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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

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1章 6話 2節

タクらは既にFGのコックピットに乗り込み、

出撃の命令を待っていた。

同じくFGルックに乗るマリーから通信が入る。


「ワルクワ軍は、衛星軌道上からの攻撃を実施せず、

上陸作戦を敢行する模様です。

確かに、地上の様子を確認していますが、

防衛体制が張られているとは思えません。

何か変です。」


マリーの報告にティープが応える。


「今までにない兵器が待ち構えている可能性がある。

マリーとタクは、上陸船の護衛を。

俺は単機で降下ポイントに直行する。

最悪、推進剤の必要ない・・・・・・、

熱感知レーダーに反応しない迎撃誘導ミサイルが

大量に地上から発射される事も留意しとけ。

そうなれば手動で撃ち落とす必要がある。

武装はミサイル迎撃用にマシンガンなど弾数の多い武器をメインに。

嫌な予感がする。

何かいる。」


ティープはいくつもの戦場を生き抜いた歴戦の兵士である。

その本能が危険なシグナルを感じていた。

ティープでなくとも、ロアーソンに不気味さを感じる状況である。

だが、退くという選択肢はなかった。

その不気味さを確認すべく、ここに来ているのだから。

ティープはFGルシュヴァンの動力を入れる。


「重力下の運用だが、計算はバッカーがやってくれる。

天と地がある分、宇宙空間での戦闘よりも楽なはずだ。

重力に引っ張られるのではなく、大気に乗る感覚を忘れるな。

ティープ、ルシュヴァン、出る!」


巡洋艦ブレイズのハッチが開き、後方へカタパルトからルシュヴァンが

宇宙に放出された。

既にロアーソンの重力圏内であり、艦隊はロアーソンの自転に合わせて

第一宇宙速度で衛星軌道上で静止していたが、

後方へカタパルトで放出する事で、放出されたFGは速度を失い、

惑星上に落下しだす。

次に大気圏突入用の耐熱バリアシールドを展開。

このシールドがあれば、自由落下速度であれば

大気圏で燃え尽きる事はなかった。

もちろん、バッカーによって緻密なに計算された結果である。

まるで惑星に落ちていくように、ルシュヴァンは大気圏に突入した。

シールドが空気抵抗を最大に受け、大気との摩擦を防ぐ。

更に落下スピードが遅いため、大気圏内であっても

ブースターを吹かす事ができた。

落下速度の調整も可脳だったのである。

この時代、十分に準備された環境では、大気圏突入は何の支障もなく

降下作戦を実施する事が可能だった。

続いて、マイーザ大佐率いる陸戦部隊「焔騎士団」の隊員100人を乗せた

強襲揚陸船が同じように放出された。

直後に、マリーのルックとタクのスノーバロンが後に続く。

両機は、強襲揚陸船が展開した耐熱バリアシールドの影響下に入ると、

船の防衛態勢に入った。

速度は落としているとは言え、大気がこすれる振動がコックピット内の

二人にも届く。

遮音材によって、音は抑えられるが、

装甲から届く振動は、

落下のエネルギーの凄まじさを感じる事が出来た。

マリーはタッチパネルの液晶モニターを軽快に叩く。


「既に地上から我々は視認されているはずですが、

地上での動きは未だありません。」


3機と強襲揚陸船は座標を合わせた。

落下地点は、ロアーソンのユイボック駐屯所内にある

ユボックロアーソン研究所付近である。

ユイボック駐屯所は、惑星内にある駐屯所の一つであるが、

規模はそこまで大きくない。

作戦は順調かと思われたが、計算を続けるマリーより新たな報告が入る。


「ワルクワ軍からも、ユイボック駐屯所を落下予測地点とする部隊を確認。

我々と同じく、FGの護衛を1機つけています。」


「FGを!?」


その報告に、ティープは眉をしかめた。

FGは汎用的な巨大人型兵器であるが、重力下の運用は望ましいとは言えない。

ティープらのように、テストなどという目的がなければ、

あまり投入価値のない代物だった。

もちろん、巨大な人型の兵器は、それを見た人間に

心理的に威圧感を与えるものであり、

戦闘機で制空権を押さえ、地上を戦車で侵攻するよりも、

FG1機が前方から歩いてきたほうが、防衛部隊は降伏するという

研究結果も出ている。

しかし、元々地上にあったFGを使用するのであれば兎も角、

ここで宇宙からFGを降下させるには何かしらの意図を感じざるを得なかった。


「ガルの差し金かっ!?」


ティープの予想は当たっていた。

しかも、FGのパイロットはガル本人だったのである。

彼はドメトス6世のお気に入りの武官であり、

FGパイロットとしても、スノートールの内戦で活躍している。

そのため、彼も新型FGラキシエルを拝領していたのである。

スノートールがFGの重力下テストをするのであれば、

自分も。という魂胆もあったが、

もちろん、それだけではない。


「奴らの降下地点には、軍の研究施設がある。

否、逆にそれ以外には何もない駐屯地だ。

奴ら、何か掴んだのか?」


ガルも情報という代物の価値は理解しているほうである。

先日のカレンディーナ少将の戦死のニュース。

その婚約者であるティープの復帰。

そして、ゲイリとティープのこの度のワルクワ軍への接触。

点と点が繋がっていく感覚を感じていた。


「もし、ティープの目的が、婚約者の復讐なのだとしたら!?」


ガル自身もカレンディーナ少将とは面識がある。

世話になった恩もある。

もしティープが復讐を考えており、その相手が

ユボックロアーソン研究所にいるのだとしたら?


「水臭いじゃないか。ティープ。

おっかさんの仇は、俺の仇でもあるんだぜ。」


そう呟くガルであった。


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