慣てきた?
供養してたら続きを書いていたので初投稿です
4ヶ月後....
ナオトの待遇は人道的な物であった、部屋からはなかなか出られないが、そこそこ広い部屋に街を辺を一望できる日入りの悪い窓がひとつ付いた部屋に入れられていた。
看守...というか同居人は自分を攫った2人の少女だ。
「ただいま〜ナオト」
パタンと戸の開く音がして透き通った陽気な口調の声が部屋に響く。
「リナさん、おかえりなさい」
ナオトが出迎えた白い軍服姿の少女、銀色の髪を背中まで伸ばし、目はアメジストの様に輝いている。
その整った顔は美人でナオトが見てきた女性で1番の美人だと言える。
「あ゛〜....疲れた....」
その美貌に似合わない大胆な座り方で古びたソファーに腰掛ける
「あれ?セナさんは...?.」
「ん?セナなら技研に寄ってから帰ってくるってさ、なんか新しい装備の試作品を取りに行くんだって」
カタンと音がして、テーブルの上を見るとグラスになみなみ注がれた水があった。
「ありがと、キミ結構気が利くよね」
「まぁ、今の俺に出来ることって言ったら。この部屋の掃除とかちょっとした事しかないし....」
彼女はなんか申し訳なさそうな顔をしながら言う
「未だに着替えは私達に手伝って貰ってるけどね」
「それは....言わないで...ください....」
意地悪そうな目つきで赤面する彼女を見る
「それにしても....やっと暇になるわ」
「それってやっぱ俺の事ですか?」
「そうだね〜」
彼女はそう言いながら背を伸ばすと、背骨がポキポキと小気味よい音を鳴らす。
「ただでさえ勇者一味の誘拐ってのがリスキーだし、君が聖女って言う重要なポジションの人間だって知らなかったよ...まぁ質のいい人質を取れたのはいい事だけど」
「人質?」
「そう、君は人質。君がいた国がこの国に戦争をしかけてきたらこいつがどうなるかわかってるよね?っていう手紙を君を攫ったときに出した。んなもん知らねぇよって言われたらどうしようも無いけどね。まぁ、わたしの活動自体が非公式なものだし、拉致してきたから国籍なんてないし」
「へぇ....」
ナオトは興味無さそうな返事を返した。
「君って肝が据わってるって言うかなんだろう.....慣れてる?こういう状況?」
「いや...まぁ...現実味が無いからなんというかどうも言えない感じ」
「まぁそうよねぇ...話を聞く限り、君達の世界からすれば夢みたいな物だから現実味もなくて当然か」
ナオトは持って居たコップをテーブルの上に戻し、窓際に行く。
窓を開ければヒンヤリとした少し強い風が吹き込んでくる。景色は最悪で山しか見えず大した景色ではなかった。
「ここ間取りほんとクソだな。太陽の光が全く入ってこない」
悪態を着いてパタンッと音を立てて窓を閉める。
「そりゃまぁ元は倉庫だったみたいだし光の入り方なんて考えられてなくて当然よ」
パキパキと腰を伸ばしている彼女は立ち上がる
「さて、ナオトくんさっきのお話を覆す嬉しいお知らせがあります」
そう言うと彼女はいく枚かの折りたたまれた紙を懐から取り出し、テーブルの上に置いた。
「それは....」
「前書いてもらった亡命関連の書類と、君がこの国の国民である事を認めるって感じの書類の写しよ。これがあれば大っぴらに歩ける様になるけど....私達が同伴が条件。監視っていう建前だねじゃなきゃ貴族連中がうっさくてさ、化け物を街に放つ気かー!って」
「化け...物..?」
彼女は驚いた様な様子を見せる。
「そう、化け物。異世界からきた人間は化け物、少なからずそういう考えの人もいる。まぁそういう考えも妥当だと思うよ、伝え聞く限りじゃ私達じゃ到底叶わないらしいし、でも現に私に捕まっちゃったけどね〜」
彼女はハハハッと笑うとソファーを立つとそのまま部屋を出ていこうとする彼女にナオトは声をかけた。
「少なくともこの城の中には君を化け物だという人間はこの城の中にはいないだろうね。ほら、来なセナを迎えに行く....」
次の瞬間バンッとドアが開け放たれそこには土埃だらけのセナが不機嫌そうな顔をして部屋に戻ってきた。
「...ただいま戻りました...姉様....」
「あはは....こっぴどくやられたねぇ....今回は爆発?獣の暴走?」
「なんでもありません。少し浴場へ行ってきます」
彼女は寝室の棚にある今着ている制服と同じものを手に持ちそのまま部屋から去ってしまった。
「んぁ~....迎えに行く必要なくなっちゃったね...昼間っから飲むのもなぁ...」
「何か仕事ないんですか?」
ナオトがそう言うと彼女はソファーの下にある酒瓶を取り出そうとしていたがそれを戻しナオトに向き直ると、彼女は口を開いた。
「仕事...ね...少なくとも私にはここで出来る仕事は滅多に回ってこないよ。そういうのは、全部セナがやってるよ。あの子は私より優秀だから」
彼女はソファーに体重を掛けたのかギィィ...と軋む音がする
「小さい頃からそういう頭を使うことは全部セナの担当だったね、私は勉強とかペンを持てる人間じゃないからさ。それに私の仕事はここの外でやることしかないからね~」
そういうとリナは軍服から私服に近い恰好に着替えて、ほかの服を俺に投げ渡した。
「服は適当にぃ....って」
リナはナオトの身体を見ると...
「私の服を着たらブカブカ...だよね...んまぁ...小汚くはあるけど....貧相ではないから大丈夫かな。じゃあ行こうか」
「どこへいくんですか?」
「まぁまぁついてきな 」
彼女は手招きをしてナオトを誘う。
「あ...はい」
そういうと恐る恐る部屋を出て、彼女について行く。
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数か月ぶりの屋外....といってもまだ城壁の内側だが、日はまだ高く日差しが強く暑い。でも元の世界に比べたらカラッとしてて過ごしやすそうだ。
「そういえばさ、向こうの仲間に未練とかないの?」
「未練...ですか?...無くはないですけど、いかんせん今の俺はこうなんで、知ってる人が周りにいるより最初っから女の子の姿を見てるこっちにいたほうがいやすいというかなんというか....」
「そう....かぁ....未練より居心地の良さが勝ったか...」
そんなことを言いながら城門まで歩く、脇の小さな戸から城門を抜ける。そして見た光景は想像しているものを大きく裏切る光景が広がっていた。
「どう?あっちとはだいぶ違うでしょ?先々代国王が第三城壁内に各省を集中させて情報伝達を素早くするために自動車とか電車とかをすごく頑張って整備したみたいなんだよね」
「先代ってもしかして...?」
「そうだよ、もともと君たちの世界にいた人だよ」
到底異世界とは思えないこの光景は俺の異世界の常識をぶち壊した 学校やテレビでしか見たことないような古い車や路面電車が走り。しかし想像どうりの景色も混ざり、頭がどうにかなりそうだった。
街灯が並び自動車でごった返している、この光景は教科書で見たビクトリア朝を連想させる様な風景だ。しかし、ところどころに異世界を感じるようなものや人々が歩いている。
「とりあえず付いてきて、近いからすぐ着くよ.....あーはぐれないように手でも繋ごうか」
「えっ....ちょっ・・・・」
有無を言わさず彼女は俺の手を取り引っ張り始める。ぎゅっと握られるがそれは女性特有の柔らかい手ではなく俺が知る限りでは剣道部の大将の手、それ以上に硬くなった掌の皮の感触で彼女がどれだけ強いかまではわからないが、かなりの時間時間剣を握っていたがわかる。
息苦しいほどの人混みの中だが彼女に手を引かれて歩くとまるで人がいないかのようにするすると擦り抜けていく。するすると自分だけだけではなく俺の体を手だけで操り歩いている人に当たらないように体を引っ張られる。
しばらく引っ張られていると、潮の香りがしてくる。
ペースを落としたが手をがっしりと握られたままだ、そしてついたのは石造り3階建ての港湾事務所とでも言うだろうか?
「港...?」
「そう、港。私たちの隠れ蓑であり公に使える綺麗なお金を稼ぐ場所だよ。じゃあ行こうか」
そのまま手を引っ張られ戸をくぐらされる、中に入れば従業員だろうか?忙しなく仕事をして居るが彼女が目に入れば軽く会釈する、もし彼女が普通の従業員であれば忙しい彼らがいちいちこんなことをするはずはない、彼女はここでは特別な存在なのだろう。
彼女はそのまま奥に進んでいく、まるで自分の家のようにどんどん奥に奥に進んでいく。
「こんなにどんどん奥に進んで大丈夫なんですか?」
そのまま最奥の部屋に入る、その部屋はオフィスというより社長室のような様相で自分が入るのは場違いだと思ってしまう。
すると彼女は部屋の一番奥の椅子に腰を掛け、彼女は口を開いた。
「ようこそ、フラーナ貿易商会へ」