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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~転承~

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3章 25話 6節

立ち入り禁止区域調査部隊は、一本道を渡りきり

問題のエリアの入り口に到着した。

入口にはゲートが設置されており、高い壁が侵入者を阻む如くそびえる。

立ち入り禁止エリアをぐるっと囲むように

壁は配置されているが、全周を覆っているわけではなく

入口の左右5キロ程度まででで壁は途切れていた。

もちろん、その壁を迂回する形で立ち入り禁止内に侵入は出来るが、

道から外れれば、マークサス特有の重重力で

立つことさえもおぼつかない。

今のタクらのように反重力スーツを着ていれば問題ないが、

反重力スーツは高価なものであり、

一般人が入手する経路もないような軍事兵器の一種である。

つまり、通常であればこの立ち入り禁止区域に侵入するのは

目の前のゲートを通るしか方法なかったのである。

ゲートは常時は警備兵が常駐していたらしいが、

今は無人である。

司令代理のスゥドウ中佐が虹彩認証のカメラに

顔を近付けると、ゲートが反応しドアが開いた。

スゥドウ中佐がベイノ少将の顔を見る。

スゥドウ中佐はベイノの階級が少将と将官であり、

艦隊司令官だという事は知らなかったが、

これまでの流れで、部隊の上の役職であることは把握していた。

視線を受けたベイノはティープに視線を流す。


「大佐。

中への突入はどう致します?

可能であれば、入口に我が部隊の隊員を20名ほど配置し、

10人は中に同行させようかと判断していますが?」


「うーん。」


ティープは少し悩んだ。

彼はパイロットであり、部隊の指揮官などではなく、

こういう場面で瞬時に決断するような立場ではない。

あまり物事を考えるタイプでもないため

ベイノの提案の判断に悩む。


「そうですね。

口の堅い信頼できる者であるならば、中へ同行していただければ

助かります。

中は結構広い。」


半径10kmにも及ぶ広さであり、小山と木々が生い茂っていた。

マークサスは重力場が強い惑星であり、この島には

木というものは自然発生しない。

高いものでも全長1mの草が最大である。

従ってここにある木は全て植林である。

反重力装置が木の成長を妨げず、高くそびえているが、

立ち入り禁止区域内を鬱蒼と木々が生い茂った環境を見ると

視界を遮る役目があり、何かを隠している感が強い。

そして、平原など見晴らしが良い場所であればいざ知らず、

木々が生い茂った小山が点在するこの場所は、

何かを探すには不向きであり、しかも30人ほどの

クールン人が目標となると、ブレイズの陸戦隊だけでは

人手不足であると思われたのである。

ティープはベイノの進言を受け入れ、

ブレイズ陸戦隊である焔騎士団のメンバー30名と

ベイノの直接指揮下にある陸戦要員10名の

計40名で探索チームを二つに分ける事にしたのである。


ティープ、タク、ハルカ、ベイノのチーム19名と

事情を知っている焔騎士団のチームリーダー、

ルイ少尉が率いる25名の2班にまず分かれる。

ティープの隊は、入口のゲートから伸びる道路を真っすぐ進み、

ルイのチームは道から外れた林の中を探索する事となった。

ルイのチームは更に5人1チームで5班に分かれ、

それぞれが林の中に入っていく。

それを見届けると、ティープ隊も立ち入り禁止区域の奥へと進んだ。

道は狭く車が入れる幅ではなかったため、徒歩である。

周囲に立ち並ぶ木々が、恒星からの光を遮り

日中なのに少し薄暗い林の真ん中を突っ切る道は

宇宙ではお目にかかれない珍しい景色であった。

タクもハルカも物珍しそうに、周りをキョロキョロと見渡す。

ハルカは森とか林と呼ばれるものの中に入るのは初めてだった。


「すっごい、いい匂い~。

なんか空気が違うね。

匂いが付いてる!」


人工で酸素などの大気を生成する時代。

植物から供給される酸素が吸える人のほうが

珍しい時代である。

宇宙には岩石や水は大量にあれど、

植物自体は圧倒的に少ない。

彼女は両手を広げて、まるで全身の皮膚呼吸から

大気を吸いこむかのように自然を堪能した。

もちろん、この木々の群れも人工物ではあったが、

ハルカの心を揺さぶるに十分であったのである。

タクはそんなハルカを見ながらも、

周囲の警戒を怠らなかった。

ふと、疑問をティープにぶつける。


「父さん、なんでガイアントレイブは

クールン人を放置してたんだと思う?

こんな状況で、この星に放置って

どう考えてもおかしいと思うんだ。」


ティープも視線は周囲に走らせながら応える。


「その疑問は俺もあるが、

じゃあ、マークサスから一緒に脱出するか?と

聞かれれば、答えはノーだな。

得体のしれない存在と

同じ船に同乗する事は受け入れ難い。

だが、みすみすスノートールに渡す事も躊躇される。

だったら・・・・・・。」


「まさか!?」


タクはハッ!とした。

最悪の展開を予想したからだった。

そんなタクを安心させるために、

ティープは言葉を続ける。


「だが、ハルカが

クールン人の気配はする。って言ってるんだ。

生きてはいるのだろう。」


「生きていても・・・・・・。」


二人の脳裏に別の可能性が浮かび上がった。

この時代、捕虜法などは整備されており、

敵軍に捕まったとしても、法の加護がある。

宇宙海賊が憎まれるのは、宇宙海賊は軍とは違い、

法に縛られていないからだった。

では軍ではなく、海賊に捕まった場合はどうなるのか?

そして、人と隔離されているクールン人に対しての

法の適用はどうであるのか?

宇宙海賊と同じく、法が適用されない存在である。

法に守られているのであれば、

人間社会から隔離され、人体実験など行われるはずがない。

ゴクッ!とタクは生唾を飲み込んだ。

ある程度の覚悟は必要だと判断したからである。

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