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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~
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1章 2話 2節

脳裡に響く声に三人は戸惑いを隠せなかった。

一番冷静だったのはマリー伍長である。


「敵の新兵器かもしれません!

警戒してください。」


マリーの推測は説得力はあった。

何故なら既に、推進力がなくとも自由に動く機雷。という

未知の出来事に遭遇しているからだ。

未知の技術があるのであれば、その原理も不明である。

機雷を動かす要因が、この脳に響く声にあるのかもしれない。

しかし、カレンディーナから動揺が消える気配はない。


「子どもが助けを求めてるんだ。

いくら敵だって、そんな人道的じゃない罠はしかけないだろう?

これは、本物だよ。」


そもそも論点が違っていた。

マリーは、脳に直接響く声という現象を問題視していたが、

カレンディーナは、声の主の存在を気にしていたのである。


「待ってください!

昔は、赤子に爆弾を持たせて路上に放置した罠だってあったと聞いています。」


「だからって、あんたはその赤子を銃で撃つのかい?

助けるのが軍人ってものだろ!

・・・・・・。

ガイアントレイブのパイロット!

聞こえているね?

こちらは、あんたを保護する用意がある。

大人しく降伏するんだ!」


カレンディーナは通信機に向かって叫んだ。

向こうの声が脳裡に響くからと、こちらの声が相手に届くとは限らない。

数秒の沈黙のあと、声はカレンディーナに返事を返す。


「でも・・・・・・。でも・・・・・・。

私が降伏したら、皆が。

ロアーソンにいる皆が酷いめにあっちゃう。」


聞いた事がある単語に、マリーは電子辞書を引く。


「ロアーソン。

ガイアントレイブ国内にある惑星です。」


「ロアーソンの皆も私が助ける。

約束しよう。

その為には、まず話を聞かせて欲しい。」


「嘘よ!

あなた達も、私たちを実験動物にしちゃうんだ。

人とクールン人は一緒に暮らせないんだって

モミジお姉ちゃんも言ってたもの。

私はあなた達を倒す事でしか・・・・・・。

死んでよ!消えてよぉー!」


「くぅ!」


脳裡に激痛が走る。

ヘッドセットの大音量で叫び声を聞いた感じだった。

同時に周囲を転回していた地雷郡が更に加速する。

カレンディーナは苦痛に顔を歪ませながら、

操縦桿を操った。

マリーから転送されてくる地雷郡のデータは即座に

スーパーコンピュータ「バッカー」に解析される。

推進力がなく、動きが読めない地雷郡ではあったが、

一定の指向性はもっており、複雑な動きをしているわけではない。

前に進んでいた機雷郡がいきなり後方にバックするという事はなく、

反転し、後ろに向き直る動きをしていた。

なんとかなった。

だが、近付くことは出来ない。

幾らか消費されたとは言え、いまだ1000発以上もの機雷郡が

宇宙空間を縦横無尽に動き回っていたからである。

そしてその動きは激しさを、早さを増していく。

まるで、声の主の感情が昂ぶるのと比例しているかのようであった。


ピッ!


カレンディーナの元に新たな通信が入る。

迂回行動中のモルレフ曹長からである。


「カレン少将!

鹵獲は無理だ。

撃墜の許可を!」


「・・・・・・・・。」


モルレフの問いにカレンディーナは即座に回答を出せなかった。

明らかに脳に響く声の主は子どもであり、

それは目の前にいるFGパイロットだと推測できる。

しかし、暴れ狂う機雷郡は手に負える代物ではなかった。

カレンディーナは苦渋の決断を迫れたのだ。


「曹長。撃墜を許可する。」


「承知した。

フィグナー伍長!左右から挟みこむぞ!」


「はいっ!」


通信機から声がすると、モルレフとフィグナーのルックが

左右から一気に、ガイアントレイブのFGへと距離を詰める。

カレンディーナたちに意識を向けていた敵パイロットからは

完全に死角だった。

敵の意識がモルレフたちに気付いたときには、2機のルックは

マシンガンの有効射程内に飛び込んでいたのである。


「いやぁぁぁぁぁ!

やっぱり、やっぱり、嘘だったんじゃない!!

来るなー!来るなー!」


脳に響く叫び声と共に、機雷郡が更に暴れだした。

魚群の群れのように動いていた機雷郡が、

まるで竜巻に巻き上げられるように、バラバラとばらけていくと

それぞれが無軌道に各方面に散らばっていく。

嵐の中、暴雨風によって秩序なく飛ばされていくかのような

コントロールを失った機雷郡になったと言っていい。

カレンディーナも状況を飲み込めないでいた。

まるで暴走。

機雷郡は暴走しているかのように感じる。


「パイロットの感情の昂ぶりが、

G-2機雷に乗り移ったとでも言うのかっ!?

そんな馬鹿な。それでは、この機雷郡は

精神波か何かで操っているとでも!?

そんな超能力のようなものがっ!」


カレンディーナの言葉は通信機に乗せたわけではない。

だが、その言葉に脳に響く声は応える。


「これは魔法なのっ!

私達、クールン人に与えられた希望と呪い。

これのせいで、私達は・・・・・・。

私たちは戦わないといけないのよっ!」


敵FGを中心に、周囲を暴れるように飛びまくっていた機雷郡の一部が

急に方向を変え、一点に向かって加速した。

その先には、攻撃の回避に戸惑っていたフィグナー伍長がいた。


「いかん!

フィグナー!回避だっ!下がれ!」


モルレフの叫びと同時にまた一つ、宇宙空間に火球が生まれる。

スノートール帝国軍に4人目の犠牲者が誕生した。


「くそっ!化物め!」


モルレフはアクセルを踏み込んだ。

彼は確実に目の前の敵FGを脅威だと判断した。

生かして帰すわけにはいかないと直感的に感じた。

コイツを逃せば、更なる被害を味方に生じさせる事になると直感した。

しかし、カレンディーナは違った。


「魔法?

実験動物!?

クールン人??

まさかガイアントレイブは、人体実験を!?

こんな子どもにっ!?」


「母さん!目を覚まして!!

そいつはもう4人も殺しているっ!」


タクが叫ぶ!

明らかにカレンディーナの異変を察知していた。

後方で援護射撃に専念していたが、慌ててアクセルを踏み込む。


「母さん!!!!」


彼は思考より先に、前進していた。

彼も素人なりに、危機を感じていたのである。

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