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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~決断~

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2章 18話 4節

別の場所ではあったが、1vs6という劣勢を覆し、

5機ものFGを撃破したエースパイロットの登場に

戦場は色めき立った。

このタイミングでルカゼの魔法は発動されておらず、

はっきりとレーダーにトワの参戦が映し出されたのも、

まるで主役の登場かのような雰囲気に包まれる。

ソーイにとっても頼もしすぎる味方である。


「視力に頼りすぎたって、頼るでしょ?

これだからトワさんは・・・・・・。」


後世でのトワの指導者としての評価はすこぶる高い。

剣術道場の師範だった際には、ソーイを筆頭として

門下生たちが軒並み活躍したし、

FGパイロットとしても、部下たちの技量は高かった。

一口にリーダーといっても、様々な形がある。

トワは部下たちを引っ張るタイプのリーダーであったが、

育成面で優れ、指導者として組織を率いるリーダー像もある。

トワはどちらかと言うと、部下を引っ張るタイプのリーダーと

捉えられがちではあるが、指導者としても実績は高かった。

だが、それは実績を見たときの話しである。

同時代に生き、トワの指導を受けた者たちは口を揃えて

トワの指導者としての素質をこう評価する。


「指導はしてくれるんですけど、

ぎゅーんとやるとか、バーンと捉えるとか

擬音のイメージで言ってくるから、よくわからないんですよ。

はい!はい!って答えてましたけど、

実際は全然、副総長の言う事の意味がわかってなかったですね。

敵の攻撃を避けるのも、【事前に分かるだろ?】って感じで。

空気の流れとか、殺気とか、普通の人間にはわかりませんって。」


また、同じく指導者として優れていると評価のある

クワッケン大佐もトワと面識があるが、


「トワ様は規格外と言うんですかね。

こうしたら、こうするだろうって定石みたいなものが

通じない相手と言いますか、

もちろん、物事はケースバイケースで

状況によってその時の解は変わるものですが、

瞬時に、最適解にたどり着くんですよ。

私だったら、熟考に熟考を重ね、

ようやく行き着く答えが、トワ様は瞬時に出てくる。」


素質のある者が、トワの元に集っただけで、

指導力ではなく、トワのカリスマ性を

評価する評論家もいるが、

門下生たちは皆、トワの指導は素晴らしかったと評価する。

理屈では説明できない男。

それが、トワという男の最終評価である。

この時も、彼の出現で場の空気が変わった。

ルカゼの魔法の影響で、グダグダになっていた戦場に

ピリッ!と緊張した空気が走る。

ガルの決断は早かった。


「くっ!

ルカゼさま、魔法を展開してください。

各機、後退する。

戦闘を行う必要はない!」


ガルの指示に、損傷したキトをなんとか立て直しながら

ユライフが意見する。


「しかし、今後退しては

敵に母船の位置が・・・・・・。」


「魔法でタイムラグを発生させれば、

離脱するタイミングぐらい稼げるはずだ。

敵と距離を詰めるな!

距離が短くなれば、タイムラグはなくなる。

・・・・・・。

ルカゼさま。

もっと遅くできますか?

可能な限り遅く!」


「や、やってみる。」


再び、宇宙空間の視界がぼやける。

またしても、FGが複数の空間に現れては消え、現れては消えた。

だが先ほどと違う部分もある。

遠くに輝く星の光が消えたのだ。

遠くに位置する星は全く動いていないように見える。

10秒後の位置も1分後の位置もほぼ同じである。

だから、10秒後の映像も、1分後の映像も同じ位置で

同じ輝くを放っていた。

時折、光が途切れ、点滅しているかのように見えるだけである。

だが、星の光が完全に消えた。

これは、FGに星の光が届いていない事を意味する。

それにまず気付いたのトワだった。


「星の光が消えた?

点滅ではなく消えたという事は、

この空間の光はほとんど、進んでいないという事か!」


トワはソーイと連絡を取りたがったが、

魔法の発動によって、通信機も使えない。

まぁ、ソーイなら大丈夫だろうと高を括った。


「こんな子供だましで。

姿を消しただけで、実際に消えたわけではないっ!

ましてや残像というヒントがあれば!」


トワのコントレヴァのスピードが更に上がる。

怯みなく直進してくるトワをガルたちも認識はしていた。

認識していたが、その行動は想定外である。


「こいつも、この状況で更に突っ込んでくる!?

こんなに大胆な動きをするのは、やはり真和組が絡んでいるのか!?」


真和組は、先のスノートール内戦で一気に知名度を上げた

ガイアントレイブのFG部隊である。

ただ内戦では、ガイアントレイブのFGは量産化されておらず、

FG1機1機がオーダーメイドのワンオフ機の集まりであった。

しかし、今回の機体は2機共に同型FGであったので、

遂にガイアントレイブでも、FGの量産化が進みだしていた事を

ガルは把握したわけだが、真和組という組織が

FGの量産化に踏み切るとは少し想定外だった。

荒くれ者が集う、無秩序なガイアントレイブの傭兵部隊だという

認識でいたからであった。

だが、ガルの認識は間違えている。

真和組はむしろ鉄の掟で隊員が縛られた秩序を第一とした組織である。

むしろ、同型のFGを揃え、真和組としての体裁を整えるのは

自然な行為である。

そして、真和組パイロットの技量は一人一人が高い。

内戦でガル自身も、真和組の部隊と対峙したことがある。

今回の相手が真和組であるならば、ガルが苦戦するのも納得がいった。


「そう言えば、暗殺を得意とする集団でもあったか。

ルカゼさまの暗殺の任を引き受けるのも道理という事だな。」


言葉とは裏腹に、ガルは更に気を引き締める必要があった。

後退する友軍機の殿につくと、

トワとソーイのFGを待ち受ける位置に布陣する。

ガルらワルクワの兵士たちも、敵どころか、

味方がどこにいるのか正確な位置はわからない。

だが、ガルは的確に味方が後退するタイミングと経路を予測し、

味方の後退をフォローしながら、

トワとソーイを待ち構えたのである。

ガルの部下たちがそれに気付いていれば、

ガルを止めたであろうが、彼らはガルの動きに気付くことが出来なかった。

ガルの意図を悟ったのは、ガルと共にエクセルハーツのコックピットに同乗する

ルカゼだけである。


「魔法で援護できるならやるけど、

同時に魔法を展開するのは難しいんだ。

期待はしないでくれよ。」


「ルカゼさまの魔法の力のお陰で、

敵のビームライフルの脅威からは、免れています。

逆に、こちらは好きなタイミングで

ビームライフルを撃つことが出来るのです。

十分すぎる援護ですよ。」


FGの数では、ワルクワ1機vsガイアントレイブ2機ではあったが、

ガル・ルカゼvsトワ・ソーイの2対2の戦いが始まろうとしていた。

ここにいる4人は、誰もこの戦いの結末を予想する事はできない。

魔法を利用したFG戦闘など、人類の誰も経験したことがないからである、

この場を用意した形となるガルでさえも、予測困難だったのであった。


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