20時間目 俺は覚えていたのかもな
これ実はノンフィクションだったりするんですよねぇ…
暗いかな?今回
走って走って…一体どれくらい走ったのか…一周1.4km未満のこの運動公園を何周もしたけど探しモノは見つからなかった。いつもなら気のせいだ、と一蹴するが、今の俺は普通じゃない。自覚できるほどにおかしい。結局最初の場所に戻ってきていた。
「お!いい感じに汗かいてるな!一緒に走るか?」
もう由姫がジョギングを始める時間になっていたのか。携帯を見ると7時になっていた。
冗談はよせ。今の俺はそんな冗談も返せないほどに切羽詰ってるんだ。
「…なにかあったのか?」
俺のそういう雰囲気じゃないのを察したのか由姫は真面目な顔になった。
「…意味不明かも知れないんだが…何かを失った…その何かを探している。漠然としているだろう?でも…それでも今見つけないといけない気がするんだ」
言葉にして分かったんだが、俺はなんて曖昧なモノをさがしているんだ…そもそも何かってなんだ?
「じゃあ俺も手伝うよ」
有り難い申し出だけど…やめておけ。俺の訳分からない戯言につきあわせるわけにはいかない。俺がどう言おうか考えている間ずっと由姫は黙って俺の答えを待っていた。
「…取り敢えず整理させてくれ」
俺は由姫に再度説明するためにまとめてみた。確か俺は自宅まで運動公園「お気に入りの場所」経由で帰ろうとして…ここに来て…何かあったんだ。でも忘れてしまうという事は実はどうでもいいことなのではないか?そうだ、大体何かって一体なんだ?
もう諦めてしまった方が良いんじゃないのか。
「…ダメだよな」
「え?」
驚いた声の方が俺だった。俺に駄目だって言った人物はじっと…さっきと同様に黙って立っていた。やがて沈黙を破ったのは駄目だと言った人物。
「諦めるって事は望んでいたことの実現が不可能だと決め付けて断念するってことなんだよ」
…こんな時にまで辞書的な意味出さなくてもいいのに…。
少しの沈黙、しかし先ほどの静けさとはまた違う意味合いが込められていた。俺はゆっくり口を開く。
「ああ…まだ決め付けるには早過ぎた。だからさ休憩しようぜ。ここは俺のとっておきの場所なんだ」
空を見上げると中学のあの日から俺を魅了し続けた星空が今日も俺の心を掴んでいた。
さっき由姫に言われた時ふと思い出した事がある…俺自身苦い記憶だから思い出せなかったんだろう。
『なんで忘れてたんだろうな…楓』
『思い出しちゃったんですね。僕の事…』
『ああ…名前で気づくべきだったんだ…十二年前に産まれる筈だった命。岡田楓』
そう…今はもう喧嘩はしていないけど…十二年前までは夫婦喧嘩が絶えない家だった。
でも十二年前…母は新しい命を宿した。
「なまえはだれ?」
「そうだなぁ…秋に産まれる予定だから楓なんてどうだろう。お母さん」
「良いんじゃない。どっちでも大丈夫な良い名前だと思うし」
お母さんのおなかには子供がいるらしい。まだ弟か妹か分からないけどすっごく楽しみだった。でもお母さんのおなかはどんどん大きくなっていってちょっとだけこわかった。
少し経ってお母さんはころんじゃったんだ…お母さんとお父さんはこわい顔で病院へ向かった。
僕は病院はキライじゃなかった。だって色んな人がいるから。
「残念ですが…流産しました」
お医者さんはそう言ったけど意味がわかんなかった。
帰り道、クルマの中でお父さんは言った。ボクの弟か妹は空に行っちゃったんだ、って。きっとボクが悪い子だから逃げちゃったんだ。そう思った。
『楓のお陰で俺達は普通の家族になれたんだ。本当にありがとう。それとごめん』
『そうだね。違うって言いたいけど…頑固だからね。でもごめんはちょっと許せないかな』
『なんで?』
『ごめんは謝る言葉だよ?誰もなんにも悪くないのに謝るのは変だよ』
『じゃあやっぱり…ありがとう』
楓はニッコリと笑うだけ。
『もう行くのか?』
俺は問いかける。
『ちょっとスケジュールがおしてるらしいからさ』
『そうか…またな』
『もう会わないかもしれないよ?お兄ちゃん』
楓はほんのり悪戯っ子な顔になる。
『今はお姉ちゃんだ。あと、それでもまたな』
『うん!』
もう姿も見えなくなり声も聞こえなくなったけど、じんわりと、体…いや心が暖かい。
「本当は落としたときも…俺は覚えてたのかもな」
俺は隣に居た由姫にそう言った。
「記憶としては残ってなかったのに?」
「ああ…ここが覚えてたんだよ。きっと」
俺は親指で指した。
「やっと探しモノは見つかったんだな」
「ああ。…ありがとう」
自分の胸…心を。
最近になってこの形容の仕方を覚えました。
『これは事実を元にしたフィクションです!!』
ああでもこれだと恐竜は事実じゃないからなぁ…
これよりも良い表現方法を教えてください!!
第二章はもう少し続きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。