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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~決断~

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2章 16話 6節

護衛艦フィーブルが爆散する前、

宇宙空間へと脱出したトワは、戦艦アカツキへと連絡を取る。


「ナミナミさん。

俺たちの場所は検知できていますか?

FGをくれ!」


「もちろんです。

FGコントレヴァ射出!

急げ!」


船が爆破すれば大量の破片が宇宙空間を襲う。

コンバットスーツを着用しており、宇宙空間で生存できるとは言え、

鋼鉄の塊に襲われては、さしもの真和組の剣士でも

無事では済まない。

ナミナミはFGの射出を急がせた。

FGコントレヴァは、真和組が開発・設計した新型機である。

これまでの真和組隊員は、基本はそれぞれオーダーメイドした

FGを操っていたが、組織が大きくなり、

整備班などの部門も成立したことで、FGの量産化が

実施された結果であった。

実戦投入は初であり、お披露目の投入である。

戦艦アカツキのハッチが開き、コントレヴァが2機放出された。

2機共にパイロットは乗っていないが、

スーパーコンピュータ「バッカー」がトワとソーイの位置を

生体反応で検知し、自動操縦でそれぞれ彼らの元へと向かう。

トワらも通信機から簡易のリモート操作で

コントレヴァを誘導した。

FGが、彼らの元にたどり着いたのとほぼ同時に

護衛艦フィーブルが爆散する。

大気のない宇宙空間では、衝撃波などは届かないが

爆発により周囲に鉄の破片が花火のように広がった。

リモート操作されたコントレヴァは、トワとソーイの二人を

飛散する破片から守るように身を挺した。

ガンガンガン!と振動が響く中、二人は操縦席のハッチを開き、

コントレヴァに乗り込む。

既に電源は入っている状態である。

トワはすかさず通信をアカツキに繋いだ。


「ナミナミさん。無事合流した。

あの爆発でも、モミジは無事なはずだ!

そっちで拾えるかい?

俺はルカゼを探す!」


トワは周囲に生体検知レーダーを飛ばした。

どういった理屈か知らないが、クールン人は

宇宙空間でさえも生身で生存する事が出来る。

護衛艦フィーブルは爆散したが、ソーイの剣戟を弾くようなバリアを張れる相手である。

爆発の中でも確実に生きているとトワは信じていた。

間髪をいれず、ナミナミから返信が届く。


「モミジの生体反応キャッチ。

大丈夫のようです。

ですが、モミジなしでルカゼという少女に挑むのは

無謀じゃありませんか?

あまりにも敵の戦力が未知数です。」


「ナミナミさん。

クールン人は、モミジにとって家族のようなもの。

真和組の一員になったからといって、

家族に手をかけるのに罪悪感を感じないって事はない。

そんな教育もしていない。

モミジなしでやります。

行けるな!?ソーイ。」


トワはもう1機のコントラヴァのパイロットに問いかける。

ソーイもコントラヴァに乗り込み、既に周囲を索敵していた。

タッチパネルを叩きながら、トワに答える。


「行けます。

決着をつけてやる!」


レーダーに二つの生体反応があった。

どちらもフィーブルの爆発の勢いのまま流されているようであるが、

レーダーに映る光点は、距離が離れつつある。

どちらかがモミジで、どちらかがルカゼであろう。

フィーブルのクルーの中には宇宙服を着て、宇宙に投げ出されるのに

備えたクルーもいたが、フィーブルの激しい爆発に

耐えられる宇宙服は存在しない。

つまり、普通の人間で、あの爆発から生きて脱出できる者がいるとは

考えられなかった。

トワとソーイは脱出できていたが、襲撃犯その人であったので、

行動と決断が早かっただけである。

船から脱出という可能性を考慮していたのもあった。

しかし、フィーブルのクルーには無理な話である。

案の定、生体反応は二つだけであり、

その二つはモミジとルカゼである。

ガイアントレイブ製の生体反応を確認したアカツキが

モミジと思われる生体反応が流れる方向へと舵を切る。

モミジが気を失っているなどあれば、回収は難しくなるが、

そんな事はないであろう。

トワはアカツキが離れていくのを見届けると、

レーダーが記すもう一点の光源へとアクセルを踏んだ。

足裏につけられたバーニアが火を噴くと、

宇宙空間を滑走する。

先にルカゼを射程に収めたのはソーイだった。


「許せよ!モミジッ!」


ソーイは僚友の名前を叫ぶと、レバーのスイッチを押す。

ガイアントレイブでも量産化に成功したビームライフルが光線を発した。

一瞬にしてルカゼと思われた光源を更なる光の束が包む。

ビームライフルは光速で放たれる。

見てからの回避では追いつかない代物であったが、

ルカゼの展開した防衛システムが自動的にバリアを展開した。

ルカゼの表情が歪む。


「ビーム兵器っ!?」


バシュゥゥ!とルカゼの周囲で光の束が拡散すると周囲にはじけ飛ぶ。

その様子を見たソーイは驚愕した。


「出力を最小限にしていたとは言え、

ビームも弾くのかよ!」


ソーイの言葉にトワも続く。


「可能性は考慮していたはずだ。

だが、いつまで防げるかな。

ソーイ、攻撃を継続だ。」


「承知しました!」


2機はルカゼを対称に左右へと展開すると、それぞれビームライフルの照準を

ルカゼへと合わせた。

ルカゼは宇宙空間で生存できるだけではなく、自由に飛び回る事が可能だったが、

魔法の力をバリアの展開に集中していたせいで

十分な回避運動が出来るとは言えなかった。

FGであれば、回避と攻撃を同時に行う事が可能であるが、

魔法力を行使するルカゼは、マルチタスクを展開することが厳しかったのである。

その点、モミジの剣術と魔法力を組み合わせた戦術は

魔法の弱点を補っていたと言える。

ルカゼに焦燥の表情が見えた。


「このままでは押し切られる!?」


モミジはフィーブルの爆発のどさくさに紛れて逃げろと言ったが、

トワとソーイの二人は、そのタイミングをルカゼに与えなかった。

ルカゼ自身の判断が遅れたのもあったが、

もはや二人から逃げ切れるものではない。

ルカゼはモミジの言葉を思い出す。


「これが・・・・・・。これが人の力!?」


その瞬間、血の気が引くルカゼの脳裏に声が届く。

聞いたことがある声だった。

同時に、トワとソーイのコントラヴァが、一瞬ルカゼから距離を取る。

ルカゼは後ろを振り返った。


「この気配っ!?」


離れた位置からこちらに向かってくる12の光点。

トワとソーイも接近する何かを察知した。


「FGかっ!?

ワルクワめ!FGを忍ばせていたか!」


12の光点が一気に距離を詰めていた。

そして、ルカゼの脳裏にもはっきりと声が届くようになる。


「ルカゼさまー!」


「ガルッ!!!」


ルカゼのピンチに現れたのは12機のワルクワ製FG。

ガル専用機であるエクセツハーツ1機と

量産機キト11機だったのである。


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