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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

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1章 10話 1節 三者尋問

ティープとゲイリは、タクの乗るスノーバロンを見た。

今、まさにコックピットのハッチが開き、

パイロットたちが降りてくる所だった。

まず顔を出したのはタクだったが、背中向きに

コックピット内に視界を合わせながら出てくる。

何か言い合いしているようだ。


「だから、大丈夫か?と思って触れただけじゃないかっ!」


「どこ触ってんの!って言ってんの!

えっち!ヘンタイ!スケベ!」


「違うだろ!

あーもう黙って降りろよ・・・・・・。」


タクとハルカが言い合いしている。

ティープは眉を顰めて苦笑するが、ゲイリはポカンとしていた。

クールン人のイメージがゲイリの中で崩れ落ちていく。

彼は、研究材料であったクールン人は

モルモット同然で、不幸な境遇であると錯覚していた。

保護された少女は、身体は痩せ細っており、髪はボサボサ、

瞳は空ろで、全身傷だらけなものを想像していたのである。

ティープの話を聞いて、余計にそう思っていた。

が、飛び込んできた声は、お世辞にも暗い雰囲気ではなく、

むしろ、明るく元気一杯の感じだったのである。


「元気そうじゃないか?」


思わず口にしたのは、本音である。

その言葉の直後にコックピットからハルカが顔を出す。

オレンジ色の、ショートヘアの活発そうな女の子が

ひょいっとタラップに飛び移る。

ゲイリのイメージは外見を見ても変わらなかった。

むしろ、元気で明るく、活発なイメージが強調された。

だが、ティープは首を振る。


「彼女の妹は、ガイアントレイブに復讐を誓うほど

人を、人類を憎んでいた。

負のオーラに包まれていたよ。

同じ姉妹なんだ。

境遇は同じだと思っていい。

俺には、無理をして空元気に振舞っているように見えるな。」


「なるほどな。

おまえがそう感じるのなら、そうなんだろうな。」


ゲイリは納得する。

そもそも彼は物事を理詰めで考えるタイプである。

ヒラメキとか直感が優れているほうではない。

しかし、ティープはフットコロと言うスポーツの一流選手であったように

感性が優れていた。

スポーツでは、直感的なヒラメキや感じる力が大事である。

感受性と言う面では、ティープにゲイリは遠く及ばない。

それを知っているゲイリは、親友の言葉を受け止めたのである。

二人の視線に気付いたタクは、手を振ると

ティープらの場所にハルカを案内した。

顔見知りのティープが居ることで、ハルカは素直についてくる。

ゲイリの前でタクは敬礼した。


「クールン人の少女をお連れしました。

名はハルカ。

我が軍への保護を求めています。」


「ようこそハルカ君。

私はゲイリ中佐だ。

階級は低いが、君達クールン人の問題の責任者を任されている。

我々はガイアントレイブに利用されているクールン人の解放を

目指してロアーソンまで来た。

安心して欲しい。」


ゲイリは似合わぬ笑顔を見せるが、ハルカの表情が険しくなる。


「私は兵器として扱われないって聞いたから

ついてきたんだよ?

信用できるの?

あなた、所長と同じ目をしてる・・・・・・。」


そう言うとゲイリの顔を睨み付ける。

ここで出てきた所長というワードは、研究所の所長の事であり、

イメージが良いとは思えなかった。

その事をゲイリは隠そうともしない。


「すまない。

ロアーソンが・・・・・・惑星が一つ崩壊したんだ。

疑いたくもなる。」


ゲイリの言葉にティープが反応した。


「そうだ、ハルカ。

ロアーソンの崩壊はルカゼの仕業なのか?

惑星一つを粉砕するほどの力が、ルカゼにはあるのか!?」


ハルカの表情がさらに曇る。

ムキになって否定しない辺りが、彼女の感情を表していた。

なんと応えれば良いのか?判断しかねると言った表情である。

ハルカの答えが返ってくる前に、4人に近づく人影がある。

マリーだった。


「大佐。

ロアーソンが崩壊したって、何があったんです?」


そう言うと、タクの隣にいる少女に気付く。

少女を見たマリーは目を見開いた。


「クールン人?

まさか、惑星の崩壊はあなたが!?」


「私じゃないよ!!!」


今度はハルカは即座に否定した。

しかし続く言葉の歯切れは悪い。


「んー。でも・・・・・・。

原因はわからないんだ。

ルカゼの魔法の力が働いていたような感覚はあったよ?

でも、ルカゼに星を丸ごと壊しちゃうなんて力はないよ!

魔法はね、イメージできなきゃいけなんだ。

イメージして、それが実現可能かは、個人の魔法力による。

星の崩壊なんて、イメージも出来ないし、イメージしても

力が足りる訳が・・・・・・。」


ハルカの言葉を、マリーが遮る。


「ロアーソンには3億人もの人が、

子どもだって、老人だっていたのよ!

皆、何も知らないまま宇宙空間に急に放り出されて、

シェルターに隠れる間もなく、宇宙に・・・・・・。

あれじゃ誰も助からない・・・・・・。」


マリーは顔を両手で覆った。

周辺の状況を調査していたマリーは、

ロアーソンで起こった事象の多くを見ていたのだろう。

その目で確認した凄惨さは想像するに難しくない。


「そんな事言っても、私じゃないもん・・・・・・。」


ハルカのちょっと拗ねたような表情に、男性陣3人は

何も言葉をかける事ができなかった。

状況を全て把握している者が居なかったからである。

かろうじて、ハルカが原因ではないという事を信じられるのみだった。

否、信じたい気持ちが勝ったのだと言える。

だから、誰も言葉を発せなかった。

こういう時の男ほど、頼りないのはいつの時代も同じだったのである。

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