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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~転承~

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3章 25話 4節

トエフォローエン基地に着陸したザメンテから

陸戦要員が次々と銃を構え、地上に降り立つ。

既に基地の見取り図は入手しており、

制圧の段取りも整えられていたため、

陸戦部隊はそれぞれが指示された場所に散っていった。

タクらは、上陸部隊の隊長グレゲーセン中佐の小隊と共に

トエフォローエン司令部へと直行した。

ベイノ少将も同行している。

司令部のある建物に入ると、中の守備兵たちは

侵入者らに背を向け、壁に両手を当てて

交戦の意思がない事を伝えていた。

特に一人一人をチェックする事なく、指令室へと投入する。

中に入ると、中年の男性と、側に3名ほどの兵士が敬礼で迎えた。


「トエフォローエン基地司令代行のスゥドウ中佐であります。

現在、トエフォローエン基地には守備兵75名が在籍し、

全て現地採用の地元民であります。

交戦の意思はなく、我々はスノートール帝国に降伏致します。

どうぞ、寛大な処置をお願い申し上げます。」


侵攻部隊の隊長であるグレゲーセン中佐が一歩前に出る。

陸戦隊は反重力装置の付いているスーツを着用しているため

一見しただけでは階級などはわからなかった。


「上陸部隊を率いるグレゲーセン中佐です。

賢明なご判断に感謝いたします。」


グレゲーセンも敬礼を返す。

問題は特に起きそうになかったため、

グレゲーセン不安点を潰すところから始める。


「守備兵75名というのは、我々が入手した情報よりも

かなり少ないですな。

他の兵たちはどこに?」


「はっ!

トエフォローエン基地の管轄は、マークサスではなく、

ガイアントレイブ王国直轄軍の管轄であり、

守備兵約800名は、直属軍所属でありました。

帝国の侵攻の情報を受け、直属軍はマークサスより撤退しております。

今は、現地採用の兵たちしか残っておりません。」


スゥドウ中佐の言葉に、グレゲーセンはベイノに視線を泳がせた。

ベイノの表情は変わらないのを見て、グレゲーセンは本題に入る。


「実はスゥドウ中佐。

このトエフォローエン基地に、ガイアントレイブの重要人物が保護、

もしくは幽閉されているという情報があり、調査しております。

何かご存じではないですかな?」


スゥドウは首を捻った。

演技のようには見えない。


「うーむ。聞いたことがないですね。

この基地を運営していましたのは本国ですので

我々には知らされていない事かも知れません。」


「では、あの場所について何かご存じで?」


グレゲーセンは司令官室の壁に大きく飾られた

トエフォローエン基地の周辺地図の一角を指さした。

ティープが言っていた、基地から一本道だけで繋がる

離れ移住区である。

スゥドウは「あぁ。」と呟くと小さく頷く。


「あそこは立ち入り禁止区域でして、

我々も何があるのかわかっていません。

噂では軍事兵器の開発を行っていると聞いた事がありますが、

特に資材を運び込むような事もなく、

週に一度、食料品などを入口まで運び込んではいたのですが、

兵器開発をやっている様子などは・・・・・・。」


「守備兵が引きあげた後に確認は?」


「降伏すると決まっておりましたから、

余計な事はしないほうがいいと、放置しておりました。」


「承知しました。

我々で確認しても?」


「はい。それはもちろん。」


スゥドウは本当に何も知らないようである。

グレゲーセンはベイノの近くに行き、なにやら小声で話すと、

ベイノがティープに話を振った。


「ティープ大佐。

大佐の部隊と、我が隊より30人ほどで

向かいましょう。

大佐がご希望なら、我が隊は入口で待機でも構いません。

あの場所は陸の孤島と言ってもいい場所。

唯一の入り口は押さえておいたほうがいいでしょうから。」


ティープはベイノの提案に即答する。


「助かります。」


そうは答えたが一点、悩むところがあった。

8秒ほど思考を巡らせたあと、ハルカを見る。


「ハルカ。

FGはどうしたらいいと思う?」


離れ小島のような場所にFGで乗り入れるべきか悩んでいたのだ。

ハルカに聞いたのは、クールン人としてではなく、

軍人ではない一般市民としての意見を聞きたくなったからである。

全長18mほどの巨大な人型ロボットであるFGが

近付いてくるのは、普通に考えて威圧感を伴う事は間違いない。

ましてや相手は未知のクールン人である。

マークサスに居るクールン人は魔法の力が弱いと聞いてはいたが、

ロアーソンのようにクールン人の感情を刺激して、

何かが起こるという危険性は皆無ではなかった。

ハルカは首を傾げる。


「FGねー。

あれ、怖いよね。

乗っていかないほうがいいとは思うかなぁ。」


ハルカの回答にティープは頷いた。


「よし!

マリー軍曹はFGで待機していてくれ。

ルシュヴァンとスノウバロンのリモート回線は繋いた状態で待機。

何かあったら呼ぶ。

タクは一緒に中に向かう。

ハルカを頼むぞ。」


「うん!」


ベイノ部隊の兵たちとは違い、

ブレイズから乗り込んできた陸戦隊員30人に緊張感が走る。

彼らの中には、ロアーソン攻略戦を経験した者も多数いた。

一歩間違えば、宇宙空間に投げ出されていた現場である。

信じられない事が、実際にリアルで起こる事を

その身で知っている者たちである。

油断と言う言葉は彼らの心に、微塵たりともなかった。



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