第二回
健太郎は常に心の襞に隠れているものを探し続けていた。べったりと塗られているその汚点と言うべきものの正体の色を確かめたいと白球を追う度に瞬時によぎったこともあったし健さんの眉の一ミリ動いた刹那に光ったこともあった。そしてそれは毎回持って生まれた資質からか生活の基盤を当たり前のように支えてきた母親との暮らしの中で撃退してしまうものでもあり続けた。
しかし、このような学生自治体の共闘委員長となった今の状況にまで成長してくると、単に反体制そのものに執着することが長年粘り付いてきたその不可解な情念の正体を粉砕する、あるいは仇打つことにも通じるような活力が二十歳を少し超えた身体の隅々に伝わっっているのだった。
今、島の口から放たれた百獣の王と言う言葉は反射的に漲る戦闘心に触れた瞬間でもあった。何に対しても特に権力を誇るものに対しての反発心を煽るのに十分の投げかけだったのである。
数週間後市場でマタタビ仕入れた二人はこれをスープにし、スプレー容器に詰めて近くの動物園へ出かけた。ライオンの檻の前に立つと早速、人目を見計らって檻のなかにマタタビのスープを噴き付けたのである。
「おい、見ろよ」
しばらく経ってから島は驚いたようにして叫んでいた。寝転んでいたライオンが最初は何事もないようにして休んでいたが急にくにゃくにゃと身体をゆすぶり出しまるで呆けるかのごときじゃれ始めたのである。スプレー数滴が放つ魔法の威力と言えた。
健太郎も口元を緩めながらその光景を眺めつづけた。




