1章 1話 3節
人型巨大ロボットであるFGの利点、それは
人間の手のように、汎用的な武器をどの機体も同じように扱える事である。
そして生身の人間と違って、大人であろうが子どもであろうが
そこに差はなかった。
コックピットさえ自分の身体に合わせてオーダーメイドしてしまえば、
身体が出来上がっていない少年であっても、
120cmライフルでさえも軽々と撃ててしまう。
この時代でも、少年兵、老人兵の数は多くはなかったが、
それは戦力として足りないのではなく、倫理的な話でしかなかった。
むしろ、知識が必要なエンジニアや整備兵に熟練者が求められ、
理想を言えば少年兵を前線に送り出す。
という事は起こり得たのである。
タクは受け取ったライフルを構え、身体になじませる。
訓練の中で身に付いた習性だった。
タクの動作を確認してカレンディーナも軽く頷く。
「じゃ、行くよ。
3機でブレイズの周辺を哨戒する。
距離感を間違えないようにね。」
尊敬する上官の声に、マリーとタクは頷いた。
3機はカレンデーナのルックを先頭に、斜め後方にマリーとタクが並び
左右を警戒した。
本来であれば、少将階級のカレンディーナは後方で指示を出す立場であるが、
新兵のマリー、作業員のタクに先頭を任せるわけにはいかず、
カレンディーナが先頭に立つのは致し方ない事である。
タクは周囲を針の穴を見逃さないように見張る。
瞬間、タクが声を上げた。
「あっ!」
「どうした?」
「星の光が消えた。
座標送ります!!」
タクはコックピット内のパネルを素早く叩く。
ここは宇宙空間であり、星々の光は無限の如く360度に渡って広がっていた。
大気も雲もない空間で、星の光が消えるというのは
まったくないとは言えないが、あまり考えられない。
可能性としては星と自分との間に、
何か巨大な障害物が通りすぎた場合などである。
ただし、何千と輝く無数の星の中で、
その中の一つが消えるという事に気付くのは難しい。
だが、タクはそれを見つけたのだった。
データを受け取ったカレンディーナは情報を精査する事なく、
右手に構えたライフルを座標に向けて構える。
彼女は指揮官であり、所持しているライフルも
未だ量産体制には至っていない強力なビームライフルだった。
ビューーーン!
銃口から光の束が走る。
目標を目視で捉えたわけではなく、目標との距離もある程度しかわからない。
だが、彼女はためらわずに撃った。
それはスノートールの内戦を生き抜いたエースパイロットの嗅覚だった。
もちろん、タクが察知したのは岩石などの宇宙デブリかもしれない。
たまたま、大きな岩石があって星の光を遮ったのかも知れない。
だが、カレンディーナは撃った。
ビームライフルの光の束は、漆黒の闇の中へと吸い込まれると、
3秒後、何もなかった空間で光の玉を出現させる。
「敵っ!?」
マリーは思わず口にしてしまう。
宇宙空間はほとんど何もない空間である。
そこにレーザービームを撃ったとて闇の中に
光の束が吸い込まれていくだけだった。
可能性として岩石などの宇宙デブリに当たったという可能性もある。
だがその場合、爆発の光の玉にはならず光のしぶきが周囲に舞い散る感じになる。
丸く大きく輝く爆発は、対象が酸素を含んでいる人工物であり、
それが燃焼した事を意味していた。
そしてこの場合、人工物とはFGに他ならない。
ピッ!
光の玉が収束すると同時に、レーダーに反応が浮かび上がる。
光の玉とは別の反応だった。
マリーは通信機に向かって叫んだ。
「熱源レーダーに感!
数は1つ。間違いありません、FGです!!」
「僚機がやられたんで慌ててエンジンをかけたようだね。」
カレンディーナは冷静に、まるでマリーとタクに説明するかのように言う。
マリーの状況報告が続く。
「熱源は、後方に下がって行きます。
離脱する気のようです。
追いますか?」
「いや、止めておこう。
相手は動力源を切って待ち伏せしていた。
それがどういう事か判るかい?
物理レーダーにも反応がなかった。
つまり、敵は少なくとも3日間、
FGの動力や電力を切って、静かにこの場所に潜んでいたって事さ。
レーダーに感知されない程度の電力は使っていただろうけど、
辛抱強くさ。
それは、我々がこの地を通る事がわかってないと出来ない事だし、
こちらの動きがバレテいるんなら
他にも潜んでいる可能性が高い。」
「敵は無人機。という事はありませんでしょうか?」
「無人機なら、逃げないよ。
味方がやられたところで、それでも身を潜めて
チャンスを伺うはずさ。
慌ててエンジンをかけたところを見ると、人だね。」
ふぅ。とカレンディーナはため息をつく。
敵襲の可能性は考えていたが、レーダーに感知がなかった以上、
まさか。という思いが強い。
彼女は先行しているマーク少尉に通信を繋ぐ。
「マーク少尉!
敵の存在を確認した。
コンガラッソ軍曹は敵にやられた可能性が高い。
そっちは大丈夫かい?
敵は熱源を切って、暗闇の中に身を潜めている。
一回、戻って我々と合流してくれ。」
そこまで話したとき、カレンディーナはある事に気付いた。
大きな違和感である。
「待てよ。どういうことだ?」
「どうかしましたか?」
マリーの声に2秒ほど沈黙で返す。
明らかにおかしい。明らかにおかしいが、
口に出すことさえもおこがましいほど、おかしいのである。
「コンガラッソ軍曹は、どうやってやられたんだ?
レーダーに熱源反応はなかった。
敵に攻撃されたのだとしたら、攻撃した瞬間は
熱反応があるはずだよ。
でも、何もなかった。
何かがおかしい。
何かを見落としている気がする。」
カレンディーナがそう呟いた瞬間。
三つ目の光の玉が暗闇に輝いた。
それはマーク隊が向かった方向からだったのである。