表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/151

1章 7話 5節

パリーン!!!


何か硬い物にヒビが入った時のような音が食堂内に響いた。

その音と同時に、タクらを壁へと押さえつけていた力が

急に失われると、重力に従って地面へと叩きつけられる。


ドサッ!!!


タクとティープとハルカは折り重なるように地面へと落下したが、

ティープが下敷きになる事で年少の二人はティープを

クッション代わりにすることができた。


「いたたたた!」


「父さん!!」


タクは素早くティープの上から降りると、

父に声をかける。

痛そうにはしていたが、問題なさそうではある。

タクは続けて周囲を見渡した。

食堂の中央にだけ、ルカゼが座る椅子を乗せたテーブルが

ポツンと残されていたが、その周囲にあったテーブルや椅子は

全て壁に叩きつけられ、壁の前でバリケードのように積み上げられていた。


「急に収まったな?

何がどうなっているんだ?」


ハルカは頭を打ったらしく、右手で頭を撫でながら立ち上がる。


「たぶん、ルカゼの魔法を、モミジお姉ちゃんが解除したんだと思う。

滅茶苦茶だよー。もぅ。」


ハルカの言葉通り、食堂内は滅茶苦茶に荒らされた状態であり、

自由を取り戻したワルクワの兵士たちが、

動いていない隊員の側に駆け寄ると声をかけていた。


「おい!!!大丈夫か!!

おい・・・・・・死んでる!?」


最後のワードに、3人ほどが即座に反応した。

ワルクワの兵士たちは、一気に銃を身構え、

部屋の中央に陣取るルカゼに照準を合わせる。

ティープもほぼ同時に、銃を身構えた。

声を発したのはワルクワの兵士の一人である。


「貴様っ!

何をした!?

動かずに答えろ!

動けば撃つ!!!」


彼らは軍人である。

生と死について、ある程度の許容はあった。

戦場では隣に立っていた仲間が、次の瞬間、

崩れ倒れるかもしれない覚悟はあった。

だがそれは戦場で、相対する敵が軍人だった時の話である。

目の前にいる民間人に殺されるというシチュエーションは

想定していない。

警戒を解いた状態で、不意打ちの如く仲間が殺さるような非人道的な、

そんな事は許容もしていなかった。

だが、ルカゼは蔑んだ目でワルクワの兵士を見る。


「チッ!

軍人なら、その位でくたばらないで欲しいね。

なんのための訓練だか。」


「きさまー!」


怒鳴った兵士が、片膝状態から立ち上がると銃の照準を覗き込む。

その動作を見たルカゼは、右手を水平に払った。

と、同時に立ち上がった兵士の首が身体からズレたかと思うと、

ドスン!と地面に転がり落ちる。

転がり落ちたのは、兵士の頭部だけだった。

身体は立ったままだったが、直ぐに力を失ったかのように

遅れて崩れ落ちる。


ドサッ!


「きゃぁぁぁぁ!」


目の前の惨劇に、ハルカの悲鳴が食堂内に響いた。

モミジは血の気が引いたような顔になる。


「ルカゼ!

あなた何やってるの?

何をしたか?わかってるの!?」


「モミジ姉、私は決めたんだ。

人間の都合のいいオモチャにはならないって!

私は人を支配する。

支配しなきゃ、支配されるだけなんだ!

私にも、自由に生きる権利はある!」


「ルカゼーーーー!!!」


モミジはルカゼの名を呼ぶと、頭上でバチッ!と光が一瞬点る。

バチバチバチッ!

その光は、みるみる内に数を増やしていた。

光は、点と点から、イナズマのように点同士を繋ぐと、

電気が流れるように、その範囲を拡大していく。

ティープは、タクとハルカの二人を守るように前に出た。


「あれは。電気か!?

プラズマを発生させることもできるのか?」


後方にいるハルカに尋ねた。

ハルカはティープの後ろから、腰辺りの服を掴んで離そうとはしない。


「モミジ姉ちゃんは、電気を操れるの。

でも、あんなに強力なヤツは初めて・・・・・・。

お姉ちゃん、怒ってる・・・・・・。

ルカゼが死んじゃう・・・・・・。」


目の前で、人が死ぬのを見たハルカは完全にナーバスになっていた。

銃を突き付けられても平気な顔をしていた少女だったが、

やはり精神的にはまだ幼いように思える。

だが、ハルカと瓜二つのもう一人の少女は、

微動だにしている様子はなかった。


「ふーん。

モミジ姉、やる気なんだ?

あたしはクールン人の未来を切り開こうとしているだけなのに、

邪魔をするんだ。

人間の味方ってわけね。

いいよ。

じゃあ、私の敵って、事だよねっ!」


言い終えると同時に、ルカゼは両手の掌をモミジに向けた。

その仕草に連れられるように、壁まで吹き飛んでいた机が

再び宙に浮くと、一直線にモミジに向かって突っ込んでいく!

タクらが戦場で出会った魔法、機雷を自由に動かす魔法に似ているが、

ここは無重力空間ではなく、重力下である。

どちらが高度な魔法なのかは誰も知らなかったが、

物体を動かすのは同じだった。

モミジの電流に、物理でルカゼは応酬する。


バチバチバチッ!


飛来した椅子や机が、モミジの手前でプラズマの網に引っかかると、

まるで感電したように電気を通す。

まるで電気の膜に遮られるかのように、感電した机や椅子は

力を失い、床にボトボトと落ちた。

攻撃を防がれた形になったルカゼだが、まだ余裕の表情であった。


「へぇ・・・・・・やるじゃん!」


「あなたたちが赤ちゃんだった頃から、訓練をやってきているのよ。

経験が違うわ。」


モミジは右手を付き出すと、周囲のプラズマがモミジの身体に集まり、

流れるように右手の掌に集まっていく。

そのまま、掌より電流が豪雨の日の雲から落雷するイナズマのように

ルカゼに向け走った!!


バチバチバチバチ!!!


イナズマは荒れ狂うドラゴンの首のように、

のたうちながらルカゼに向かっていく。

見た目だけでも強烈な電流であり、触れただけで感電しそうなほどの

強さで少女を捕らえようとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ