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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~邂逅~

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1章 3話 2節

一瞬の出来事に、マリーとモルレフは言葉を失う。

が、先に動いたのはマリーだった。


「タッ、タクッ!!」


彼女は咄嗟に操縦桿とアクセルを操作し、

動力の止まったポロンへと向かう。

ほぼ同時のタイミングで、2人に通信が届いた。


「こちらはティープ大佐だ。

交戦していると聞いて飛んできた。

状況を報告して欲しい。

ロニャードは、周囲の空域の策敵を。

敵が潜んでいるかもしれない。」


「承知しました。」


この通信を受けて、モルレフも何が起きたのか?を

把握するが、報告に一瞬の躊躇が入った。

しかし、彼は自分に課せられた責務を放棄する事は出来ない。


「ブレイズ艦所属のFG部隊モルレフ曹長です。

只今、代理で部隊の責任者をやらせてもらっています。

部隊を代表して、救援感謝申し上げます。

状況ですが、敵は、

この空域で待ち伏せをしており・・・・・・。」


ここで言葉が止まる。

既にここまでの報告で、ティープは眉を顰めた。

モルレフ曹長が部隊の責任者の代理?

この言葉を聞いて、真っ先に浮かぶのは、

代理ではない、正式な責任者の所在である。

そして、正式な責任者であろう人物は、

ティープがよく知っている人物であった。

カレンディーナ少将は、ティープの婚約者なのである。

もちろんモルレフもその事を知っている。

だから、報告する事を躊躇した。

だが、隠しておける事でもない。

モルレフは覚悟を決めた。


「敵の待ち伏せによって、我が軍のFGが

5機、やられました。

現在は敵の存在はなく、生存者の捜索フェーズに移るところです。」


スノートールのエースパイロット、生きる伝説である

ティープを知らない者は、スノートール軍には居ない。

ましてや、その婚約者であるカレンディーナと

部隊を共にしていたモルレフが知らないはずはなかった。

もちろん、婚約者という事もである。

スノートール全軍のFG部隊の総責任者であり、

先の内戦を勝利に導いた立役者の一人であるカレンディーナと

エースパイロットのティープの婚約は、

国をあげてニュースになった。

知らない者が居ないレベルの話である。

だが、モフレフの報告にカレンディーナの情報はなかった。

彼はひよったのである。

彼からしてみれば、まだ戦死を確認したわけではない。

報告でも、生存者の捜索フェーズと伝えた。

戦死したと言い切れなかったのである。

もちろん、それはモルレフの言い訳に過ぎなかった。

少なくとも、カレンディーナ機が撃墜された事は伝えるべきであったが、

彼女の事については触れなかったのである。

ティープは言葉を飲み込む。

事情を察したのだ。

彼もまた戦場を知り尽くしている歴戦のパイロットだった。


「詳しい状況が知りたい。

交戦記録を送ってくれ。」


そう言うだけが精一杯だった。

モルレフはマリーに通信を繋ぐ。


「マリー伍長。

大佐に交戦記録のデータを。」


「はいっ!承知しました。」


マリーからデータがティープの元に送られてくる。

ティープはデータファイルを開いた。

モニターを操作する指が震えているのが自分でもわかる。

データはティープの僚機でもあるロニャード中尉にも届く。

ロニャードは周辺空域の策敵を実施しながら、

交戦データを確認する。

自分も見る必要があると感じての行動だった。

そしてカレンディーナのルックが大破するのを確認した。

彼もカレンディーナの元配下であり、

彼女に恩がある人物である。


「大佐。カレン少将が上手く脱出できていたとしたら、

D450ポイント付近に流されているはずです。

捜索にあたる人員は少ない。

私たちも手伝いましょう。」


彼はティープに進言した。

D450ポイントというのは、ルックの爆発の映像を

スーパーコンピュータ・バッカーが産出したポイントである。

もちろん、バッカーが示した数値はそれだけではなく、

「生存率:0.002%」という数字が無情にも画面に

表示されていたが、 ロニャードはその数字は無視した。

ティープの返事はない。

ロニャードはカレンディーナの流されたと思われるポイントの

再計算を実施する。

捜索に向かうにしても、情報は正確なほうがいい。

このタイミングで、ようやくマリーとモルレフのレーダーに

ティープとロニャードのFGが表示される。

それはつまり、ティープのビームライフルでの射撃が

レーダー外からの超遠距離射撃だったという事を意味していた。

正確には、遠距離レーダーであればバッカーの手助けもあって

射撃自体は不可能ではない。

だが、それを撃てる人間は数が少ないであろう。

ましてや、射撃地点には友軍であるタクのポロンが居た。

遠距離レーダーにはポロンも写っていたはずである。

空気抵抗も、風の影響も受けない宇宙空間とはいえ、

それを撃つ覚悟があるというのは、また別の話である。

会話が止まったのを受け、モルレフが報告する。


「私もタク二等兵の元へと向かいます。

まだ敵が潜んでいるかもしれません。

ご注意を。」


ティープが交戦記録を読み終わったタイミングだった。

交戦記録には、ガイアントレイブの謎の少女との会話は記録されていない。

通信機越しではなかったからだ。

従って、明らかにおかしい挙動をみせたカレンディーナ機の動きに

疑問は残ったが、ティープはタクの命を救えた事は理解した。


「ああ、よろしく頼む。

俺は、少将を捜索する。」


ティープは操縦桿を、カレンディーナが流されたと思われる

ポイントに向け倒した。

ロニャードも黙って、ティープに続く。

かける言葉はなかった。

少なくとも、通信機越しには・・・・・・。



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