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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

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1章 7話 6節

モミジの掌から放たれた雷の光の線は、

バリバリバリと轟音を立てて、食堂中央に位置するルカゼに向かっていった。

直撃を喰らえば、感電死しそうな勢いである。

ルカゼは2枚のテーブルを自分の前方に、

盾のように縦方向に立てると、雷の直進を防いだ。

しかし、凄まじい勢いのイナズマは、テーブル二つを丸々と飲み込んでしまう。

モミジは更に気を込めた。


「そんなモノで、私のプラズマが止められるとでも思ってるの!?」


バチバチバリバチッ!


テーブルが感電する音と言うのだろうか、

焦げ臭い匂いと、爆音が大きくなっていく。

音に比例して、雷の光も更に眩くなっていった。

巨大な電気の塊は丸ごとテーブル二つを覆い、球体へと変化していく。

まるでテーブルを核とした物質に変容しているようだった。

エネルギーボールと形容してもいいぐらいである。

モミジのプラズマ攻撃が押しているように見えるが、

ルカゼは相変わらずテーブル上の椅子に座ったまま、

前方で勢いを増していくエネルギーの塊を凝視していた。


「モミジ姉はさ。

0のところから、電気を生み出しちゃうのは凄いんだけどさ。

でも、一度生み出しちゃえば、それは物質として認知されるわけでさぁ。」


「え?何?」


「認知できるんなら、操るのは力の強いほうだよね!」


ルカゼはそう言うと、椅子からようやく立ち上がる。

一歩前に出る形になると同時に、

光のエネルギーボールが、少しずつモミジのほうへ押し返されていった。

一気にモミジの表情が険しくなる。

何かに圧迫されているような苦しそうな表情だった。


「嘘っ!

こんな力・・・・・・。ルカゼ、あなた・・・・・・。」


グググッ!と歯を食いしばるようにモミジは声をひねり出す。

会話する事さえも苦しいようである。

そして力の均衡が取れていたエネルギーの押しあいは

一気にそのバランスを崩すと、光の弾は

モミジへと押し返されていった。


「きゃぁぁぁぁぁ!!!」


「モミジ姉ちゃん!!」


ハルカの絶叫と同時に光の弾は、モミジの身体を包み込んだ。

バリバリバリバリッ!

と何かが弾ける音が食堂内に響く。

そして5秒ほどで光は荒れ狂う電磁波を放出し、空中に霧散した。

後には、ボロボロになったモミジが床に倒れていた。


「お姉ちゃん!」


ハルカが思わずモミジの元へと駆け寄ろうとするが、

ティープが少女の身体を抱き止めた。


「大丈夫だ!

服はボロボロになっているが、身体のほうには損傷は見当たらない。」


ティープの言葉通り、着用していた白衣のような服は

焦げたように所々に穴が開いており、黒ずんでいたが、

服の穴から見える肌、袖から通された腕、そして何より

黒い長髪の髪は床に広がっていたが、真っ直ぐなストレートなままだった。

もし感電したのであれば、髪は散り散りに、そもそも

身体自体が焦げていたはずである。

そのモミジの様子はルカゼも意外だったらしく、

感心したような表情をする。


「へぇ。流石にモミジ姉って事かい。

あれを防いじゃうんだ。」


ルカゼの声に呼応して、モミジは顔を上げた。

その表情は苦悶の表情であり、決して無事に防いだというわけではなさそうである。

両腕を支えに、なんとか顔だけ持ち上げると、

ルカゼを見た。


「あなた、何処まで・・・・・・何処までの魔法が使えるの?

そんな力、人間の世界に持ち込んでいいはずがない・・・・・・。」


「そうよ!もみじ姉!

この力があれば、人間の社会を支配できるわ。

利用される事もなく、クールン人は人の社会で

神のように振舞う事が出来る!

この力があれば、可能なのよ!」


「それは、ダメ。

私たちの力で人の社会を乱してはいけない。

大婆さまは、絶対にダメだって。」


「だったら、そのクールン人も私が支配してあげるよ!」


二人の会話にハルカは首を左右に振った。


「なんで・・・・・・。なんでルカゼとモミジ姉ちゃんが

争わなきゃいけないのよ。

こんなのおかしいよ・・・・・・。」


嘆くハルカの隣にタクが並んだ。

視線はルカゼに向けたまま、ハルカに問う。


「君は、二人のケンカを止めたいんだよね?」


「え?どうにか出来るの?」


「わからない。

でも、こままでいいって思ってはいないんだろう?」


「うん・・・・・・。」


ハルカはコクリと頷いた。

ハルカには、何故にこうなったのか未だに理解できてない。

そもそも、妹のルカゼが何を考えているのか?

理解できていない。

ハルカはルカゼが、他国の軍人を呼び込んで、

ここから脱出しようと考えていると思っていた。

だから、惑星の通信をルカゼがシャットアウトした事は、

誰にも言わないでいた。

その事に関してであれば、モミジが反対する理由にはならない。

モミジだって、研究所で被験者として研究される事を

由とは思っていなかったはずである。

しかし、少し風向きが変わってきている。

ルカゼは人間を支配すると言いだすし、

モミジはそれを力ずくで止めようとして、

そして二人は一歩間違えば、死んでしまうような魔法の使い方で

お互いを攻撃している。

何より、ルカゼは明確な意思で、ワルクワの軍人を殺した。

何もかもが急速に動いている。

彼女は時の進みについていけていなかった。

だが、今感じる事は、ルカゼとモミジの戦いを止めたい。

それだけは確実だった。


「止めてくれる!?

ルカゼとモミジお姉ちゃんを!

止めてっ!!!」


「ああ・・・・・・。任された!!!」


タクはクラウチングスタートの態勢から一気に前に走り出した。

食堂の中心にいるルカゼに向かって!

それはティープさえも止める事が出来ないスピードだった。


「タクッ!!!」


どちらかと言うと、ハルカに意識を集中していたティープは

タクの突進に何の反応もする事が出来ず、

少年は真っ直ぐに走り出したのである。


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