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14時間目 キミの手はあったかいね

最近密かにトッポにはまってます。


では夏休みが終了した麻衣達を御覧下さい。

 翌日、俺は昨日と同じ時間・昨日と同じ場所・昨日と同じ服で来ていた。夏休みの宿題?そんなもの夏休みに入って数日で終わらせたさ。

 俺は放送席などのある建物(といっても、建物って言うほど大きくはない)の丁度反対側に昨日と同じく寝っ転がる…風が気持ちいいな。ちなみにこの競技場、中は全面芝生、二つしかない入り口が閉まっている上に、周りには植木がある。中学時代は植木を掻き分けて入り、よくジョギングしたのが既に懐かしい。そういえば早乙女にはよく叩き起こされて(ウチのドアを叩いて、という意)陸上部に連れていかれたな…俺は『もっと速くなりたい』なんて思うにはちょっと才能が役不足だったから、もう中学時代中盤には諦めていたんだが、彼奴は何が何でも俺に練習して欲しかった(させたかった)みたいだった。

 よく言えば疲れた、悪く言えば嫉妬してた…のかもな。たださ、部活が終わった時さ、本当に、少しだけ、1cm、いや1mmだけ、感謝したのは覚えている。

 最初はすっごく遅かった、部内一遅かった。女子よりも遅くてショックだったのが本当に印象深い。次の大会に出たときはすっげぇ伸びてた。そして一年過ぎた頃後輩が入部してきた。…やっぱり一年の時の俺よりも遅い奴はいなかった。俺はこの時点で既に伸びないと確信した。それでも辞めなかったのは…なんでだろうな。この三年間で一体何回辞めようと思ったか…あの頃笑ってたのは、笑えてたのはなんの御陰だったかな…。俺の部活は土曜日も入っているので数えるぐらいしかいかなかった。つうか金曜の夜と土曜の夜はずっと寝なかったから起きられるわけがないんですよ。

 いきなり俺の頬に手が触れる…多分予想通りの人のはず。

「また会ったね」

「あ…はい」

予想通り楓くんだった。

「キミの手はあったかいね」

俺は彼の手を握った。

「え!?あの…えと…その…」

手を無理矢理引っ込めると失礼だとでも思ったのだろうか?彼はオロオロしながら手を繋いでる部分と俺を交互に見る…のも少しだけ、すぐに顔が少し長い前髪に隠れてしまった。男でも女でもいいが、少し悶えてしまった(勿論顔には出さない)。取り敢えず手を離す。

「ねぇ…」

「はい?」

「昨日なんで私に話しかけたの?」

「え…いや…その…ここ人気が無いし危ないかなって」

「ふーん」

「あ…アハハ」

「じゃあ、そうゆうことにしといてあげる。ところでキミは…」

そこで俺は止めた。いや止めざるを得なかった。起きあがってから言ったその言葉を飲み込んだのは数人の男達が口論していたからだ。お、殴り合いが始まった。なんだかよくわからない叫び声以外全く聞こえない。

「どうしたの?」

「え、あの、あの人達が…」

「ああ…ここじゃ日常茶飯事だからしょうがないよ」

「でも…」

楓くんはオロオロし始めた。…しょうがないな。

「じゃあ私が行ってくるよ…これ見つかったらここの警備厳しくなるだろうし」

「え…でも…」

「大丈夫大丈夫。私これでも強いから」

そう言って立ち上がった。

「あ!それと、私が声かけるまで見ない方が良いよ。ちょっとトラウマになるかも」

そして喧嘩中の四人に走り寄り言った。

「何があったかは知らないけど喧嘩は止めなさい」

「すっこんでろ」

「良い子チャンぶってんじゃねぇぞ」

折角暴力以外の解決方法を掲示してやったのに破り捨てるとは…人の厚意は無下に扱うものではないことを教えねてあげなければ…。

「後悔しないでね?」

てっとり早く手前の男の太腿に膝を思いっきり入れる。男は力が抜けたかのように座って、俺が膝を突き刺した腿を押さえている。そしてそいつと殴り合っていた男には首を絞めてやった。右手で首を絞めている俺に残り二人が俺を取り押さえようと走り寄ってきた。しかし右手の男は既に意識がないので、俺は右手の男を走り寄った二人に投げた。

「うおっと…」

二人の男が首を絞めた男に気がいってる隙に俺は二人の懐に詰め寄り同じく首を絞めて落とした(首じゃないよ?気をだよ?)。そして最初のうずくまっている男の首をまた絞め落とした。ふぅ…首はあんまり鍛えないしあんまり鍛えられないからコレは便利だ…ただ手形が残るのが問題なのだが。

「取り敢えず誰にも見られないところまで運ばないと」

俺は四人を引きずりながら楓くんのもとへと行った。

「…どうやったんですか?」

「聞かない方が良いよ?一生消えない心の傷になるかもしれないし」

「あ、アハハ…ですよね」

「んー…取り敢えず帰ろうか」

「…はい。ボクはもう少しここにいます」

「そう?じゃあまたね」

そう言って俺は走り去った。それにしても、最近の人は弱いなぁ…俺の中学時代はもっと面白い奴がいっぱいいたのに。

「っと…まずいまずい。自重せねば」

俺はもうあの頃の俺ではない。そもそも男でもない。いつまでも好戦的な野獣でいるわけにはいかないな。


 俺はそれから夏休みが終わるまでその場所に通い続けた。何気に心配してた報復が無かったので俺は拍子抜けというか、ガッカリというか…だから思考がやばいっての。自重しろ俺。

まぁそれはともかく、約二十日間楓くんに会いに行ったのだ。ちなみに早乙女とは七回会った。彼奴の言ってた週三ってのは本当だったみたいだ…まだ納得いかないが。


 また、勝手に学校を想像して勝手にブルーになる、女の子になった男子高校生がそこにはいた…っていうか俺だった。

夏休み編をあっさり終了させたのはボクの夏休みが実際この通りだったからです。


まぁ楓くんには会いませんでしたが

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