表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/157

1章 8話 6節

タクとガルの鍔迫り合いの時間は続く。

ティープも苦悶の表情だった。


「ガル!タク!一旦引いてくれ!

ロアーソンがこんな事になっているんだ!

我々がいがみ合ってる場合じゃない。」


「フン!ロアーソンがこんな事になっているからこそ、

その原因と考えられるその少女が重要になるのだ!

話をはぐらかすな!

これは外交問題に発展するぞ!

わかっているのか?ティープ!」


タクは勿論の事、ガルも引く気は見せなかった。

ティープは弁明するので精一杯である。


「違う!

勘違いだ!ガル。

俺たちも、これほどの事態になるとは思っていなかった。

調査の段階だったんだ!

こんな事になるんだったら、1個師団でも派遣しているっ!」


「どうだか・・・・・・。

大方、この巨大な力を独占するつもりだったのだろう?

そりゃそうだろう、先の内戦でスノートールの国力は低下している。

ミリタリーバランスを取るために、我らを出し抜こうなど

ウルスやゲイリが考えそうな事だ!」


ガルの言葉で、ティープはゲイリの存在を思い出した。

ゲイリは今、無事ロアーソンの崩壊を免れ、

焔騎士団と共に上陸艦に乗船しているが、

ティープはゲイリが母船である巡洋艦ブレイズに残っていると思っている。

この騒ぎで、母船の位置を見失っていたティープは

ブレイズの反応を探した。

その間に気を吐くのはタクである。


「ミリタリーバランスとかじゃないんだ!

ガルさん!あなたもルカゼの言葉を聞いていただろう!?

彼女はガイアントレイブに研究材料にされ、

モルモットのように扱われていたんだ!

あんたたち大人は、子どもを守るのが仕事だろう?

なんで、子どもを戦争の道具にしようなんて考えるんだ!」


「少年!

子どもは無力だからこそ、保護されるのだ。

無力ではない子どもを含める事はない!

君は、人を殺す力をもった子どもを保護できるのか?

遠い過去には、少年法という子どもだからと罪が許される時代もあったが、

人は宇宙に出て、人を殺す子どもも大人と対等に裁かなければならないと

学んだのだ!

一人の子どもの悪戯心が、コロニーに住んでいる

何万人もの命を奪う事もあるからだ!

力は、それだけで罪だ!

だからこそ、力を持つ者は自制心を持たなければならない!

だが、子どもは自制心を持たない。

自制心を育てるのは人生経験だからな!

人を殺すことが出来る子どもは監視・管理しなければならないのだよ!」


「だからって、人をモルモットのように扱う大人に

自制心があるって言うのかよぉーーーー!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴー!

スノーバロンの出力が更に上がる。

ガルのFGエクセルハーツもワルクワ王国の最新鋭のFGであったが、

徐々にスノーバロンのパワーに押され始める。

ガルにも焦りが見えた。


「ぐおおおお!

FGのパワーの差か?

くっ!

今の君を見ろ!

君は感情の赴くままに、見境なしに行動している!

それがどのような結果を生み出すのかも想像しないでな!

君も兵器を手に取り、力があるのであれば、

己をコントロールする事を学ぶのだな!」


「コントロール?そんなの打算じゃないか!?

その打算は、結局は自分のためにやっている事じゃないか!

自分のためなら、平気で他人を陥れようとする!

綺麗事を言うなよ!!!」


FGのパワーで押し負けようとしていたガルは、

弁舌での優位を勝ち取ろうとしたが、タクには通用しなかった。

ガルの不運は、スノーバロンにハルカが搭乗していた事である。

女の子の手前、タクは引くに引けない感情になっていたのである。

しかし、当のハルカはコックピットに座るタクのヘルメットを叩いた。


「そんな事してないで、ルカゼを助けてよ!

もしかしたら、まだ生きているかもしれない!

ルカゼは大気を操れる。

身体の周りに大気を残してるかもしれないっ!!

まだ間に合うかも知れないんだよ!」


ハルカの叫びにも似た言葉に、タクはハッ!とする。


「生きている!?

そうか、だったら尚更、コイツを引き下がらせないと!」


ハルカの声は通信機に乗り、ガルにも届いていた。


「少女の声!

食堂で一緒にいた少女か!?

すでに検体を手に入れているとはな!

その1体で満足しろ!

アレは我々に譲れ!

少年!その強欲さは、許し難い!」


「少年って言うなー!

俺はタクだ!!!!

それに、ハルカは検体なんかじゃないっ!!」


ドブッファ!更にスノーバロンのエンジンが勢いを増した。

辛うじて耐えていたエクセルハーツの間接が軋む。


「ぐぉぉぉぉぉ!」


ガシャーン!

鍔迫り合いからスノーバロンがエクセルハーツを押しきる。

浮かんではいるが、エクセルハーツの態勢が崩れた。

宇宙空間ではあるが、態勢が崩れるのは死活問題である。

スーパーコンピュータバッカーの計算制御に狂いが生じ、

再計算を余儀なくされるからだ。

その時間は一瞬ではあったが、白兵戦闘では致命的なタイムロスとなる。

タクはその隙を逃さず、ロンアイソードを振りかぶった。

叩きつければ、撃墜とまではいかなくとも、

機体に大ダメージを与える事ができる。

まさかタクが押しきると思っていなかったティープも反応が遅れた。


「あの、ガルが!?

いかん!

タク、剣を止めろ!!!」


「うおおおおおおおおおおお!」


ティープの制止は、タクの叫びによって掻き消える。

スノーバロンは振りかざしたロンアイソードを振り下ろした。

エクセルハーツの首筋に強烈な一撃が叩きつけられようとしたその時、


パッキーン!


とスノーバロンのロンアイソードが、真ん中から折れ、

折れた剣先はエクセルハーツに触れる事なく、

スノーバロンの右方向へと弾き飛ばされていった。


「何が!?」


無意識にタクは左手のカメラを見る。

剣先が右に飛んだということは、左から力がかかったと思われたからだ。

そしてそこには、

一人の少女が、宇宙空間に佇んでいた。

こちらに右手を突き出し、明確な意思を以ってスノーバロンとエクセルハーツを

睨みつける少女。


「ルカゼッ!」


タクは、その少女の名前を呼んだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ