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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

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1章 7話 3節

ハルカが声をかけて食堂に入ったため、

食堂の中に居た人の輪の視線が一斉に入室者たちに向けられた。

視線が合った者たちが同時に声を発する。


「ガルッ!?」

「ティープ!?」


食堂にはガルらワルクワ王国の陸戦隊のメンバーが8人ほど居た。

彼らも研究所内に突入していたのである。

その中に、見知った顔があったため、

思わず声が出てしまったのだった。

特にティープとしては、

可能であればクールン人の謎は、ガルらワルクワ陣営には

ばれて欲しくなかったところであるが、

そうも言っていられない状況である。

ワルクワは既にクールン人と接触していた。

そう、ワルクワの陸戦隊のメンバーに囲まれるように

少女が独り佇んでいる。

その姿を見て、ティープは思わずハルカを見た。

そしてガルも、ハルカを見て、思わず目の前の少女を見た。

2人は瓜二つだったのである。


「クローン!?」


ガルの言葉を、部屋の中にいた少女はフッ!と笑う。


「これだから人間ってヤツは度し難い。

初対面の相手に軽々しくクローンなどと。」


ハルカも続いた。


「そうよぅ!

私たちは双子、一卵性の双子ですからね。

クローンじゃありません。」


「す、すまない。

ここは研究所だから、思わずな。

しかし、何で子どもがこんなところに?」


ガルは自身の非礼を謝った。

そして助けを求めるようにティープに話しかける。


「ティープ。ここは何を研究していたんだ?

子どもを被験者とするなど、まともな研究施設だとは考えにくいが。」


ガルは目の前の少女とティープらと一緒に姿を現した

ハルカ、モミジの3人の少女が白衣を着ているのを確認すると

彼女らを研究の被験者だと断定していた。

子どもが研究所の職員であるとは考えにくかったからである。

ガルの問いにティープは表情を歪ませる。

回答に窮していた。

ティープの答えがないのを見て、ハルカが前に出る。


「ふーん。

おじさんたち、何も知らないでココに来たんだ?

凄いね。」


しかし、部屋にいたハルカと瓜二つの少女が否定する。


「私が呼んだんだよ。

ハルカお姉ちゃんが、スノートールの軍人を連れて来ているのが

わかったから、私はここにワルクワの兵士を。」


ガルは少女に向き直る。


「呼んだ?

呼ばれたつもりはないが?」


しかし、少女はガルの質問には答えなかった。

ハルカは更に少女に近付く。


「そっか。

で、これからどうするの?ルカゼ。」


少女はルカゼと呼ばれた。

姿形が瓜二つであり、一卵性の双子と言っていた事で

ティープらは彼女がハルカの妹、ルカゼである事は察しがついていたが、

当たりだったらしい。

そこにそれまで黙っていたモミジが話に割って入った。


「ハルカ、ルカゼ。

あなた達は何をしようとしているのよ。

他国の軍人さんを呼んだ・・・・・・って。

亡命でもするつもりなの?

他国だからって、

私たちを受け入れてくれる保障なんて何処にもないのよ?」


その問いにまず答えたのはハルカだった。


「大丈夫!

スノートールの人は、私たちを守るって言ったわ。

ね?言ったよね?」


そう言うと、タクを見た。

ここに来るまで、散々邪険にしていたタクに対して、

こういう時だけいい顔をするのはズルイと感じたが、

タクは大きく頷いた。


「社会が追いついていないだけで、

君たちも同じ人類だ。

区別する社会が悪いんだ!

それは、正さなきゃいけないっ!」


タクの言葉は、孤児出身だったのも理由としては大きい。

親に捨てられた、家庭がない。というだけで

社会の歯車と噛み合わなかった過去が、この言葉を発せさせる。

しかし、ハルカの妹、ルカゼは

タクの言葉に冷たい笑顔を見せた。


「ふん。

人がクールン人を受け入れる事が出来るって?

出来るわけがない。

人にはない圧倒的な力を持っているクールン人を

人間は鎖に繋がずに受け入れる事なんか出来ない!

あなたも私たちの力を利用しようとするよ。

利用して、制御しようとする。

そして、他者を攻撃する武器にするのよ!」


それまで大人しかったルカゼが急に饒舌になる。

側にいたガルはあまりもの豹変に、思わずティープを見た。

自身は何も知らないが、この旧友は何かを知っている素振りだったからだ。


「武器?圧倒的な力?

何の事だ?ティープ!?」


ガルはティープに詰め寄ろうとするが、

ルカゼが右手を水平にあげ、ガルを静止した。


「!!!」


全員の視線がルカゼに集まると彼女はフゥと宙に浮き上がる。

同時に、食堂に備え付けの椅子もルカゼと並んで浮き上がると、

大きめのテーブルの上に移動し、そこで着地する。

テーブル上に、ルカゼと椅子が乗っている状況になった。

必然、ルカゼは全員を見下ろす態勢になると、

静かにテーブル上の椅子に座る。

座った位置でも、誰よりも高い場所に彼女の顔はあった。

周りの人間に見上げられる状態になると、

まるでこの場の支配者のようである。

ガルらワルクワの陸戦隊員たちは呆然と事の成り行きを見ているだけだった。

それは当然の事だろう。

人間と椅子がフワフワと浮き上がった光景を見たのだ。

重量を無視して浮かび上がったのだ。

言葉を失って当然だった。

誰もが言葉を発せれない中、ルカゼは不敵に笑う。


「人が私たちを受け入れられないなら、

私たちが人を受け入れるしかないのよ。

さぁ、クールン人に受け入れられるのはどっち?

スノートール?ワルクワ?

どちらが、私と一緒にガイアントレイブを滅ぼしてくれるの?

どちらがクールン人と共に、世界を統べる?

クールン人の世の中に寄り添えるのは、

果たしてどっちなのかな?

私はどっちでもいいのだけれど・・・・・・。ふふっ。」


ゾクッ!ルカゼの言葉にティープの背中に悪寒が走った。

ティープ以外の男達は、皆ポカンとしていたが、

彼だけが、ルカゼの言葉の真意を知った。

それが出来る。と彼は直感的に感じたからだった。

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