16時間目 初めまして。生徒会化学部です。
やっと生徒会化学部の活動をしますね。
始講式が終わってそのまま帰宅する前に私達四人は集まっていた。そう、ここ物理室に。
「これ最初は抵抗あったけど、慣れてくると家のカップと変わらないわね」
ちょっと私達よりも若干…というかかなり年齢の違う大人の女性がいるのは気のせいだろうか…そしてビーカーでコーヒーを飲んでいる幻覚が見えるのは気のせいなんだろうか。
「…麻衣ちゃん『かなり年齢の違う』を撤回しないと犯すわよ?」
「まだまだ若い大人の女性がそこにはいた!」
貞操の危機でした…っていうか何故心の声が…?
「ふふふ、甘いわね麻衣ちゃん。このくらいわからないと大人になれないわよ?」
「成る程…メモらないと…」
私は胸ポケットに入っている生徒手帳を取り出しメモ欄を開く。
「あ、じゃあ私も」
「早乙女も麻衣もやめい!そんなこと出来るのは椎名先生だけだって!」
凛の言葉に、それもそうかと妙に納得した。
「っていうか麻衣ちゃん夏休みの間にすっかり変わっちゃったわね…」
「具体的にどこがですか?」
「麻衣ちゃんが『私』って言葉使うようになったことよ」
「すっかり汚染されていた!?そして気づかなかった!」
成る程、危なく心の性別まで変わるところだった…夏休みめ…危なかったぜ。
「個人的には汚染バンザイ!なんだけどねぇ」
先生はニヤニヤしながら言った。眼鏡越しの目がとってもいやらしかった。
「そういえば、先生今日は眼鏡なんですね」
「そうなのよ憂ちゃ~ん。うっかりコンタクト無くしちゃって…」
「先生って近眼なのか?」
「そうなの。結構強いの入れてるのよ」
由姫と憂が先生の質問タイムに移っている時、俺と凛はその光景を少し遠目に見ていた。
「こ、ここは化学部教室で合っていますか?」
と、そこへ控えめな声で入室する身長157cm前後の女の子がいた。俺は即座につくった笑顔で応対する。
「ええ。どうぞ中へ。凛、隣の家庭科室からティーカップを借りて紅茶を煎れてきて」
「わかった」
凛はお客に一礼してから物理室を去った。俺は彼女を見る…彼女は生徒会長で俺達よりも約二歳年上だ。がしかし全然年上な感じがしない。むしろ年下と言われても違和感がないだろう。髪は長めで、もし触ったら、ふわふわと柔らかそうな髪質だった。
「あ、あの…」
とても喋りずらそうに俯く女の子。俺は助け船を出してみる。
「そうでしたね。用件を伺っていませんでした。どんな用事で?」
「あ、はい!えと、ですね…化学部さんには来月の6日と7日に予定されているクラスマッチに、サプライズとして何かして頂きたくて、こうして来ました」
「成る程…何か、とは具体的には何を?」
「去年は花火をつくって打ち上げてました。一昨年は結構大がかりな実験をしてましたよ」
「そうですか…あ!ありがとう凛」
凛はカップを六つ持ってきていた。そして全てを長いテーブルの上に置くと一つをその生徒会長の前へ、もう一つを俺のところへ…俺は未だに談笑している三人のもとへ向かった。
「生徒会長が来たよ。なんかクラスマッチでこの化学部に出し物を用意して欲しいんだってさ」
「そういえば、そろそろクラスマッチね」
「生徒会長さんが来ているならもっと早く仰ってくれないと」
「この学校にクラスマッチなんてあったのか」
三者三様の反応ありがとうございます…じゃなくて。
「だからこうして呼びに来た。取り敢えず紅茶も出してあるから」
「こうして直にお話するのは初めてですね」
憂はニッコリと笑って言った。
「初めまして。生徒会化学部です」
「あ、はい。初めまして!」
「話しは大体わかりました。その『出し物』はなんでもいいんですよね?」
「はい。基本的にはなんでもおっけーです」
「わかりました。他にはありますか?」
「い、いえ、無いです。では私はこれで失礼します」
生徒会長は行った。
「あぁ、早く化学部のデモンストレーションがやりたい…」
…逝っちゃってるよ。
はい。前話の一人称が『私』になっていたことへのツッコミですね。
ここでやりやがりました。