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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~決断~

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2章 13話 5節

女王との通信を終えるとトワは「フゥ~」と深いため息をついた。

直に話した事もあるが、権力者との会話はいつまで経っても慣れない。

だが、トワよりも感情を露にしたのは、隣で通信を聞いていたナミナミである。


「副長!

発言には気をつけてくださいよ。

あなたは真和組隊員3000人の運命を背負っているのですよ。

その家族を含めれば、1万人を超えるんです!!!!

言葉一つで彼らが路頭に迷うことにもなりかねない!」


ナミナミは武闘派の色の濃い真和組にあって、

数少ない頭脳派の隊員で、

真和組の参謀として認知される人物であった。

彼は、絶対君主であるクシャナダ女王に反論したトワの姿勢を咎めたのである。

女王の権力をもってすれば、真和組なぞの組織を潰すことは容易い。

苦言を呈された形のトワだったが、自身にも自覚はあった。


「心配をかけてすまないナミナミさん。

だけど、陛下は賢い人です。

話せば判ってくれる人ですよ。」


国王に対して、話せばわかると評する事自体が不敬な事ではあったが、

トワは悪びれていなかった。

むしろ、クシャナダを遣えるに相応しい人物であると

評価しているからこその言葉である。

ナミナミは首を激しく振った。


「まったく・・・・・・。

貴方って人は・・・・・・。」


言葉ではそう言いながらも、口元には若干の笑みが含まれていた。

ナミナミはトワにカリスマを感じている。

組織のリーダーとして、十二分以上の素質があると感じている。

彼の人当たりの良さも、トワの魅力であった。

ナミナミがこれ以上の苦言を言う様子がない事を見たモミジが

タイミングを見計らって、トワの前に出る。


「副長。

すみません。私のせいで・・・・・・。」


トワがクシャナダに反論したのは、モミジへの処遇についてである。

モミジが責任を感じるのは当たり前だったが、

トワは右手を軽く振ると、モミジの意見を否定した。


「モミジ。君のためではない。

真和組という組織のためだ。

真和組の隊員は、私を、真和組という組織を

信頼してついてきている訳だ。

権力者の横暴な命令などから、守ってくれる存在としてな。

例え王の命令であっても、罪なき隊員を処断するなど

受け入れてしまっては、皆の忠誠心が揺らぐ。

真和組は、隊員一人一人を守る。

真和組が一枚板の組織であるには、必要不可欠な事さ。

それは陛下のためにもなる事だ。

それにクールン人である君を受け入れたのは、私だ。

全責任は私にある。

君に責任はないよ。」


トワの言葉に、モミジの表情は曇る。

真和組への加入を希望したのは彼女自身であったが、

モミジ当人は、自分の存在が問題になるとは全く考えていなかったからである。

彼女は、自分の視野の狭さを恥じていた。

惑星コントスで真和組と合流して以降、

彼女はトワと行動を共にしている。

真和組に加入して間もない彼女が、

実質、真和組のトップであるトワと行動を共にするのは、

彼女がクールン人であるという特殊な事情があったからであるが、

彼女は居心地の良さを感じていた。

クールン人の監視という理由でトワの目の届く所に

配置されてはいたが、真和組は彼女を特別視していなかった。

一般の隊員のように扱われていたからである。

ルカゼやロアーソンでの事件の事もあり、

気持ちが滅入っていた彼女にとって、

それは安らぎを感じる場所になっていた。

トワは気落ちしているモミジを見て話題を変える。


「それより、訓練のほうはどうなんだ?

陛下の命令に背いてまで命を守ったのに、

戦闘で死なれれは適わん。」


トワの問いかけに答えたのは、1番隊隊長ソーイだった。


「筋はいいですよ。

剣術のみであれば、他の隊員には勿論及びませんが、

簡単な補助魔法があれば、各隊の隊長クラスとも

互角に勝負出来ます。」


「ほぅ・・・・・・。」


トワはソーイの言葉の内容を考察する。

魔法の力は凄い。

補助魔法と言えど、内容次第によっては

とんでもないアドバンテージになるだろう。

従って、魔法の補助ありきで勝つのは

当たり前である可能性が高い。

だが、ソーイが筋がいいと言うのである。

ソーイもその辺りの事は理解しているはずで、

彼が筋がいいと評価するのであれば、

単純に剣士としても見所があるのであろう。

恐らく補助魔法というのは、

筋力の部分を補う魔法である。

剣術家として経験の浅いモミジに一番足りないのは

筋力の部分である。

剣の重さに振り回されるというのは容易に予想がついた。

そこら辺を魔法で補助しているだと推測できた。

筋力が互角なら、各隊長クラスと互角に勝負できるというのであれば、

素質的には素晴らしいものがあると言える。

トワは軽く頷く。


「うむ。

モミジ、君の相手は、同じく魔法を使うクールン人だ。

生身の人間相手ではない。

残念ながら、ルカゼの暗殺命令が出た。

こっちは俺としてもどうすることが出来ない。

君も真和組の隊員なら判るな?」


モミジは当初、ルカゼを止めたいと考えていた。

そのために真和組に加入したのである。

ガイアントレイブ王国に反旗を翻したルカゼの命も

助けたたいと考えていた。

しかし、トワはモミジに決断を強いる。

クールン人として生きるのか?

真和組の隊員と生きるのか?を。

モミジは即答を避けた。

彼女にとって、今後の生きる道の回答になるからだ。

生ツバをゴクンと飲み込むと、モミジは口を開く。


「はい。

私は今は真和組の一員です。

私の決断が、真和組の皆さんの命運を左右することになる事も

理解しています。

殺せ!と命じられれば、赤子でも殺す。

それが我々、真和組が真和組である所以です。」


「そうだ。

だから、理不尽な命令を受け入れる事はない。

そこに道理がなければ、俺は指示をしない。

だが、一度指示を受けたのであれば、

それをやり通すのが、真和組だ。

ルカゼは既に、やりすぎた。

裁かれる対象ではある。」


モミジの口元が歪む。

だが、同じ裁かれるのであれば、同じクールン人である

モミジが手を下すべきであろうとの気持ちもある。

ルカゼの叛意に気付けなかった自分への反省の気持ちもある。


「真和の理を世に!」


「よろしい!

ではナミナミさん、作戦会議だ。

ルカゼはワルクワでも最重要人物だろう。

この戦争の切り札になる力を秘めている。

警備も並じゃないはずだ。

ワルクワ王を暗殺するぐらいの難易度の可能性もある。

いや、王は生身の人間だが、

ルカゼ自身の魔法の力がある分、

王より難易度は高いかも知れないな。

作戦は必要だろう。」


トワの言葉に、ナミナミは更に眉間にシワを寄せた。

トワと同意見だったからである。

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