表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/157

1章 8話 3節

タクらは揺れる地面を走り、なんとか建物外に出た。

同時にマイーザ大佐ら焔騎士団の隊員たちも脱出に成功していた。

マイーザがティープに声をかける。


「大佐、何があったんんです?

この地鳴りは普通じゃない!」


地震という自然現象を知らないわけではない。

だが、こんなにも長く続く地震は珍しかった。

既に3分以上続いているからである。


「詳しい話は後で話します。

今は上陸艇に乗り込んでおいてください。」


そう言った瞬間、「おおー」という声が聞こえた。

焔騎士団の隊員たちの感嘆の声である。

ティープとマイーザはその声の方向を見た。

声があがった理由はすぐにわかる。

そこには、信じられない光景が広がっていた。

研究所は海岸線の岬の先に建つ施設であり、

眼下は、海と水平線が一望できる。

その水平線の彼方、遠くに見える海が割れていた。

まるで切れ目を入れたかのように、割れていたのである。

惑星は球状であるため、欠けていた。と表現しても良い。

左右に割れた海の真ん中には亀裂が入ったように

海水が流れ込んでいる。

海が二つに割れ、左右が滝のように下方へと流れ込んでいたのだ。

しかも、海を割る亀裂は、更に左右に広がっていくばかりか、

研究所のほうへ、要は地表へと「伸びてきている」

マイーザは思わず声を発した。


「海底が割れているのか!?

海底が割れ、そこに大量の水が流れ込んでいる!?

だが、あの大きさ。尋常じゃない!」


それは水平線の彼方で起っているにも関わらず、

はっきりと肉眼で、海が割れていると確認できるほどの大きさである。

マイーザは陸戦部隊の隊長として、惑星の地政学にも詳しい。

この後、何が起るのか?の想像もついた。


「亀裂に海水が流れ込んで、海が引く!

その反動で津波が来るぞ!

総員、急いで上陸船に乗り込むんだ!」


彼は指示を出した。

大気圏を突破できる強襲揚陸艦は、耐久度に関しては

折り紙つきの頑丈さを誇る。

例え30m級の津波に飲み込まれたとしても、ビクともしないであろう。

酸素供給装置もあるし、100mほどの海底の水圧になら

耐えられる設計がしてある。

研究所は海岸線の岬の先にあり、他に逃げる場所もなく、

焔騎士団の面々は、上陸艇へと次々に乗り込んで行った。

その間にも、海面を割る海上の亀裂は、

猛スピードで地上へと向かってきている。

同時に、亀裂は大量の水を飲みこんでおり、

今や、目の前の海岸線がどんどん後退しているのも

目視で確認できるほどで、確実に水位は下がっていた。

一刻の猶予もない状況である。


焔騎士団が、上陸艇に乗り込むのを確認したティープは

マリーらFGパイロットにも指示を出す。


「マリー!状況の確認を!

惑星自体で何が起きているか?可能限り拾って欲しい!

タク!

ハルカをスノーバロンに!

マリーとタクは、上陸艇のの護衛だ!

このまま地面の亀裂が続くなら、

この場所は大地が割れる。

最悪、FGで持ち上げてもらう事になるかも知れない!

俺は周囲の警護にあたる。」


FGは、宇宙空間専用と言っていい兵器である。

地上での運動性能は航空機に劣り、戦闘力自体は戦車に劣る。

FGが優れている点を無理やりに挙げるとするならば、

大気圏外からの地上への降下が思いつく。

自由落下速度を調整しながら、地上に降下するFGは

空中での制御装置の性能の高さで、撃墜困難となる。

大気圏外から、惑星への突入は戦闘機でも可能ではあるが、

拠点の攻撃には戦闘機は向いているものの、

点としての拠点の制圧には、やはり戦車に分がある。

だが、戦車に空中で制御可能な装置を搭載するとなると

機体は大型化し、重量も重くなる。

重量が重くなるのは、地上での運動性能の低下に繋がるため、

大気圏突入用戦車というものは、存在しない(似たような兵器はあるが)

そもそも、空中で制御出来るのであれば、「戦車」ではなかった。

そんなものを作るよりは、強襲用上陸艇に

兵員と一緒に小回りのきく戦闘車両を搭載したほうが効率が良いのである。

だが、ヘリコプター並みに空中での汎用性があるFGは、

地上拠点の制圧と、空中での運動性能の両面を持つ。

全く兵器として通用しないという訳ではなかった。

宇宙での無敵ぶりよりかは落ちるものの、

戦力としては十分に力を発揮でき、

さらには、その巨大さは人心を威圧する。

戦闘機と同じく全長表記こそ18mと記されるが、

横に長い戦闘機では人は恐怖を感じこそすれ、

威圧までは感じない。

だが、マンションの6階ほどの高さのある

人型の二足歩行ロボットは人の心を凍らせた。

また、迫撃砲などを当てれば、重力や空気抵抗でバランスを崩し、

火力以上の破壊力で墜落が狙える戦闘機とは違い、

迫撃砲の1発や2発では、FGの装甲は貫けない。

装甲の厚さは、機動力の低下に繋がるのが重力下の物理法則だが、

FGは装甲の厚さが機動力の低下とは言い切れなかった。

そして何より特筆すべきは、運搬能力である。

元々、作業用ロボットとして人型に作られたFGは、

人が物を運ぶが如く、物を運搬できる。

カーゴなどをつければ、運搬量は格段に伸びた。

戦闘機よりは落ちるが、空戦能力を有し、

戦車よりは落ちるが、十分な火力を有し、

(1機のFGのコストで、戦車は12両は製造できるため)

重機並みの作業能力と、トラック並みの運搬能力を所持する。

究極の汎用兵器、それが地上でのFG評価である。

つまり、地上に着陸した強襲揚陸艦を持ち上げる事も可能だった。

もちろん、重量によって制限はあがったが、

滑走路のない場所から、FGで航空機を持ち上げ、

FGが空中に飛び上がり、空で飛行機を切り離す事で

垂直離陸と同様の離陸を実現するなどは、FGが作業用ロボットであった時代から

運用されてきた使い方である。

この時も、タクとマリーの2機で上陸艇を持ち上げ、

緊急離陸をする作戦であった。

マリーは、自機のデータをタクのスノーバロンと同期させる。

スーパーコンピュータ「バッカー」が2機を完全にシンクロさせた。

割れる海は一直線に研究所に向かって伸びてくる。

そして海岸線にたどり着くと、海と面していた海岸にも亀裂が入り、

一気に左右に割れた。

バキバキバキ!という音と共に、ヒビは地面に線を描く。


「飛びます!!!」


マリーの掛け声と同時に、2機のFGのブースターが一気に火を噴いた。

ゴゴゴゴゴゴッ!と轟音をたて、FGが宙に浮くと、

2機に牽引された上陸艇も空中に浮く。

遅れて、ティープのルシュヴァンも、空にジャンプした。

地上は亀裂の幅をどんどん広げていき、その幅は10m20mと広がっており、

岬の先にあった研究所まで亀裂が届くと、岬自体が崩壊しながら、

研究所はひび割れた崖に向け傾いたと思えば、そのまま亀裂の中に

転げ落ちるように吸い込まれていった。

同時に近くの地表から、タクらと同じように空中に飛び立つFGが4機ほど見える。

ティープは身構えたが、直ぐに警戒を解いた。


「ワルクワ勢も脱出出来たようだな。

ガルは・・・・・・?脱出できたんだろうか・・・?」


クールン人の秘密を知られた以上、

ガルの生存はあまり好ましくなかったが、

生きていて欲しいとも願うティープだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ