う意思

戦艦アカツキに収容されたモミジは

一目散にブリッジへと走った。

状況を確認するためである。


「ナミナミさん。

ルカゼは!?」


ブリッジい映るモニターに、ワルクワ王国のFGが映し出されている。

モミジは見た事のないFGのシルエットに、

それがワルクワのFGであると瞬時に理解した。

モミジの表情を確認したナミナミが

状況を説明する。


「ワルクワ側もFGを忍ばせていたようです。

こちらのFGは2機。

相手は12機。

今回の作戦は失敗ですかね。」


「そう・・・・・・ですか。」


残念そうにも、安堵したようにも見えるモミジを

ナミナミは追及しなかった。

トワと同じくナミナミも、モミジがルカゼを殺せるとは思っていなかったし、

殺す気がないのも把握していた。

真和組を裏切るつもりがあるとまでは考えていなかったが、

そう簡単に割り切れるものでもないだろうと理解していた。

だが、モニターに映るワルクワのFGを見て、モミジの表情は

次第に険しくなる。


「リー教授の引き渡し場所に、12機のFGを投入するって

ワルクワはどういう魂胆だったのでしょうか?

私たちがルカゼを狙う事がバレていた?

そうだとしても、12機もの投入は過剰な気がします。」


モミジの疑問はナミナミも感じていた事である。

仮に護衛のFGが配備されていたとしても、

3機ぐらいであろうと真和組のトップは考えていた。

3機程度なら、トワとソーイという真和組のエース二人の敵ではない。

それが12機。

明らかに過剰戦力のように思えた。

しかし裏を返せば、ワルクワ王国の意図が透けて見える。

それほどルカゼを大事にしているのか?

それとも警戒しているのか?

ナミナミは考えを保留した。


「まぁ、理由はなんであれ、

戦力はこちらが不利です。

今回は、」


そこまで話したモミジの身体が前のめりになった。

モニターに視線が集中する。

モニターにはワルクワ製FGのエクセルハーツが

今まさにルカゼを回収しようとコックピットのハッチを開けたところである。

パイロットスーツ姿のパイロットの姿もチラリと見えた。

その光景にモミジは反応したのである。

ナミナミがモミジの異変に気付いた。

彼女はクールン人。

何かあるかもしれないと、ナミナミはモミジの一挙手一投足に

注意を払っていた。


「どうしました?」


モミジの視線はモニターから離れない。


「この感じ・・・・・・。

強烈な悪意?いえ、意思・・・・・・。」


「パイロットからですか?」


ナミナミの疑問は当然である。

モミジはルカゼとは既に対面している。

今更感想が沸き上がるのはおかしい。

だとすると、ルカゼを回収しようとするパイロットであるのは明白である。

しかし、パイロットはただの人間ではないのか?

モミジは口元に右手を添えた。


「あのパイロットから猛烈な意思を感じます。

ルカゼを唆しているのは、おそらくあいつ。

あのパイロットに利用されているような気がします。

人類の敵・・・・・・そしてクールン人をも破滅に

導こうとする元凶。」


普通の人間が放った台詞であれば、厨二病かと疑われるような言葉であったが、

モミジはクールン人である。

人の理解の及ばない存在の彼女の台詞に、

ナミナミも軽くは扱えなかった。

すぐさま、通信機を片手に取る。


「トワさん、ソーイ。

ルカゼを回収した、ワンオフ機。

あれをやれますか?

最悪、ルカゼは逃がしてもしょうがない。

しかし、あれを墜としてください。」


ナミナミの言葉は電波に乗り、コントレヴァの二人に届く。

急な指示にソーイは戸惑いを隠せない。


「相手は12。

ナミナミさんがそんな無茶を言ってくるなんて・・・・・・ねっ!」


言い終えると同時にビームライフルの光の束が、

FGキトの装甲を貫くと、大きな火球となって宇宙を照らした。


「これで、あと11!」


ワルクワのFG部隊は、1機やられた事で

前進を止め、周囲に展開する。

ビームライフルは量産化されていない兵器のため、

油断があったが、ソーイの攻撃を見て、

油断できないと隊列を整えようとした。

ルカゼを収納したガルは、即座にコックピットのハッチを閉める。


「ルカゼさま。

ご無事で。

まさかガイアントレイブがこのような直接的な行動に出るとは。」


ルカゼはガルのシートの後ろに回った。


「助かった。

私を殺しにきたよ。ガイアントレイブは。

直ぐに暴力手段に出る。

やはり人類は野蛮だな。」


「神をも恐れぬ蛮行。

愚かな事をしたと、後悔させてやらなければなりません。」


ガルはそう答えたが、既に1機のキトが墜とされている。

相手のパイロットがやり手であるのは確かだった。

しかもビームライフル。

強敵である。

ガルは部下たちに指示を出す。


「ボージュ、クラーク、マガサは右の奴を狙え。

コワレチャフ、ゼントは左だ。

私も左に行く。」


「ハッ!」


右のトワにキトの6機、左のソーイにキト4機と

ガルのエクセルハーツが向かう。

キトの武装はマシンガンだったが、エクセルハーツは

ビームライフルを所持していた。

先ほどのビーム攻撃はソーイから放たれたものであったため、

ソーイに同じビーム兵器装備のエクセルハーツをぶつける算段である。

ガルは上唇を舌で舐めた。


「新型機で、パイロットも手練れ。

どの程度の腕前か?

だが、神に手を出した落とし前、付けさせてもらおう!」


ワルクワのFG部隊が散開する。

ガルはルカゼという絶対神に弓を引いた罪人たちを逃す気はなかったのである。



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