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春風戦争 第2部  作者: ゆうはん
~決断~

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2章 18話 1節 融合覚醒

ガルは判断に迷っていたが、

座席の後ろでルカゼは心配そうに彼を見つめていた。

そして口を開く。


「ガル。

私が魔法を使う。

敵を撃墜する事はできないかもだけど、

逃げ切るぐらいには力になれると思う。」


思わずガルは振り返ってルカゼを見る。

今までの感覚と違うからだ。

昨日までのルカゼであれば、

撃墜する事は出来ないとは決して言わないであろう。

むしろ、私に任せろ!と

根拠のない自信で言い放っていたはずの場面である。

護送艦フィーブルの中で何があったと言うのか?

確かにフィーブルは大破し、

彼女は宇宙空間に投げ出されていた事を考えれば、

彼女の想定を超えた事件が起きたことは予想できた。

しかし、ここまで弱気のルカゼを見るのは

ガルは初めてであった。

詳しく話を聞きたい気持ちはあったが、今は後回しである。

ガルは平常心で応える。


「できますか?

ここは宇宙空間です。」


ガルは魔法についてルカゼにある程度の感覚みたいなものを聞いていた。

魔法は、イメージである。

例えば、モミジは電気を扱う事が出来るが、

ルカゼは電気を扱う事はできない。

それはイメージ出来ないからであった。

逆に電気を扱おうとして出来たのが光のエネルギー弾である。

科学的には電気を起こすほうが簡単である。

ルカゼの光の魔法は、光子を集める事でエネルギーにして

衝撃波にする魔法である。

科学的には、光子を集めれば熱は発生するが、

衝撃波には出来ないはずである。

しかしルカゼは電気のイメージで光子弾を撃つことが出来た。

理由はわからない。

イメージ出来たのである。

しかしルカゼの魔法は、真空下では能力がかなり制限された。

理屈はある。

大気中では光は大気に反射している。

しかし宇宙空間では光は拡散され、飛び回っているだけであり、

光子を集める事が難しい。

ロアーソン崩壊の際は、火事場のくそ力のような力で

物質を動かす事が出来たが、原理はわからず、イメージも沸かず、

試しに訓練でやってみたが、再現は出来なかったのである。

ルカゼは宇宙空間の真空中では、イメージ能力が低下する傾向にあったのである。

ガルはそれを知っている。

知っているからこそ、この場面でルカゼの魔法は戦力として除外していた。

だが、もし使えるのであれば、貴重な能力である。

ルカゼはガルの言葉を飲み込む。


「わからない。

でもやらなきゃいけないんだろう?

こんなところで、立ち止まるわけにはいかないから。」


ルカゼの決意を聞き、

ガルは通信機のスイッチを押した。


「各員。

ルカゼさまが力を貸してくれる。

敵を撃墜する必要はない。

ビームライフルの残弾は少なく、我々のほうが数が多い。

長期戦に持ち込めば、敵は後退する。

無理をする必要はないのだ。

回避を優先に敵を翻弄するぞ!」


「あ、ありがとうございます!ルカゼさま!」


通信機から発せられた声にルカゼの顔に笑みが見えた。


「その声は、ユライフ少尉だな。

私を救出にきてくれた貴官らを殺させはしない。

期待してくれていいよ。」


「ありがとうございます!!!」


ユライフの声が上ずった。

ガルの下に預けられた彼らはルカゼの魔法の力を知り、

彼女に心酔している者も少なくない。

ユライフもその一人だった。


「聞いたな!

ルカゼさまのご加護がある。

ルカゼさまを無事、帰還させるのが我々の使命だ。」


「おー!」


ボージュ隊の壊滅で下がっていた

ガル部隊の士気が上がる。

しかし、ガル自身は今一つ半信半疑だった。

彼は現実主義者でもあったので、

ルカゼの魔法の効果を疑っている。


「ルカゼさま。

数は少ないですが、ミサイルがあります。

誘導するのであれば、撃ちますが?」


「無重力空間で物体を動かすのは難しいんだよ。

私では自分を動かすだけで精一杯なんだ。

あれは、チサ姉の固有魔法でね。

それが出来るんなら、私ならミサイルを誘導するんじゃなくって

敵のFGの動きを止めるよ。

そっちのほうが手っ取り早い。」


「では?

どうするおつもりで?」


「私の得意分野は光だから・・・・・・。

やってみる!」


ルカゼの眉がピクリと動いた。

ガルには魔法の感覚はわからなかったが、

ルカゼが魔法を使おうとしているのは把握できた。

しかし、周りに何か動きがあるわけではない。

ルカゼが何をしようとしているのか?全く予想がつかなかった。

そうしている内に、ソーイのコントレヴァは

目視でも確認できる位置に来た。

目視確認と言っても、FG自体の姿が見えるわけではなく、

FGが推進力として使っているエンジンから出る光を

確認できるだけであったが、それだけでも十分である。

ガルは各員に指示を出す。


「来るぞ。

敵はボージュ隊と戦っていた味方を待たずに突っ込んでくる。

腕に自信があるのだろうな。

止まらずに動き続けよ。

止まったらビームライフルの餌食になるぞ!」


ガルの指示を受け、キト4機がそれぞれの方角に散っていく。

その時、ガルも含め全ての者が違和感を感じた。


「なんだ?映像が・・・・・・ぶれる!?」


感じた違和感とは、FGキトが動き出した際に

FGの残像が、動き出す元の位置に残るような感覚だった。

まるでカメラのシャッターの露出を調整し、

シャッタースピードを遅くした際に、

動きのある物体がブレて映し出されるかのような感覚である。


「残像!?」


ガルが感じた残像という言葉が、まさにそのまま当てはまるような動きだった。

FGの軌道に遅れてまるで分身したかのように、複数のキトの

残像が宇宙空間に残る。

ガルはルカゼを見た。


「ルカゼさま?

これはルカゼさまが?」


「光の進むスピードを変えてみた。

目くらまし程度にはなるだろう?」


ルカゼは軽く言ったが、そういう次元の話ではない。

光の進むスピードがずれるという事は、

目で追える光景だけではなく、光を検知しているFGのレーダーも

狂うという事である。

レーダーを無力化してしまえば、スーパーコンピュータ「バッカー」の

優秀な計算処理能力も使えなくなる。

しかも機械に頼る事ができないにも関わらず、人間の視界自体も

狂った映像を見せられるのだ。

目くらまし程度の効果ではない。

そんな生易しいものではなかった。

戦闘行為自体を継続する事さえも難しい状況になったと言えたのである。




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