表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~
6/102

1章 1話 6節

宇宙の闇を切り裂いた光は、Uー67ポイントで眩い光を放つ。

マリーの反応が早い。


「人工物の破壊を確認!!

質量的に恐らく敵FG

更に周囲に熱源反応2!

エンジン始動!

FGです!」


マリーの反応の早さに、カレンディーナは少し驚いた。

女性パイロットとして、カレンディーナにつけられた僚機ではあったが、

カレンディーナやマークの対応スピードについてきていた。

訓練ではわからなかった事であるが、

実戦で2人についていけるというのは、並のパイロットではできない。

更にマリーは新兵である。

戦場が急速に兵士たちを成長させている気がしていた。

だが、今はそれよりも考えなければならないことがある。

攻撃を受けたことで敵のFGが姿を現したのだ。

数は2。

先行していたカレンディーナとマークも2機だが、

後方には4機の友軍がいるスノートール軍が有利だ。


「機雷の動きは?

止まったかい?

新兵器の情報が欲しい。

マーク、1機は生け捕れたら生け捕りたい。

マリー、タク、そのまま援護を!」


「機雷はまだ動き続けています!」


「ちっ!

まだ生きているって事は

コントロールしてるのは、どっちだい!」


カレンディーナのルックのブースターが火を噴いた。

一気に距離を詰める算段である。

マリーが的確に状況を伝える。


「1機、後方に下がりつつあります。

もう1機が盾に!」


「わかりやすい!素人かっ!」


マークが言う。

ガイアントレイブ軍のFG編成は基本2機編成である。

先ほどの光源がFGの爆発だとしたら、

今回の敵は3機で闇の中に潜んでいたという事になった。

それはガイアントレイブ軍のFG運用としては違和感がある。

想定される理由としては、

この機雷郡をコントロールしているFGが1機。

その護衛に2機と考えれば辻褄が合った。

護衛の1機を撃墜したのだとしたら、

機雷が未だに動いている理由も、盾として

前面にでてくる1機も納得がいく。

カレンディーナの決断も早い。


「マーク!2人で前の1機をやる!

モロレフ隊は、敵の後ろに回りこめ!

後方の奴は鹵獲する。

マリー!援護を頼むよ!」


そう言うと、カレンディーナとマークの2機は

左右に広がりながら前方に展開し

モロレフ隊の2機は、スッと後方に下がっていく。

モロレフ隊は後方に下がるフリをして、大きく迂回し

敵の後方に回る算段だった。

左右に分かれたカレンディーナとマークの動きに

タクは判断を鈍らせた。

マリーは判断の遅いタクを叱咤する。


「タク二等兵!

反応が遅い!そんなんじゃ死ぬよ。

ついてきて!」


マリーは間髪を入れずにマーク機の後に続く。

この場合、マーク機のフォローに入る判断は正しい。

カレンディーナ機は長距離射撃のできるビームライフルを

所持しているのに対して、マーク機は

一般兵装のマシンガンだった。

従って、敵に近付くのはマーク機である。

この辺りは、説明を受けずとも理解しておかなければならない。

タクは返事を返す代わりに、アクセル踏んで

マリーの後を追う。

正直、返事を返す余裕もなかった。

その原因は動く機雷である。

カレンディーナやマークらは既に「推進力がない動く機雷」の謎について

回答を棚上げしている。

新兵器の類であると認識し、推進力がない事よりも

誰かがコントロールしていると当たりをつけ、

制御を喪失させるほうに舵を切った。

推進力の謎があっても、コントロールさえ破壊してしまえば

脅威ではないからである。

しかし、タクは違和感を拭い切れなかった。

推進力がない物体が、慣性以外で上下左右に何故動く事が出来るのか?

考えても拉致があかない事は割り切るしかなかったが、

タクには不安感が胸に引っかかっていたのだ。


「マリーさん。

敵の新兵器の謎が解けない内は

突っ込むのは危険だと思うっ!」


勇気を出してマリーに進言する。

もちろん、それはマリーも百も承知であった。


「ここで逃がしたら、謎は謎のままだよ。

敵の数よりこっちのほうが数が多い。

ここで敵の戦術を丸裸にするんだ。

こっちは既に、コンガラッソ軍曹、レルガー軍曹が

やられている。

これ以上、被害を出したいの!?」


「軍曹・・・・・・。」


タクはコンガラッソ軍曹の事を思い出した。

彼は少年兵であるタクの教育係であった。

グッと操縦桿を握る手の力が強まる。

ここに来て、ようやくタクは戦場モードへと

意識を変化させる事が出来た。

戦う自覚が出来たと言って良い。

同時にマーク機が敵と交戦可能距離に入る。


「マリー!タク!

前に出すぎるなよ。援護は最小限でいい。」


マークはそう叫ぶと、操縦桿を身体のほうへ思いっきり倒す。

FGルックが一気に頭上へ上昇した。

その後を敵FGからのマシンガン攻撃が襲う。

マークは機体を縦横無尽に操作しながら、

巧みにその攻撃を交していった。


「やっぱりだ。

こいつら、素人同然!」


マークのルックが更に方向転換すると、ガイアントレイブのFGは

マーク機の進行方向につられる。

その隙を見逃すカレンディーナではなかった。


ビューーーン!


光の束が、前方に出てきたFGを貫く。

マークが囮になり、カレンディーナが仕留める。

見事な連携技であった。

前方に出てきたFGは、充分な戦果をあげることなく

宇宙空間に爆散する。

撃墜自体はカレンディーナに譲ったが、マークは勝ち誇る。


「ビームライフルの射程の計算もできないようじゃ、

戦場では生き残れっ!」


瞬間、機体の奥から「カンッ!」という音が

マークの耳にヘルメット越しに響く。


カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!


それは立て続けに続いた。

その度にマーク機のコックピットに振動が走る!


「!!!」


マークは何事か?とモニターを見た。

機械に何か?障害が?

と感じた瞬間、足元の床を吹き飛ばすほどの空気圧と

一瞬にしてコックピット内に広がる爆炎がマーク自身を包み込んだ。

その後に続く爆風と強烈な光がマークを覆う。

パァー!と光球が宇宙空間に広がった。


「マーク少尉ーーーー!!!」


マリーが叫んだ。

二つの光球がまるで双子の連星のように

宇宙空間を明るく照らす。

その光は、誰も幸せにすることのない光だったのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ