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第二十番歌:新(あらた)しき日へ(四ー一)


     四

「胸に手を当テ、響を感じロ★ とよこサモン!! 人のこゝろよ清き泉たれ、ホウジョウノ★ウミ!」

 墨を溶かしたように黒い波が、連結した文字どもを押し流す。

(ほうむ)っテモ、葬っテモ、わイテくるゼ」

 眼帯の戦士・とよこピンクが、水を操る黒曜石のフィギアルノ(術者独特の用語で、フィギュアのこと)を使役しながら嘆く。「大いなる障り」が打ち出す文字は、いっこうに減らなかった。

「ぱずるげーむナラ、四ツつナガるト消エルのにナ……あうち!」

 自慢のマントに「痛」のはねる部分が引っかかり、裂けてしまった。元がわざと破いた物なので、たいした損害ではなさそうだが、

「みーノぱーふぇくと退廃的でざいんニ傷ガ!!」

 芸術を究める彼女にとってはかなりの衝撃だった。

「そーいんぐせっと! 左肩ニ……ナイ!? しまッタ、今回ハ特務用装備にシテ、通常装備ト入レ替エシたンダったゼー!!」

「どきィ、ぼんくらァ!」

 硬い拳にどつかれ、とよこピンクは放物線をきれいに描いて吹っ飛んだ。

「ギャピイ★」

「受け身取れるぐらいはフリーズ解けたかァ、()(ほう)ォ?」

 腰を上げかけたとよこピンクを、ゴーグルをかけた大女(おおおんな)・せいかイエローが見下していた。 

「戦闘中にボサっと突っ立っていられたら迷惑やねん。ファッション優先している場合やないでェ」

 叱るためだけに拳を振るったわけではなかった。せいかイエローが踏んづけていたのは、「looking away」だった。

「ムカつくケド、そこソコ強イ巨乳女だナ……」

「なんか言うたかァ?」

「ナイですナイですミーはイエ氏ニ感謝シテます愛シテますコノ通リ★」

 土下座しつつ後ずさり、とよこピンクは戦いに復帰していった。

「中堅、分析結果はどないやァ?」

 舞台の奥でうずくまっていたねおんブルーが、水飲み鳥のように首をもたげた。

「…………ぺっぺ」

 ネックウォーマーの下から、濡れた黒い棒が落ちた。

「やり方を考えなおさへんかァ。あんまり見た目がよろしィないでェ」

 呪いと科学の子―アンドロイドである「グレートヒロインズ!」に搭載された分析機能は、対象を視認するだけで済む。しかし、個性を濃くして目覚めた五人は、あえて無駄な動作を加えるのだった。せいかイエローの場合は「ゴーグルをかける」、ねおんブルーの場合は「口に含む」である。

「……炭素、大豆油」

「原料はえェから、障りに関するデータ教えてくれませんかねェ」

 ねおんブルーはうつむき、ネックウォーマーをもごもごさせた。

「……そう、本体は、空満大学の、正門に、潜む」

「正門? A・B号棟裏にある石柱の、さびれた所かァ?」

「……そう」

 やっと居所を探り当てた! せいかイエローはすかさず望遠モードを起動する。

「正門に禍々しいエネルギーが溜まっているわァ。博士と大将に報告や」

 連絡は五秒あれば充分だった。だが、まだ呼び出しをしていなかった。

「なんでや……」  

 そこに、小さな人影が現れたのだ。白いスーツの女性が。

安達(あだ)太良(たら)まゆみ准教授、なんでいらっしゃるんや」



 夕陽(ゆうひ)さん、深くお詫び申し上げたいことが、ふたつございます。

「障りの居場所は、国原(くにはら)キャンパス正門なのですよ!」

 僕ともあろうものが、礼を失してしまいました。

(とき)(すすみ)先生にお伝えしますね!」

 あなたのご期待にお応えできない僕を、裁かれても異議はございません。相当の失態を犯したのですから。

「ですけどけど、懲りてくださいませんよね! いっぱい兵を失っておいて、それでも送り込んでいるのですよ!? 犠牲を払った罪の意識はないのですか!?」

 僕は、あなたに関する記憶を保持できませんでした。片時も離してはならないという決まりを守れなかったのです。

「すみません、聞いていらっしゃいますか!?」

 そして、

「援護をお願いしたいのですけど、よろしいですか!?」

 あなたに…………

「真淵先生!!」

「張り上げなくとも、届いておりますよ」

 耳を痛める物事が多いものですねえ。この程度の相手に手こずっていましたら、先が思いやられますよ。

「超音波、初めて拝見しました! 私、広範囲の攻めは苦手なのですよ! 力押しでしたらトップをとれそうなのですけどね! そこの方々、不法侵入はいけません! 寄物陳呪・輪廻腕章、三悪道之一・地獄道!!」

 僕が行使しております他述(たじゅつ)(ちん)(じゅ)は、夕陽さんが継ぐ予定でした。僕は、選ばれてはならなかったのです。

 あなたに、知っていただきたいのです。他述陳呪の先代行使者のストーリーを。災いが訪れるまでに、申し上げられなかったことが悔やまれます。

 夕陽さん、明日も、登校されますよねえ?



「代休を、くれたもれーやッ!」

 薄っぺらい台詞が、(みやび)やかな台風に散る。(とう)(せん)(きょう)(まきの)二十八・野分(のわき)は、土御門の十八番(おはこ)であった。

(とき)さんに(ねぎら)いの(うたげ)を開いてもらわんと、割に合わへんで」

 竹葉(ちくよう)が待っていなければ、ただ働きに等しい。三十年以上も勤めてこられたのは、愉しみがあったからこそ。

「どうしたんさ、早くも燃料切れかい?」

 相棒は千本ノックに興じるかのように、櫂の(バッ)()を軽々振っていた。

「壱の壇は、爪のかけらだけとなっても痕はつけろ、だろう?」

 終わりのない仕事は、ものともしなかった。来たら打つなり払うなりすれば済むのだから。

 ただ、和舟(おふね)の頭にある事がくっついていた。弟子を忠実に再現した存在についてであった。


 弟子とは大学院でも一緒だった。吉野(よしの)女子(じょし)大学大学院とは、()しくも二人に縁があった。大学は、弟子が浪人して挑んでも合格かなわなかった第一志望校であり、大学院は、和舟の夫が生前勤めていたのだった。

「あ、ペンダントですか? 大学の入学祝いに父からもらいましたの」

 修士論文作成の面談指導を終えて、世間話をしていた。

「『安達(あだ)太良(たら)真弓(まゆみ)』だけに、弓矢ですのよ。意外と冗談好きなものですから……」

 困った親だと言いながら、空満大学にいた頃もずっと身につけていた。銀に輝く弓矢のアクセサリーは、彼女の底にある強さを引き出していた。

「しなやかな娘さんになったね、まゆみちゃん」

 呪いを行使できない他人は、劣っている。弟子は(にち)(ぶん)に入った当初、そういう姿勢をとって、人と関わることを()んでいた。喪に服したような格好をして、うっとうしそうな顔で本ばかり読んでいた。四年で人は、生まれ変われるのか。還暦を過ぎても、世の中は未知でいっぱいだ。

「……人との出会いが、私を成長させたのですわ」

 はにかむ弟子に、和舟の唇はつられて上がった。彼女を伸ばした人達の中に、含まれているだろうか。そうであれば、教師として立派に働けたのだといえる。

「あの……。棚無(たななし)先生、今、内嶺(ないれい)駅ビルにカレー博覧会が催されているのですが…………」

 弟子は、ほうれん草カレーが内嶺県に上陸した衝撃を、たどたどしく語る。和舟はあいづちを打ちながら、ペンダントの航路を辿っていた。


 やっぱりだよ、単なる装飾品じゃないよ。安達太良先生は思慮深いからね、術をかけていてもおかしくない。


  「()(さき)くあれ」


 詠唱(えいしょう)を継いだのは、まゆみちゃんだ。女性の神が始まりの安達太良家は、当主は代々、安達太良の血が流れる女性に限られていた。あまりご自身の話をされなかったが、安達太良先生が越えてきた波は、すさまじく高く、せむかたなく濁りきっていた。

 独学で行使できるまでに至ったのかい。昔、仰っていたね「『(まん)葉集(ようしゅう)』の(まきの)(だい)十六には、呪いの常識を覆す可能性が秘められている」。ご自身の運命を、いや、妻子の、だね……巻第十六の奇跡で、家にこびりついた呪いを解こうと身を粉にしていらしたんさ。


「特に重かった長女を、密かに守っていたわけだ」

「え、先生……?」

「なんでもないよ。さ、お昼にしよう。うな丼特盛おごるからさ!」



 ふねへんの漢字をすべて打ち返し、和舟は息をついた。

「……まゆみちゃん、あなたがヒロインズにかけた術はね、安達太良先生があなたにかけたものだったんだよ」

 大事に育てられてきたんだね。女傑の胸が熱くなった。

「わたしに労働を強いるのかや? ふん!」

 相棒がまんまるなおなかを揺らして、豪快に舞う。相変わらず怠けたがりだが、頼もしくなった。力み過ぎて大損ばかりだったリーゼント熱血貴族が、つるりん頭になってあちこち角が取れたもんだ。

「ハッハ、まだまだ私は現役だよ!!」



 すこぶる執拗に盾突く文字である。知恵をつけているようであり、結界中の継ぎ目や、薄い部分を的確に狙って攻めている。精神力を全体に行き渡らせ、隙を作らないように努めているが、いたちごっこであった。

(もり)(くん)

 上司かつ職務上のパートナーが、私の肩に腕を回す。異性と自然に距離を詰められる、器用な人。

「少し、()いかね」

 耳なじんだフレーズ。貴方(あなた)は甘えようとしているのだ。守護の術を維持することに専念したいのであるが、後で、は許されない。貴方は、母の両手を求める幼き子のよう。

「はい」

「私は、心中(しんじゅう)を恋の手本にはできぬのだよ」

 笑うに(あたい)しない。むしろ、臆病者だと叱責したい。しかし、貴方は屈強な体に反して繊細な心を持つ。ゆえに、打ちのめすような返答をしてはならない。小さくなって、閉じこもってしまうから。

「理由をお聞かせ願いたい」

 貴方は壊れそうに微笑む。本音を語る際の癖である。涙を流さずに終えた日は一度もなかった。さめざめと、が似合う。

「恋は……生きてこそ結ばれるのさね。冥土へは持ち越せぬ」

 短い刀を握り、貴方は天を仰ぐ。語らう間にも、世界を創る結晶がとめどなく降る。いろはにほへと、ちりぬるを―。

「最期を迎えるに、そばにいたい女性はひとりだけ。そう心に決めているのだよ」

 まるで近々討たれるかのようであるが、逝くつもりは考えていない。貴方の生に対する執着は、私の身をもって知っている。たとえ貴方の胸に負った深い傷が癒えても、醜くも綺麗な悲願は拭い去れない。

「教えてあげようか…………?」

「不要である」

 湿っぽい雰囲気にて、行使を続けろというのだろうか。それに、答えを簡単に開示されては面白味に欠ける。私ではなく、愛してきた約四千人の女性にささやいてはどうか。

「つれないなあ」

 他の女性の前では「私が守ってみせる」と気取っておいて、私には庇護を要求する。亡き母への(あがな)い。多感な頃に失った、生涯(おの)がものにできない女と重ねられ、私は役を受け入れた。貴方の抱える痛みを、共有すると決めた。

「私にやれることは、あるかね?」

 私が二十代の時、貴方はわが祖国を訪れた。私の家庭教師だった現・本学学長の助手として。初めて会って、貴方は心身共、限界が来ているのだと察した。併せて、私に希望を見出していた。甘やかな過去と同じ夢を欲して色欲に浸っていると、霧の先に島が出現した。貴方の喩えは、殊の外humorvollであった。

「自分から離れないでいただきたい。必ずや、(とき)(すすみ)主任を、近松(ちかまつ)先生を、守り抜く」

「そうか。命、預けたよ」

 (まじな)いが通じないとされる貴方に効く、私の術。刃こぼれした剣を直し、剣に押し寄せる敵意から防ぐ。盾の務めを果たすが至福。

「心結び 叡智授け (へい)奮い立たす ()は言の葉  ふれし者を 涙させ 傷つけ 温める 其は言の葉」

 なだれる活字は、(うた)う舞姫に跳ね返されてゆく。研究棟を包む結界は、いっそう確固たるものとなった。



張眉怒目(ちょうびどもく)っ、さっさと撤退してですのっ!」

 華美な巻き髪を振り乱して、こおりグリーンは漢字の大群に絶対零度の責め苦を与えた。

「ソコにもですのっ!? 不撓不屈の精神には飽き飽きですのっ!!」

 くるぶしまで丈のあるセーラー服の裾をめぐり上げ、柳色の結晶「()りの(いほり)」をつかめるだけつかんだ。

「冬は雪をあわれべっ! こおりリフリッジレイト!!」

 小さな体格にはありえない腕力で、結晶をぶん投げる。結晶は文字にぶつかり割れて砕け、中に注がれていた冷却液がまかれる。文字はたちまち氷漬けにされ、

「ウザいですわっ!」

 こおりグリーンに踏みつけられ、裂けて散った。

「だめだよグリーン、猫かぶっていても言葉遣いが汚いと台無しだってば」

「赤のお姉さまこそ、はしたないですのっ、卑猥ですのっ」

「え?」

 確かに、通りすがったら目のやり場に困るだろう。うずめレッドが、セーラー服やスカートを下着ごとたくし上げたりずり下げたりして踊っていたら。

「技を出すのにどうしてもいるんだよ。だって私、アメノウズメノミコトから名前借りたし」

 露出した肌にくっつけていた武器をつまんで、弾き飛ばす。紅色(べにいろ)のビー玉は、こおりグリーンをはさみ撃ちしようと迫っていた「非」と「難」をやっつけた。

「ひゅひゅっ!? お姉さま、荒々しいですのっ!」

「しかたないでしょ、戦闘なんだもの。それより、遅すぎないかな『スーパーヒロインズ!』」

 八個のビー玉を持って、うずめレッドは(かん)(ごん)(しん)(そん)()(こん)()(けん)の方角へ弾いた。秘技、ことのたま・八方拝(はっぽうはい)である。

「なゆみ博士がうろたえていたじゃない。安達太良まゆみが障りと接触、まったくもって衝撃的だよね」

「黄色のお姉さまが監視してますけど、まゆみは正門から動かない様子ですのっ。ねらいが見えませんわっ」

 こおりグリーンが結晶を乱れ投げして、張り合う。

「障りに加担してたら、寒いどころじゃないですのっ!」

「違うと思う。もしかして、安達太良まゆみは」

 話を打ち切り、うずめレッドが腕を交差して、英字を押し返した。

「ごめんなさいですのっ、うかつでしたのっ」

「大丈夫、次に私が倒しそこなったら、よろしくね!」

 ふみかレッドたちは、まゆみを止められるだろうか。座標を伝えたいけれど、ここは五人を信じよう。

(あめ)(くだ)れ! うずめバースト!!」



 大学正門の柱に、(まこと)のまゆみは語りかけていた。

「障り、これから(つい)住処(すみか)をさしあげるわ…………」

 師走、アヅサユミに心身を返された後に考えていた。

 私は、人間に属さなくなった。しかし、人間を超えた存在に加わることは許されていなかった。私は、(はざま)におかれた存在なのだ。

 災いとの(いくさ)に、私に成せることは何か。「大いなる障り」は、分が悪いと悟れば(こと)なる空間へ逃げるそうだ。追えば、祓うのに百年要するのだとも。障りをスーパーヒロインズ! の代で終わらせるには、いかにすれば…………。

「私が入れ物になるのよ」

 人間を外れた行いをした償いに、課せられた「引く」力。あらゆる物事を「引く」のだから、障りをも「引き」込めるはずだ。

「そして、私もろともスーパーヒロインズに祓ってもらえば、明日が来るわ」

 新たなアヅサユミになって、祓を行使する手立てもあった。念のため継ぐにあたって唱える祝詞(のりと)を聞いておいたが、五人の若人(わこうど)に「大事なこと」を教えられなくなるのがつらかった。

「あなた達に会えなくなるけれど、この身をもって、教師の務めを遂げるわ」

 中途半端な存在が、この世にのさばっていてはならない。災いを道連れにして、去ろう。

「いらっしゃいな、障り!」

 まゆみは、柱に手を伸べた。柱は真っ白に光り……

「ふひゃ!」「ひやあぁ」「どわーっ!!」「……………………」「わ、わ、わあ」

 五人のスーパーヒロインを吐き出した。

「もえこピンク、ゆうひイエロー、はなびグリーン、いおんブルー、ふみかレッド!?」

 若人にのしかかられる形となり、まゆみはひたすらたまげるばかりだった。

「自力で抜け出せたのね……」

 障りを「引き」ずり出して、口を開けさせて隊員を「引っ」ぱり上げようとするつもりだった。

「まじないまゆみの助けがあって、だけどなっ」

 鼻の下をこすって、はなびグリーンが言った。さやうだたか、(せん)(えい)は望みを超えた働きをしてくれた。

「にゃーん、まゆみセンセ、ご無事デ何ヨリっスー☆」

 もえこピンクに頬ずりされて、くすぐったい。いみじく思いやりの深い学生だ。あなたこそ、無事で良かった。

「…………」

 意外と力持ちな、いおんブルー。物静かだが、こうやって起こしてくれて、スーツの塵芥(ちりあくた)を払ってくれる。

「えらいご心配をおかけして、申し訳ございません。おまじない、よう効きました」

 ゆうひイエロー、どうか頭を上げて。障りにくじけないあなた達の心を支えるためにかけたのだから。

「まゆみ先生」

 改まって呼ばれると、気恥ずかしいではないか。緋色の円を宿した瞳は、随分頼もしくなった。

「あんまり、無茶しないでくださいよ」

「ばれてしまったか」

「挙げ句の果てにとんでもないことされたら、明日は猛吹雪だよ」

 深刻な話をしながら、ふみかレッドの表情はゆるんでいた。

「大団円で締めくくろう、先生」

 ためらうものか。まゆみとふみかレッドは手を携えて、村雲神社へ飛び立った。



「穴に住みて日を見ず、ソトバ★コマチ!」

「焼くや()NaCl(しほ)(塩)の 身も焦がれつつ! ねおんエイク!!」

「冬は雪をあわれべっ! こおりリフリッジレイト!!」

 文字は、なおも降りやまない。疲れ知らずの「グレートヒロインズ!」でも、さばききれそうになかった。

「道草食い過ぎとちがうかァ、のんべんだらりとしてェ、えェかげんにせなァしばくでェ!」

 水無月・葉月・如月の役所窓口よりも殺到する文字を、五人で対応する。四度目は羅刹の顔、堪忍袋の緒も切れ切れに、せいかイエローはカチューシャ「(かしら)真柱(みはしら)」を赤字(?)覚悟で増員して殴り、蹴り、刻むの大立ち回りをしていた。

「大将ォ! きびきびしてんかァ!!」

「お、鬼の形相しなくたって、ほら!」

 せいかイエロー調べ、「グレートヒロインズ!」のエース・うずめレッドが、遠くへ両手を振った。

「開かない岩戸(いわと)は無いんだよ」

 待ち望んだスーパーヒロインが、登場・起動・降臨・参上・見参した。

「ごめん、大変だったよね?」

「うーん、まあまあかな。ちょうど飽きてきた頃だったんだ」


「イカ墨……ですか」

「……いいえ、分析の、跡」


「寒っ、必殺技連発したのか?」

「はなび緑が各駅(かくえき)鈍行(どんこう)だったから、こおり緑が臨時発車しなくてはなりませんでしたのっ! 責任とるですのっ!」


「せいかイエロー、どないしたん? 湯気立っているやんかぁ」

「あんた達がのろのろしていたからやんかァ! このォ豚ァ!」


「主役チェンジっスよ、とよピン☆」

「出番奪ッたカラにハ、ソレ相応ニ活躍シテもラうゼ★」

 五人と五人が喜び合う。似た色どうし容姿がそっくりなのは、墨色の(グレート)セーラー服集団(ヒロインズ!)巫女服隊(スーパーヒロインズ!)()せて作られたためであった。

「あー、あー、こほん」

 十色のヒロインが、一斉に白いスーツを見た。

「障りの攻撃を『引き』離している私をさしおいてご歓談中のところ、すみませんが」

 安達太良まゆみが、ポケットの細い棒を長くした。講義で使用されている、指示棒だ。

「空満市は、(はざま)に閉じ込められました。『大いなる障り』を祓えば、卯月は本朝全国、平等に訪れます。私が障りを正門からこちら村雲神社本殿舞台まで『引き』寄せるから、あなた達は道を清めてちょうだい」

 まゆみの射るようなまなざしに、十人は色ごとの組に分かれて円く並んだ。

「いざ、決戦よ!!」

『ラジャー!!』『イエス!!』


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