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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

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1章 9話 2節

タクのスノーバロンはルカゼへと近付く。

飛ばされているルカゼを救うためだった。

このままでは、ルカゼは宇宙空間の何もないところに漂ってしまう存在になる。

しかし、ルカゼはあからさまに嫌悪感を示した。


「こいつ!

こっちに来るなー!」


ルカゼの周囲を漂う物質が、力を得て動きだす。

彼女は自分自身を宇宙空間で移動させるイメージが出来ていなかったが

無意識に物質を動かすイメージは出来ている。

原理は同じはずだっただ、イメージの問題であった。

そのため、周囲の物質は操ることができたのである。

力を得たデブリ郡が、スノーバロンへと襲い掛かる。

タクは操縦桿を左右に振って、デブリ郡を避けた。


「一旦、話し合おう!ルカゼ!

このままでは君は、宇宙の果てに飛ばされてしまう!」


「あんただけには助けて貰いたくないのサ!

綺麗事をのたまう、あんただけにはネ!」


強烈な拒否感でタクを拒絶した。

一瞬、タクの脳裡に「勝手にしろ!」という言葉が過ぎったが、

彼の座席の後ろで、心配そうにルカゼを見守る少女の存在が、

タクの心を縛り付けた。

ハルカは本気でルカゼを心配している。

ここで投げ出せば、今は自分たちについて来ようとしている

ハルカも、タクに失望するかもしれない。

タクは改めて気合いを入れるしかなかった。


「俺に助けてもらうんじゃない!

この機体にはハルカも乗っている!

ハルカに助けてもらうって考えてくれ!」


「詭弁を!!」


ルカゼは嫌がっているが、自身が宇宙空間で移動する手段をもたないため、

タクから逃げる事も出来ない。

周囲のデブリを投げつけているが、タクはそれらを器用に交わしていた。

タクが目視できる距離にルカゼを捉えた時、

それは再びタクの前に現われる。


「ガルさん!!!」


「はっはっはっ!

嫌われたものだな、少年!」


「あなたに言われたくはありませんっ!

どいてください!」


タクの目の前に現われたエクセルハーツは、

スノーバロンの進路を塞ぐ。

ロンアイソードの剣先を折られたタクは、

ガルを振り払う手段がなかった。

それを理解してか、ガルのエクセルハーツは

堂々とスノーバロンの前に立つと自らの剣先をタクに向けた。


「君は、ここを通る事は出来ない。

私を押しのける力も、ましてや、

彼女の期待に応える事も出来ない。

自分の無力さを実感するのだな。」


ガルの言う彼女とは、ルカゼの事なのか?ハルカの事なのか?

どちらであるのか、タクには判断できなかったが、

状況的にルカゼの事であろうと推測できた。


「だったら、あなたはルカゼを救うことが出来るんですか!?」


「フッ。

彼女ほどの力を見て、救おうなどと考える事が傲慢なのだよ。

君はアレか?

皇帝ウルスを見て、かの者も救いたいと考えるタチなのかな?

あいつは、そういう男ではない。

誰からも手を差し伸べられずとも、自力で立ち上がる男だ。

そのための権力がある。

地位がある。

彼女の力も同じものだよ。

人に救われる力ではない。人を救う力だ!!」


「何を!何を言ってるんだ!?」


「少年!君にはわかるまい。

圧倒的なカリスマで、人を惹きつけ、

見る者を退屈させない強烈なリーダーシップ。

戦争と言う暴力行為に関して、隙がなく

有無を言わせぬその暴力性。

身体能力に優れ、そのフィジカルのみで

他者に影さえ踏ませぬ、その圧倒的なパワーとスピード!

私は、ウルスにはカリスマ性で負け、

戦略ではゲイリに勝てず、

運動神経では常にティープの後塵を拝してきた!

世界を呪ったものだよ。

何故神は、同世代に化物を目の前に遣わせたのかと!

しかし、今になってみれば滑稽な話だ。

ウルスのカリスマ性も、ゲイリの智謀も、

ティープの身体能力も、

彼女の力の前では、取るに足らないものに過ぎない!

小さな小さな力だ。

悩んでいた私が馬鹿みたいだよ!

世界は私の前に、神を頂きを降臨させたと言うのに!!!」


ガルの叫びに、ティープの眉が歪む。


「何を言う・・・・・・。

その全てでNo.2を取り、総合能力では並ぶ者のない男こそが、

ガル!お前じゃないかっ!

お前が居れば、俺もウルスもゲイリも、もっと楽が出来たものをっ!」


「見ろ!本音が出たぞ!

所詮、俺などは貴様らの引き立て役に過ぎないと!」


「そんな事は言っていないっ!」


「ふん!まぁいい。

少女よ。ルカゼと言ったな?

お前は人間世界を統べる!と言ったか!?

支配すると。

それならば、ワルクワ王国が手を貸そう。

王は、世界の安定を求めていらっしゃる。

社会を乱そうというスノートールの皇帝とは違ってな!

ガイアントレイブを滅ぼし、

お前が望む世界を構築するがいい!

人の支配は、ワルクワに任せよ!

お主を絶対的な神として崇め、

我がワルクワと共に、永遠の社会を作ろうではないかっ!

ルカゼ!いや、ルカゼ様!

貴方にはその資格と力がある!!!!」


突然の変異にルカゼは目を丸くするが、

状況を飲み込むと、口元に笑みをこぼした。


「ふふ。

言い方は気に食わないが、物分りのいい奴もいるじゃないか?

いいだろう。あんたを私のパートナーにする!

私が秩序を構築し、ワルクワが世界を治める!

いいネ。気に入ったよ。あんた!」


「ガル!!!貴様ーーー!」


ティープはルシュヴァンのアクセルを踏んだ。

元々ティープにはクールン人に対しての嫌悪感がある。

婚約者であるカレンディーナを殺された事実は、

クールン人に対して、心を閉ざす十分な理由になった。

そのクールン人に対して、ガルが門戸を開こうと言うのは

許せる事ではなかったのである。

前提としてティープは、クールン人の魔法と呼ばれるものが、

人の世界に影響を及ぼす事を由しとしなかった。


「血迷ったか!?ガル!

その力は、世界を変える。

その力は慎重に扱わなければならない代物だ!

決して、興味本位や人のエゴで扱っちゃいけない代物だ!

お前は世界を滅ぼしたいのかっ!?

タクッ!

お前はルカゼを!!

俺はガルを止める!!!」


先の内戦で、ホワイトデビルと呼ばれた

伝説のエースが、宇宙を疾駆する。

旧友を止めるために、彼も剣を抜いた。


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